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第1117号(平成20年3月20日) |
第X次 生命倫理懇談会
「終末期医療に関するガイドラインについて」の最終答申がまとまる
第X次生命倫理懇談会が,二月二十五日,日医会館で開催され,唐澤人会長からの諮問「終末期医療に関するガイドラインについて」に対する答申を取りまとめ,懇談会の席上,久史麿座長が竹嶋康弘会長代行に手交した(写真).
生命倫理懇談会は,昨年八月六日,唐澤会長に中間答申を提出.これを,都道府県医師会,医学会等関係各方面に配布するとともに,日医ホームページ上に掲載してパブリック・コメントを募集した.今回の答申は,それらの意見を踏まえて,さらなる検討を重ね,取りまとめたものである.
今回寄せられた意見のなかには,「終末期の定義を具体的に示して欲しい」との意見もあった.しかし,「終末期」は多様であり,患者の状態を踏まえて医療・ケアチームで判断すべきであるとの考えから,本ガイドラインでは,あえて終末期医療の定義をせず,日医の『グランドデザイン二〇〇七─各論─』に示された終末期の定義(広義,狭義)を参考資料として紹介している.
「はじめに」では,近年の医学・医療の進歩に伴い,場合によっては延命治療の差し控えや中止も,終末期医療に当たって考慮すべきことであると指摘.しかし,それらの行為は患者の死につながることから,その決定・判断は,担当医一人だけではなく,他の医師や医療関係職種等から構成される医療・ケアチームの意見を十分に聞いたうえで行うべきであるとしている.
そのうえで,治療行為の差し控えや中止は,(一)患者が治療不可能な病気に冒され,回復の見込みもなく死が避けられない終末期状態にある,(二)治療行為の差し控えや中止を求める患者の意思表示がその時点で存在する─ことが要件であるとしている.
また,「終末期医療の方針決定の基本的手続き」のなかに示された「“原則として”家族等の了承を得る」との表現については,その意味を明確にするため,「家族との連絡がとれない場合や家族等がいない場合などで,やむを得ず家族等の了承を得られないことも考えられるので,“原則として”という表記にしている」との注釈を付け加えた.
「おわりに」では,中間答申にも明記された「このガイドラインに示した手続きに則って延命治療を取りやめた行為について,民事上および刑事上の責任が問われない体制を整える必要がある」との見解を再掲.高齢化が急速に進んでいるわが国において,ますます重要になってくる終末期医療については,「学生時代から考察を深めることが大事であり,医学教育カリキュラムのなかに盛り込むべき」と提言している.
なお,二月二十七日には,担当の羽生田俊常任理事が記者会見を行い,答申の内容を公表.
同常任理事は,本答申の取りまとめに当たって,終末期の定義をあえてしなかったこと,法制化については意見の一致を見なかったことなどを説明した.
また,「終末期医療を,一般の方々にも理解してもらうには,学校教育(小・中学校)等,早い時期から学ぶ必要がある」とし,今後は,国民に対する啓発活動をさらに進めていきたいと述べた.
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