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第1111号(平成19年12月20日) |
国民医療を守る決起大会
「地域医療を守る医療費の確保」など5項目を決議
国民医療を守る決起大会(主催:国民医療推進協議会,協力:東京都医師会)が,十二月五日,二千四百名を超える参加者を集めて,都内のホテルで開催され,参加者の総意として五項目の決議が採択された.
当日は,国会会期中にもかかわらず,国会議員多数が激励に駆けつけた.
「頑張ろうコール」をする参加者たち |
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本大会は,来年度予算確定前に,国民の生命と健康を守るための財源確保を求め,医療崩壊の阻止を望む国民の声を政府に届けることを目的として,十一月上旬〜十二月中旬にかけて全国で行われている,「医療を守る国民運動」の一環である.
当日は,萩原正日本柔道整復師会会長が,「今こそ,国民とともに,国民の生命と健康を守るための財源確保を要求し,地域医療の崩壊を阻止する行動を起こさなければならない」と述べて,開会を宣言.
その後,国民医療推進協議会会長である唐澤人日医会長が,主催者を代表してあいさつを行った.唐澤会長は,地域間格差が一段と広がり,国民の不安と不信感が高まっているが,これは国の性急な財政優先の構造改革路線によるものであると指摘.そのうえで,崩壊の兆しを見せ始めている医療の現況を打開するには,国民の目線に立った政策の転換・推進こそ重要だとの考えを示した.
「経済財政諮問会議,規制改革会議などの民間議員が主張する,風邪などの保険免責制や混合診療によって,医療の平等性の確保は非常に困難になる.われわれは,あらゆる機会を通じて,わが国の国力・経済力に見合った医療費規模の達成と,少子高齢社会に備えて,地域の医療提供体制の充実を提言してきた.国家の最高の財産である国民一人ひとりが,いつでも,どこでも,安全で良質な医療を受けられ,同時に受診者と家族にとって納得できる適切な負担であることが最も重要である」と強調.今回の大会については,「国民皆保険制度の堅持と強化のための政策の必要性を,国民に説明し,理解を求めながら,国民の声を国に届けていくために開催することとした.本日の大会が国の政策転換を促し,わが国の医療崩壊阻止の端緒となるよう協力願いたい」とした.
つづいて,大会開催に協力した東京都医師会の鈴木聰男会長があいさつに立ち,自分の三十年来の受け持ち患者さんからの手紙を朗読.「病気に対する不安もあるが,それ以上に,われわれ高齢者がこれから,だんだん診療を受けられなくなっていくのではないかという不安の方が大きいのです.日本という国に生まれて,年を取ることを負い目に感じるような環境ではいけないと思います.私たちの窮状・心配を広く訴えてください.医療に必要なお金は,何をおいても確保してください」といった内容を紹介した.
次に来賓として,鈴木俊一自民党社会保障制度調査会会長から,「世界に冠たる医療保険制度は,国民の宝であり,公共財と言ってよいが,今,大変な危機に瀕している.地域の医療は,危険水域に突入し,医療関係者の献身的な努力によって,ギリギリのところで支えられている.この状況を変えるべく,緊急医師確保対策,医療紛争処理体制の整備問題等に取り組んでいる.さらに,衆参国会議員に働き掛けて,さまざまな努力を続けており,日本の医療を守る思い,心は一つである」とのあいさつがあった.そのほか,国会議員九名からも激励の祝辞を受けた.
引き続き,竹嶋康弘日医副会長が,趣意書を説明.「憲法第二十五条では,国民の生存権とその保障を国の社会的使命として崇高に謳っている.われわれ医療関係者は,社会保障を“平時の国家安全保障”ととらえ,国民が安全で安心な医療を受けられる充実した医療提供体制の確保を求める」として,国民とともに,財源確保を求め,地域医療崩壊を阻止する行動を起こそう,と呼び掛けた.
四団体が決意表明「すべての国民に安全で安心な医療を」
その後,国民医療推進協議会の四つの団体から決意表明が行われた.
