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第1116号(平成20年3月5日) |
平成19年度日医医療情報システム協議会
「国民医療とIT〜国民を守る!安心・安全・最善の医療を目指して〜」をメインテーマに
平成十九年度日医医療情報システム協議会が,二月十六,十七の両日,日医会館大講堂および小講堂で開催された.
一日目は,中川俊男常任理事の総合司会で開会.
唐澤人会長のあいさつを岩砂和雄副会長が代読し,「IT化は,医療費抑制,管理医療の手段として位置づけられ,レセプトオンライン化などが半ば強引に推進されている.本会としては会員の総意に基づき,対処したい」と述べた.
次いで,有海躬行運営委員会委員長(山形県医会長)が,「医療情報は,発信側と受信側の双方が同じレベルで共有することが大事だ」とあいさつした.
特別講演は,まず秋山昌範マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院客員教授が,「医療連携に必要なソシアルネットワーク〜国民との対話を図るための手段として〜」と題して,「日本の保険医療は世界一である.良い医療にはお金がかかることを,専門家集団である医師会が発信することが重要」と説いた.
次に,古山一夫メディカリューション(株)CTO(最高技術責任者)は,「情報論から見た電子カルテの本質〜電子カルテに必要な技術革新とアーキテクチュア〜」について,「電子カルテでは,データは無制限に増え続けるため,技術革新が必要」と講演した.
シンポジウム「レセプトオンライン化」では,藤澤美穂厚生労働省保険局総務課保険システム高度化推進室長が,「レセプトオンライン化について」と題して,「平成二十三年四月から,原則,全医療機関をオンライン化する.困難例には代行請求も認める」と説明した.
安藤清寛社会保険診療報酬支払基金情報管理部長は,「レセプトオンライン請求の実務」で,「古いレセコンは買い替えが必要になる場合もある.また,別途パソコンが一台必要となり,そのほかにも費用はかかる」と指摘した.
小森貴運営委員会副委員長(石川県医会長)は,「オンライン請求義務化の問題点」で,「アンケート調査では,七・六%がオンライン請求の義務化によって『保険診療をやめるか,廃院する』と答えた.オンライン対応による負担額は,四年で七百五十七億円になるという.義務化は阻止せざるを得ない」と強調した.
本田孝也本田内科医院院長は,「もう紙へは戻れない.一方で,対応不能,廃業」と題して,「オンラインは便利で,もう紙レセには戻れない.一方,離島の開業医へのアンケートでは,『対応できないので,開業医をやめる』という人が何人もいる」と報告した.
討論では,オンライン化の問題点を指摘する意見が相次いだ.
二日目の午前には,(一)シンポジウム「地域医療連携とIT〜医療連携ネットワークを阻害するものは何か〜」が大講堂で,(二)事務局情報担当者セッション「医師会における情報伝達はどうあるべきか」が小講堂で並行して行われた.各医師会におけるIT化の現状とさまざまな取り組みが紹介され,つづいて行われたフリーディスカッションでは,白熱した議論が交わされた.
午後には,(一)講演「ORCAプロジェクト〜現状と今後の展開〜」と,(二)シンポジウム「医療系メーリングリスト,その光と影〜果たしてきた役割と今後の方向性〜」が行われ,最後に,三原一郎運営委員会委員(山形県医常任理事)のあいさつで閉会した.
なお,協議会の模様は,TV会議システムにより都道府県医師会向けに映像配信した.
参加者は,四百五十名(講師等関係者含む)であった.
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