日医ニュース
日医ニュース目次 第1114号(平成20年2月5日)

中医協総会(1月18日)
次期改定に向けて現時点での骨子まとまる

右から鈴木,天本,中川各常任理事
 中医協総会が,一月十八日に厚生労働省で開催され,舛添要一厚労大臣から,診療報酬点数の改正案を作成するよう,諮問があったことを受けて,「平成二十年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」を取りまとめた.
 骨子は,これまで診療報酬基本問題小委員会で審議を行ってきた結果を,社会保障審議会医療保険部会および医療部会において策定された「平成二十年度診療報酬改定の基本方針」に沿って,取りまとめたものである.ただし,「診療所の再診料の引き下げ」など,診療・支払両側の意見に隔たりが大きく,結論が得られなかった項目については両論併記となった.
 診療所の再診料の引き下げについては,プラス〇・四二%だけでは勤務医対策として不足するため,負担軽減策の財源の一つとして提案された.これに対して,鈴木満常任理事は,病院は入院,診療所は外来というように機能分担を図るために,再診料については,病院よりも診療所の点数が高く設定されてきた経緯等を説明.医師の技術料の象徴的存在である再診料の引き下げには強く反対する姿勢を表明するとともに,病院と診療所の格差を是正するのであれば,病院の再診料を上げるということも選択肢の一つとして考えられるのではないかと述べた.議論の結果,結論を出すには至らなかったものの,骨子には「引き下げ」の文言は明記されず,「病院と診療所の格差是正について検討する」との表現に修正された.
 さらに,病院勤務医の負担軽減策については,「診療所の夜間診療等の評価」も提案されていた.この件については,天本宏常任理事(竹嶋康弘副会長の代理)が,「勤務医が多忙な時間はむしろ日勤帯である.この提案では勤務医の負担軽減にはつながらず,少ない財源のなかで優先順位を考えれば,必要ない」と,その導入に反対を主張.議論の結果,土田武史会長(早大商学部教授)の意向もあり,骨子にはそのまま残されることになったが,鈴木常任理事は,加算の選択権は診療所側に残すこと(手挙げ方式)を求めた.
 外来管理加算の要件に「五分以上という時間の目安を設ける」との提案に対しては,鈴木常任理事が,外来管理加算は無形の技術に対する評価であり,医療の質は時間で計れるものではないと反論.健保連の対馬忠明専務理事も,患者が理解できない点数であり,時間以外のファクターを考えるよう指摘したことから,結論は得られなかった.
 後期高齢者医療制度における診療報酬については,初診料を引き上げる一方,再診料を引き下げることが提案された.天本常任理事は,継続した医療の提供が必要なことなど,後期高齢者医療の特徴を説明.再診料を引き下げることには反対の意向を示した.鈴木常任理事も,七十四歳と七十五歳で診療報酬体系が大きく変わることは問題とし,医療の継続性という観点から見ても反対であるとし,骨子には賛否両論の意見が併記されることになった.
 療養病棟入院基本料の適正化の提案に対しては,天本常任理事が,前回の改定で政策誘導がなされ,医療区分1の点数が極端に低く設定されたことを問題視.今回の改定では,まずはその是正を図るべきだと主張した.さらに,福祉医療機構の調査結果では,療養病棟の経営状況も厳しいものがあるとの結果が出ていることを示して,適正化には反対だと主張.その結果,骨子には医療区分1・ADL区分3の評価については,配慮するとの文言が付け加えられることになった.
 七対一入院基本料については,新たに算定要件として「看護必要度」「医師の要件」を導入する案が示された.鈴木常任理事は,唐突に医師の要件などが示されたことに不満を表明.経過措置を設けるなど,七対一を算定できなくなる医療機関への配慮を求めた.天本常任理事も,これにより,看護師の時と同様に,中小病院で医師の引き抜きが起きるのではとの懸念を示した.
 そのほか,当日の総会では,診療報酬の改定に,医療現場や患者等国民の声を反映させるため,骨子に対するパブリックコメントを求めることや,一月二十五日に群馬県前橋市内で公聴会を開催することなどが決定した.

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