大久保満男日本歯科医師会会長は,少なくとも医療においては,“小さすぎる政府”を持ってしまったというのが実感だとし,現場は惨憺(さんたん)たる状況で,医療関係者の職業に対する責務と使命感なくしては成り立たないと指摘.世界に冠たる国民皆保険制度を守り,少しでも良くして次世代に引き渡すために努力していくことが,われわれの役目だとの考えを示した.
中西敏夫日本薬剤師会会長は,国の医療費抑制策は,平成十四年度から六年にわたり,さらに継続しようとしていると批判.必要な医療が国民に提供できなくなるような医療費改定が実施されないよう,医療崩壊阻止に向け,力を合わせて行動するとの決意を表明した.
久常節子日本看護協会会長は,「新人看護師の一年以内の離職が増えており,看護職の基礎教育改革等を含め,看護職が働き続けるための条件整備に力を入れているが,他の医療関係職にも共通の課題である」と述べ,理解と協力を訴えた.
増田和茂健康・体力づくり事業財団常務理事は,運動・スポーツには,けがや障害が起こることがあると指摘.すべての国民が安心して健康・体力づくりの活動を実践するためには,安全で安心な医療が受けられる医療供給体制の確保が必要不可欠であり,その実現のため,本協議会と共に進んでいきたいと述べた.
その後,島健日本精神科病院協会会長が,五項目からなる本大会の決議案(下掲)を朗読.満場の拍手をもって,決議案は採択された.
最後に,古畑正東京都・世田谷区医師会会長の掛け声の下,参加者全員が起立して,「頑張ろうコール」を行い(写真),会は終了した.
決 議
わが国の医療は崩壊し始めている.
国民が安全で安心な医療を受けられるための医療提供体制を確保しなければならない.
よって,本大会参加者全員の総意として,次のとおり決議する.
一.地域医療を守る医療費の確保
一.医師・看護職等の不足の解消
一.高齢者のための療養施設の確保
一.患者の負担増反対
一.混合診療絶対反対
平成十九年十二月五日
国民医療を守る決起大会
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記者会見
大会終了後,国民医療推進協議会会長である唐澤日医会長,同協議会副会長である,大久保日本歯科医師会会長,中西日本薬剤師会会長,久常日本看護協会会長の三氏,同協議会理事の羽生田俊日医常任理事と鈴木東京都医師会会長が出席して,記者会見が行われた.
初めに,司会の中川俊男日医常任理事から,当日は,全国から,国会議員二百十七名を含む二千三百名以上が参加したことが報告された.
その後,唐澤会長が,本大会の開催趣旨と,大会では五項目の決議を採択したことを説明.今後は,「国民の声」である本決議をもって,政府関係・与党に対し,強く要望していきたいとの考えを示した.
国民医療推進協議会参加団体
(平成19年12月5日現在)
健康・体力づくり事業財団,全国公私病院連盟,全国自治体病院協議会,全国腎臓病協議会,全国病院理学療法協会,全国訪問看護事業協会,全国有床診療所連絡協議会,全国老人保健施設協会,全日本鍼灸マッサージ師会,全日本病院協会,日本医業経営コンサルタント協会,日本医師会,日本医療教育財団,日本医療事務振興協会,日本医療社会事業協会,日本医療法人協会,日本医療保険事務協会,日本ウオーキング協会,日本栄養士会,日本介護福祉士会,日本学校保健会,日本看護協会,日本作業療法士協会,日本歯科医師会,日本歯科衛生士会,日本視能訓練士協会,日本柔道整復師会,日本鍼灸師会,日本精神科病院協会,日本精神保健福祉士協会,日本病院会,日本病院薬剤師会,日本放射線技師会,日本訪問看護振興財団,日本薬剤師会,日本理学療法士協会,日本療養病床協会,日本臨床衛生検査技師会,日本臨床工学技士会,認知症の人と家族の会
(50音順/40団体)
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