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第1109号(平成19年11月20日) |
中医協(10月24・26・31・11月2日)
「後期高齢者医療」「勤務医の負担軽減策」などについて議論
中医協が,十月二十四,二十六,三十一,十一月二日,厚生労働省で開催された.
総 会
三十一日には,「第十六回医療経済実態調査結果速報(報告)」についての説明が行われた.これに対して,日医は,「医療経済実態調査の問題点と医業経営の実態について」を提出し,中川俊男常任理事が,その問題点などを指摘した(別記事参照).
今後は,調査結果を踏まえた意見を診療側・支払側双方より提出して議論を行い,診療報酬の改定率について中医協としての意見を取りまとめ,厚労大臣へ進言することとなった.
調査実施小委
二十六日には,平成十九年六月に実施された「第十六回医療経済実態調査結果速報」について,医療機関等調査と保険者調査の報告が,中医協事務局からあった.
竹嶋康弘副会長は,調査自体が定点調査でない(試行的に定点調査を実施しているが一般病院は七十施設しかない)こと,特殊なケース(外れ値)が入っていること,収支構造の異なる個人と法人を合計することなど,調査の問題点を指摘し,「工夫して改善できないか」と述べた.鈴木満常任理事は,診療所には一定の利益幅がないと成立しないことを強調した.
薬価専門部会
二十四日には,薬価基準制度の見直しについて検討が行われた.
「採算性に乏しい医薬品の評価」に関して,(一)古くても医療上有用で必須な医薬品の評価,(二)その他,採算性に乏しい医薬品の評価―について検討された.
鈴木常任理事は,不採算品再算定により引き上げの対象となる医薬品は,リスク管理的な役割を担う薬ばかりであり,大事に扱って欲しいと発言した.
このほか,(一)後発医薬品の使用促進,(二)規格間調整,(三)キット加算―について検討が行われた.(一)では,後発医薬品の薬価基準収載頻度を年四回に拡大することについても検討された.後発医薬品収載作業において,剤形間比の検討等で時間がかかるとの事務局の説明に対し,「前回,年二回としたことの評価が必要」「使用促進を進める中医協の姿勢として年四回とすべき」等の意見が出された.
さらに,薬価改定の頻度のあり方について,「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」が,未妥結・仮納入や総価取引など流通改善方策の報告書を取りまとめたことを踏まえて議論が行われた.土田武史委員長(早大商学部教授)は報告書の内容について,「これでは頻回改定の議論には入れない」と指摘.鈴木常任理事も,頻回改定に関する議論は白紙に戻すべきと主張した.
基本小委
二十六日の会議の冒頭,竹嶋副会長が,一部日刊紙に中医協での審議の前に「医療経済実態調査」の内容が掲載されたことについて,「極めて遺憾な事態で,特に最近,こうした事実が多く,厚労大臣の諮問機関である中医協の存在自体にもかかわる重大な問題であると認識している」と述べ,抗議を行った.土田委員長も,「重要な指摘であり,情報管理の徹底については,事務局はじめ関係者も十分に留意し,配慮して欲しい」と述べ,中医協の総意として,今後,情報管理を徹底していくことを確認した.
当日は,「後期高齢者医療」の「在宅医療等」に関して,(一)在宅における連携の強化と病院等による後方支援,(二)在宅療養における服薬支援,(三)居住系施設等における医療,(四)終末期医療―など六点について,議論が行われた.
審議に先立って,竹嶋副会長は,七十五歳という年齢で提供される医療あるいは医療の評価が異なることのないよう留意すべきと述べ,さらに在宅医療の推進は患者の生活環境等を十分考慮して行うべきで,入院,入所の受け皿整備を併行してやっていくべきと指摘した.また,鈴木常任理事は,在宅療養支援診療所とそれ以外の診療所で点数格差をつけるべきでないと述べた.
三十一日には,診療報酬改定に向けた検討項目,(一)画像診断の評価,(二)処置,(三)地域医療―について検討した.
