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第1111号(平成19年12月20日) |
社会保障審議会医療部会(11月22,29日)
平成20年度診療報酬改定の基本方針が取りまとめられる
社会保障審議会医療部会が,十一月二十二日に都内で,二十九日に厚生労働省で開催され,竹嶋康弘副会長,中川俊男常任理事が出席した.
二十二日は,「平成二十年度診療報酬改定の基本方針(案)」について,議論が行われた.
「基本方針(案)」は,「三つの基本的考え方」「緊急課題」「四つの視点」からなっており,緊急課題として,「産科や小児科をはじめとする病院勤務医の負担の軽減」が挙げられている.
会議の冒頭,竹嶋副会長は,「地域医療体制は,無床・有床診療所,病院など,さまざまな形態によって支えられているが,現在はそれが崩壊しつつある.あるべき医療提供体制に関する方向性を議論したうえで,診療報酬改定についても議論すべきなのではないか」と,前回に引き続き,医療部会そのもののあり方について,疑問を投げ掛けた.
中川常任理事は,基本的考え方のなかで,前回改定時の基本方針を「基本的に継承すべきである」と表現していることを問題視し,「前回の改定率(マイナス)も継承すると読み取れる.昨今の医療を取り巻く状況を勘案し,文言を書き直すべき」と指摘した.
事務局は,「“継承する”との表現は,金額ではなく,方向性のことである」と説明したが,同常任理事は,前回改定時の基本方針のなかに,「経済・財政とも均衡がとれたものとするために過大・不必要な伸びを具体的に厳しく抑制することを通じて,将来にわたり国民皆保険制度を堅持していく」と明示されていたことを指摘し,再度,文言の修正を求めた.
さらに,診療所における夜間診療の評価について,「日中の報酬を夜間に充てるなど,財政中立の考えの下に調整されては困る」と述べ,文言の大幅修正を要求.また,「DPC対象病院の拡大等について,引き続き,検討するべき」と明記されていることについても,提出資料「医療現場の実態と診療報酬改定にむけての課題」を示して,その問題点を説明し,「拡大等との表現を削除して欲しい」と強く要望した.
他の委員からも,「地域医療を取り巻く現状を認識し,文言に加えるべき」などの意見が出され,鴨下重彦部会長から,医療費の抑制による現場の苦しみなど,医療現場の厳しい現状を文言として基本方針に盛り込むべきとの考えが示された.
二十九日は,前回の医療部会および二十六日に開催された医療保険部会での議論を踏まえて修正された「平成二十年度診療報酬改定の基本方針(案)」が示され,最終取りまとめに向けた議論が行われた.
提示された「基本方針(案)」は,「基本的考え方」のなかに,医師不足などによって地域医療の現場が崩壊しつつある現状についての文言が新たに加えられ四項目になったほか,「緊急課題」「四つの視点」に挙げられた個々の論点についても文言が修正された.
竹嶋副会長は,診療所における夜間開業の評価について,「地域のさまざまな状況に対応して欲しい」と要望した.また,中川常任理事も,「日中は診療せず,点数が高い夜間のみ診療することになると,受診できない人も出てくる」と指摘.夜間診療に対して点数を加算することによって国民の負担増につながることも危惧した.
さらに,同常任理事は,前々回の医療部会で提案された診療所の夜間診療を評価するために初再診料を引き下げるということについて,「文言は削除されたが,夜間診療に関する評価と初再診料の引き下げは別の問題である」と改めて主張し,事務局の意向を確認した.医療課長は,「全体の評価のなかで調整するのではなく,夜間診療のみを評価したいと考えている.そのことで初再診料の点数を動かすことは考えていない」と明確に回答した.
なお,医療部会における基本方針の取りまとめについては,当日出された意見と医療保険部会での議論を踏まえた調整も含め,部会長に一任し,中医協に提出することとなった.
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