日医ニュース
日医ニュース目次 第1108号(平成19年11月5日)

中医協(10月12・17・19日)
後発医薬品,医療安全対策など改定項目の論点について議論

右から鈴木常任理事,竹嶋副会長,中川常任理事

 中医協が,十月十二,十七,十九日,厚生労働省ほかで開催された.

総 会

 十二日には,平成十九年度に実施した特別調査のうち, 「生活習慣病管理料算定保険医療機関における患者状況調査」など八つの調査結果(速報)が,遠藤久夫診療報酬改定検証部会長から報告された.
 議論のなかで,竹嶋康弘副会長は,生活習慣病管理料を算定しない理由に,「点数の設定が高く,患者の負担増につながるから」を挙げている医療機関が五三・四%もあることに言及.「在宅療養支援診療所」にならない理由に,患者負担増を挙げる医療機関が多いことを説明し,患者の負担増にも考慮した点数設定を行うことを求めた.
 鈴木満常任理事は,褥瘡の問題について,必要な看護体制が整っている医療機関では,褥瘡はできないはずだと指摘.その体制が整っていない医療機関に加算するのは不自然との考えを示した.

基本小委

 十二日には,「後期高齢者医療の入院医療」について議論が行われた.
 課題と論点のなかでは具体的な評価項目として,「患者の病状の急変等に伴い,地域の主治医からの求めに応じて入院させた場合の評価」「入院前の地域の主治医が,退院後に引き続き外来において療養上必要な指導を行った場合の評価」などを導入してはどうかとの考えが示された.
 議論のなかでは,中川俊男常任理事(鈴木常任理事の代理)が,厚労省の考え方は,退院・在宅へという流れが強過ぎ,このままでは“孤独死”が急増する恐れがあると批判.「主治医」の問題については,「地域医療計画で定められている四疾病五事業でも,おのおので,主治医が存在する.廃止された外総診は,主治医を一人として制度設計されていたことも踏まえて議論すべき」と主張した.
 十七日には,「後発医薬品使用促進のための環境整備」「患者の視点の重視」について議論が行われた.
 後発医薬品の使用促進に関しては,論点として,(一)処方せん様式について検討する,(二)後発医薬品の銘柄指定の処方せんを受け付けた薬局の薬剤師が,一定の条件を満たした場合には,処方医に疑義照会することなく別銘柄の後発医薬品を調剤することを認める,(三)「後発医薬品への変更可」の処方せんを受け付けた薬局が,一定の条件を満たした場合には,剤形は異なっても同一の先発医薬品と同等であることが確認されている範囲内で後発医薬品に変更して調剤することを認める,(四)先発医薬品から後発医薬品に初めて変更して調剤する場合,後発医薬品を試せるように分割調剤を認める―ことなどが提案された.
 鈴木常任理事は,(一)について,「たびたび様式を変更することは,医療現場に混乱をもたらすだけである」と批判.「変更には賛成できない」と述べた.
 また,(二),(三)に関しても,「品切れ品目がないようにするなど,メーカーの取り組みがなされてから,診療報酬上の検討を行うべきである.また,薬局での在庫確保の状況を,処方した医師に連絡しないことは問題であり,医師の“処方権”を侵害するもので認めることはできない」と主張.
 さらに,(四)については,分割調剤を評価してしまうと,不必要に分割調剤するチェーン薬局等が出てきてしまうことを危惧.再度の検討を求めた.
 一方,「患者の視点の重視」に関しては,その論点として,(一)明細書発行を選択要件として電子化加算を算定している場合は,実施している旨の掲示を義務付ける,(二)平成二十年四月からオンライン請求が実施される四百床以上の病院では,実費徴収を認めつつ,明細書の発行を希望する患者に対して,その発行を義務付けてはどうか―という二つの提案が示された.
 竹嶋副会長は,義務化には明確に反対する姿勢を表明.明細書の発行については,医療機関の自主性に任せて欲しいと要望した.
 十九日には,(一)医療安全対策,(二)救急医療(救急医療用ヘリコプター,脳卒中発症早期の対応),(三)心の問題への対応(自殺対策,子どもの心)―について,議論が行われた.
 (一)では,平成十八年の医療法および薬事法改正による医療安全対策の義務付けを受けて,安全確保推進のため,臨床工学技師の配置,薬剤師の病棟での患者指導,集中治療室やハイケアユニットでの薬剤の管理・使用の充実についての評価が論点として示された.
 中川常任理事(竹嶋副会長の代理)は,コスト調査分科会の調査結果である,病院の入院患者一人一日当たりのコスト四百六円に対して,医療安全対策加算〔入院初日のみ五十点(五百円)〕は,医療安全の費用としては低すぎると訴え,引き上げを求めた.
 (二)の“脳卒中発症早期の対応”に関しては,脳卒中の死因の六〇%を占める脳梗塞の治療に有効とされる血栓溶解剤t-PA(アルテプラーゼ)を,投与制限である発症後三時間以内に使用するための体制づくりを評価する考えが示された.
 中川常任理事は,「評価すべき点は,確定診断までのスピーディーな対応であり,施設基準ではない」とし,施設基準を厳しく設定すると,かえってt-PA投与の幅を狭めることになることを危惧した.
 (三)については,中医協で初めて“自殺対策”が取り扱われた.「自殺総合対策大綱」により,うつ状態の早期発見・早期治療に対する取り組みが重要視されていることから,「内科等を受診した,うつ病等が疑われる患者を,精神科医に紹介すること」,また,「自殺企図患者等への,救命救急センター等が行う精神と身体症状の両方の面からの総合的な診断治療に対する評価について検討すること」が提案された.
 “子どもの心”では,子どもの精神障害に対して,診療時間に応じた診療報酬上の評価,一年とされている治療の算定期間上限の延長,「児童・思春期精神科入院医療管理加算」の在り方が論点として示された.
 鈴木常任理事は,「自殺総合対策大綱」を受けて言うのであれば,診療報酬上では評価されない産業医・産業保健,学校医・学校保健の役割も重要であり,国の重要課題として整合性をとって,全体の仕組みづくりを進めるべきだと主張した.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.