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第1117号(平成20年3月20日) |
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医師不足
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医師不足は所を問わず今やきわめて深刻な問題となっている.
数年前までは,医師数は十分足りていると言われていた.今も,医科大学の定員減らしの閣議決定は生きている.
しかし,現実は明らかに医師不足で,国も,緊急医師確保対策として期限付きだが医学部の入学定員数増を認めた.奨学金と連動した地域枠入学制度,自治体病院の広域化,不足・偏在が顕著な小児科・産科の重点化等々,考えられる方策はすべて試みつつある.
昭和四十三年,それまでのインターン制度に変わって臨床研修制度が発足し,試行錯誤を繰り返しながら続けられてきたが,実効性が薄いとのことから,現在の二年間の新医師臨床研修制度を創設した.計画が示された時,患者を全人的に診ることができるプライマリケア医の養成を目的とした趣旨は理解したが,これは実質的な医師減らしだと大反対した.
平成十六年の制度発足前から,大学による地方病院からの医師の引き上げが始まった.
制度開始一年目は,大学での研修医が,まだ相当数いたが,その後,市中の研修病院への,研修医のシフトが顕著となり,医師不足に見舞われた大学からの,地方病院への医師派遣がきわめて厳しい状況となった.
現在の新医師臨床研修制度が医師不足を生み,地域医療の崩壊の引き金になったことは,だれも否定しないだろう.この制度も発足後五年目を迎える.ここで新医師臨床研修制度の功罪を検証し,その在り方を早急に見直すべきである.
(北辰)
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