日医ニュース
日医ニュース目次 第1111号(平成19年12月20日)

中医協(11月21・28・30日)
次期診療報酬改定「さらなるマイナス改定を行う状況にない」で意見一致

右から鈴木,竹嶋,中川ら日医役員

総 会

 十一月二十一日には,診療側・支払側双方から,平成二十年度診療報酬改定に対する意見が提出された.診療側は,長年にわたる医療費抑制策によって,地域医療提供体制は崩壊の危機に直面しているとし,「診療報酬の大幅な引き上げの実現を強く要望する」との意見書を提出.一方,支払側は,「社会経済の実情や患者・国民の負担感を勘案すると,二十年度は診療報酬を引き上げる環境にはない」と主張した.
 議論のなかでは,一部の支払側委員から,「物価・賃金の動向を診療報酬にも反映すべきであるが,今回は物価・賃金ともにプラス傾向だ」という意見が,また,公益委員からも,「病院医療の困難な現状や勤務医の疲弊といった状況で引き上げなければ,いつ引き上げるのか.今回は,常識的に言っても引き上げが妥当」という意見が出された.また,土田武史会長(早大商学部教授)からも,「病院医療が悪化していることは共通認識」との考えが示された.
 二十八日には,公益側委員が作成した素案が示され,それを基に議論が行われた.最終的には,公益側が,診療側・支払側双方から個別に意見聴取を行ったうえで取りまとめが行われた.意見のなかでは,「本体部分については,さらなるマイナス改定を行う状況にはないことで意見の一致を見た」と明記.そのうえで,厚生労働省に対して,平成二十年度予算編成に当たっては財源の確保に努めつつ,平成二十年度診療報酬改定に係る改定率の設定について,本意見の趣旨を十分に踏まえて対応することを求めるとともに,診療報酬のみならず,幅広い医療政策を講ずることを望むとした.
 議論のなかでは,竹嶋康弘副会長が,素案に「診療側は,診療報酬の大幅な引き上げの実現を行うべきとの意見であった」との記述があることについて,この文面だけでは国民に誤解を与えかねないと指摘.「地域医療を守るために」との文言を付け加えるべきと主張し,最終的に反映された.

基本小委

 二十一日には,DPC((1)適切な算定ルール等の構築(2)DPC対象病院のあり方(3)調整係数の廃止および新たな機能評価係数の設定)について議論が行われた.(2)については,軽症の急性期入院医療も含めてDPCの対象とする案を可とする意見も出されたが,鈴木満常任理事は,「重症を扱う病院と軽症を扱う病院では差があり過ぎる.バラつきをなくすためには重症を扱う医療機関を対象とする方が望ましい」として,「反対である」と明言.意見が分かれたため,次回再度協議することになった.
 二十八日には,(一)療養病床から転換した介護老人保健施設における医療サービスの給付調整,(二)療養病棟入院基本料,(三)後期高齢者医療(薬歴管理,外来医療)─について議論が行われた.
 (一)では,「療養病床から転換した介護老人保健施設」において,緊急対応的に医療提供が必要となる場合の,医療サービスの診療報酬上の評価について検討が行われた.
 議論のなかで,鈴木常任理事は,「このような施設に医療ニーズの高い人たちがいるということは,療養病床の再編計画自体に無理があったのではないか」と述べ,厚労省の考え方を改めて批判.そのうえで,「日医は,医療と介護のすみ分けということを常々主張してきたが,今回の措置は,その第一歩と考えている.医療を必要としている人たちに対して,医療提供がしっかり行えるようにすべき」と要請した.
 (二)では,慢性期入院医療の包括評価分科会が取りまとめた「平成十八年度慢性期入院医療の包括評価に関する調査」報告書の結果を基に,その見直し案が示された.
 鈴木常任理事は,「報告書でも大きな矛盾があるとされた医療区分による点数設定の見直しが論点として示されないのはいかがなものか」と指摘.竹嶋副会長も,「何度も主張してきたが,区分1の点数設定は,あまりにも低くコストに見合っていない」と,その是正を求めた.
 (三)に関しては,処方に際して,「お薬手帳」に記載された薬剤の情報を確認するなど,患者の現在の服薬状況および薬剤服用歴を把握することを義務付けることが提案された.竹嶋副会長は,薬の相互作用や重複投薬の防止を推進するとの方向性には賛成するが,義務付けには断固として反対すると主張した.
 三十日には,「リハビリテーション」「感染症対策」「勤務医の負担軽減策」「七対一入院基本料の基準の見直し」の四点について議論された.
 「リハビリテーション」については,維持期のリハビリテーションについて実施された調査結果を踏まえた論点が示された.
 竹嶋副会長は,前回改定で大きな問題となったことから,リハビリ団体からヒアリングを行ったと報告.各団体の共通の改善項目として,逓減制撤廃,面積要件の見直し,集団療法の復活等があることを説明した.さらに,「医療から介護へのリハビリの移行においては,その両方をしっかり見なければならない.関係団体の意見を十分聞いて議論に生かすべき.前回改定時には,その作業がなかった」と述べた.
 勤務医の負担軽減策では,十一月二日の議論を考慮し,地域性,診療科,管理者年齢,休日夜間急患センター等への応援について分析した結果を踏まえて,診療所における開業時間の夜間への延長など,時間外診療の評価体系を見直す案として,午後六〜十時,午前六〜八時において診療応需の態勢の有無に関係なく,小児科加算のように新加算が算定できる制度としてはどうかという提案がなされた.
 これに対して,鈴木常任理事は,(1)朝,学校や職場に行く前の午前八〜九時の時間帯の対応も必要(2)公的病院などが閉まっている土曜日の休日加算の算定も考慮すべき(3)小児加算を設定して勤務医の過重労働が緩和されたエビデンスを示すべき─などの意見を述べた.

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