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第1109号(平成19年11月20日) |
社会保障審議会医療保険部会(10月29日)
被用者保険間での財政調整について審議
鈴木常任理事(右) |
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社会保障審議会医療保険部会が,十月二十九日,厚生労働省で開催され,(一)被用者保険における格差の解消,(二)平成二十年度の診療報酬改定に向けた検討─について議論が行われた.
(一)について,前回審議の意見や関係機関からの意見に対する事務局の考え方が提出され,「被保険者は保険者を選べない.被用者保険間で,所得水準など保険者努力が及ばない格差が拡大してきており,所属する保険者によって保険料負担が著しく異なる状況は,負担の公平の観点から是正が必要.今回の財政調整は,保険者努力が及ばない『所得水準』と『年齢構成』についての調整を念頭に置いている」との説明があった.それに対して,健保連等からは,「唐突な提案であり,国庫負担の肩代わりではないか.自主・自立を基本とする,わが国の医療保険制度の枠組みを崩し,保険者による医療費適正化努力を減退させる.政管健保の経営効率化が重要」との反対意見が示された.一方,「被用者保険間の格差是正には賛成である.財政的に恵まれた健保組合が,自分たちさえ良ければという考え方で,国の制度としてどうなのか.国民の理解を得られるのか」との意見もあった.
鈴木満常任理事は,「日医は,従来,医療保険の一元化を主張している.医療提供側は,この数年,正に国庫削減の肩代わりをさせられてきたと言え,過去五年間の行き過ぎた医療費削減により,医療の現場は疲弊し,限界にきている.国民の健康維持という視点からも真摯な議論を求める」と述べた.
(二)については,事務局より基本方針に盛り込むべき事項が提出された.重点事項として,「地域医療の確保・充実を図り,勤務医の負担を軽減するための項目」を示し,産科・小児科への重点評価,診療所からの支援,外来縮小に向けた取組の評価,院内における事務負担の軽減─などの具体的論点が説明された.
鈴木常任理事は,「勤務医の評価は大切であるが,その対応には新たな財源を充当すべきである.医師の技術料の引き下げは,絶対に反対である.病院の赤字は事実であるが,診療所は人件費や経費の削減など,経営努力により赤字を補填しているのが実状である.また,医療機能の分化・連携から,病院の外来を減らして診療所で診るという考え方については,現在の開業医,診療所の絶対数では,それに対応することはできない.診療所も医師不足であり,外来をすべて診療所で行うためには,今の一・六倍の診療所が必要になる」と主張.勤務医の負担軽減を財政中立の考えで行うことに反対するとともに,その原因には,医師不足の問題が根底にあることを指摘した.
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