(一)では,「デジタル映像化加算を廃止してフィルムレスによる画像管理技術を評価すること」「臨床診断の基礎となる画像診断報告の質を確保する体制の見直し」などが論点として挙げられた.これに対し,鈴木常任理事は,病院志向が進み,格差につながることが懸念されるとし,慎重に検討すべきと述べた.
(二)では,「医師による診断と適切な指導があれば,患者本人もしくは家人でも行うことが可能な六つの処置について,診療報酬上の評価は行わず,基本診療料に含まれるものと考えてはどうか」が論点とされた.竹嶋副会長は,改定財源を捻出するための項目であろうが,“財源中立”で考えることは問題であると指摘した.
(三)については,地域連携クリティカルパスが平成十八年度改定で大腿骨頸部骨折に限り評価されているが,今回は脳卒中を医療計画に記載のある病院・診療所に限定して追加してはどうかとの提案がなされた.鈴木常任理事は,平均在院日数の短縮だけでなく,患者によいものとなるような検証が必要であると述べた.
十一月二日は,「勤務医の負担軽減策」「外来管理加算」「後期高齢者医療(外来医療)」について議論が行われた.
「勤務医の負担軽減策」については,中医協事務局から,勤務医の苛酷な労働状況の現状について医政局作成資料を基に説明があり,その改善策として,(一)地域の急性期医療を担う病院に限定した,医師の事務作業を支援する事務職員(メディカルクラーク等)の人員配置,(二)診療所における開業時間の夜間への延長など,時間外診療―の評価を重視してはどうか,などの提案が示された.
医政局作成資料について,鈴木常任理事は,特に診療所の常勤医師の平均勤務時間が週四十時間を下回っているとの説明があったことに関して,日医が七月に実施した「診療所の診療時間および時間外活動に関する調査」では,診療所医師の勤務時間は週四十六・四時間であり,勤務医と変わりないことを説明.決して診療所医師が楽をしているわけではないと反論した.
(一)について,鈴木常任理事は,「医師の仕事を補助するためには,守秘義務や豊富なキャリアが要求されるので,安易な配置はかえって現場に混乱を招く」と指摘.これらの体制を整えるためには新規財源を充てることが必要であると主張した.また,(二)については,今回の提案が初・再診料の引き下げが前提となっているのであれば「大反対である」と明確な姿勢を表明.さらに,開業時間は地域差が大きいこと,各県で医師数が違うことを強調し,安易な組み換えには反対であると述べた.
「外来管理加算」については,国民に分かりやすい診療報酬体系とするため,患者への懇切丁寧な説明や計画的な医学管理等に要する時間の目安を設けてはどうかとの考えが示された.鈴木常任理事は,「計画的な医学管理を評価する“唯一無二の無形な技術料”が医療機関の経営を支えていることも事実だ」と説明.非常に大きな影響を持つ点数であることから,「慎重なうえにも慎重な審議をお願いしたい」と述べた.
「後期高齢者医療(外来医療)」については,(一)初診に係る診療報酬上の評価を引き上げる一方,再診料については引き下げを行う,(二)骨子に記された後期高齢者を総合的に診る主治医の取り組みに対して,年間の診療計画を作成させ必要な検査を包括した一カ月当たりの点数を新設する―との考えが示された.
これに対して,竹嶋副会長は,「日医は,かねてから七十五歳を境にして,受けられる医療の内容が変わることがあってはならないと主張しており,この提案には賛成できない」と主張.後期高齢者を診る際には,本人に説明するだけでは不十分で,その家族に対して病状を説明しなければならない場合もあることを示して,むしろ再診料は引き上げるべきとの考えを示した.
さらに,(二)についても,「総合的に診る医師への国の評価は不要であり,主治医は医師が手を挙げるものではなく患者さんが決めるものである.主治医がどういうものかを検討せずに,この議論を前に進めることはできない」と強調した.
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