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第1107号(平成19年10月20日) |
9月26日
平成20年度予算に向けて
中川俊男常任理事は,厚生労働省の平成二十年度予算に対する日医の見解を示した.
同常任理事は,まず,二〇〇八年度予算概算要求基準(シーリング)で,社会保障費二千二百億円削減が機械的に設定されたことについて,改めて不満を表明したうえで,(一)医療費と国庫負担,(二)緊急医師確保対策,(三)レセプトオンライン化に向けての環境整備,(四)保険者間の財政調整,(五)高齢者の患者一部負担の見直し─の五つの課題を示した.
同常任理事は,(一)について,最近の医療費は,厚労省の制度改革後の医療費予測と比べても,さらに抑制されつつある.このままの抑制が続けば,日医の試算では,二〇〇八年度の医療費の国庫負担額は八兆五千五百三十九億円になり,厚労省の概算要求額より約千三百億円少ないと説明(図).医療は行き過ぎた抑制から引き返すべきだと主張した.
(二)については,項目としては一定の評価はできるとしながらも,予算額が小さく即効性がないとし,根本的な解決のためには,診療報酬全体の底上げが大前提であると強調した.
また,(三)については,「基本方針二〇〇七」において環境整備を行うことが明記されたにもかかわらず,概算要求額が二十三億円にとどまっていることを不満としたうえで,必要な予算の確保,レセプトオンライン化に対応できない医療機関への十分な配慮を強く求めていく考えを示した.
さらに,(四)については,日医が,これまで,保険者間の財政調整,具体的には保険料率を公平化すべきであると主張してきたことに言及.政管健保並みの保険料率に公平化した場合,財政効果は一兆円と推計されるとの試算を示した.また,特定健診等のため,二〇〇八年度から保険者に対して行われる国庫補助については,保険料率の公平化などの財政調整を行ったうえで実施すべきと述べた.
(五)については,前期高齢者(七十〜七十四歳)について,現在,与党から「一部負担二割引き上げ」を凍結する案が出ていることを評価.その背景として,七十〜七十四歳の可処分所得が,七十五歳以上よりも低いという現実があると指摘した.
さらに,「日医では,後期高齢者は,『保障』の理念の下で支えるべきで,医療費の九割を公費負担にすべきと主張し続けている.後期高齢者や現役並みに所得がある高齢者の患者一部負担の軽減についても,検討を求めていく」とした.
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