日医ニュース
日医ニュース目次 第1118号(平成20年4月5日)

平成19年度都道府県医師会情報システム担当理事連絡協議会
医療分野におけるIT化は十分な周辺整備とともに

平成19年度都道府県医師会情報システム担当理事連絡協議会/医療分野におけるIT化は十分な周辺整備とともに(写真) 平成十九年度都道府県医師会情報システム担当理事連絡協議会が,三月六日,日医会館小講堂・ホールで開催された.当日は,テレビ会議システムを通じて,八府県医師会(栃木,滋賀,京都,岡山,愛媛,高知,長崎,宮崎)が双方向通信で参加した.
 中川俊男常任理事の司会で開会.冒頭,唐澤人会長のあいさつを代読した岩砂和雄副会長は,「政府の医療政策は財政的要素が強く,レセプトオンライン化,社会保障カードの導入等,医療分野におけるIT化を,管理医療,医療費抑制の手段として,半ば強引に推進しようとしている」と批判.「周辺整備をおざなりにしたまま本格稼動すれば,医療現場は混乱に陥るだろう」と指摘した.
 議事に入り,まず大橋克洋IT化推進検討委員会委員長が,平成十八・十九年度委員会答申について報告.日医のテレビ会議システムの活用を求めたほか,「医療におけるITの活用という点から,診療データについては,医療機関間の交換,受診者との共有などを検討してきたが,個人の医療情報は本人が管理するのが一番よい」と述べた.
 つづいて,上野智明日医総研主任研究員が,厚生労働省の「医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等の活用に関する検討会」報告書について解説.国が患者・受診者の情報を蓄積して,わが国の疾病,医療提供,医療費などの状況を把握・分析すると言うが,データを第三者に提供する時には,公益性の確保が必須だとする日医の主張を説明した.
 さらに,厚労省の「レセプトのオンライン請求に係るセキュリティに関するガイドライン」が,今般改定され,セキュリティ基準を守ればレセプトコンピュータでも直接請求が可能となり,IPsec(Internet Protocol security)とIKE(Internet Key Exchange)を組み合わせたインターネット接続であれば請求もできることになったと述べた.
 また,レセプトオンライン請求義務化に関するアンケート調査を,宮城・石川両県医師会方式を土台として,近く実施することを紹介.日医標準レセプトソフト(ORCA)は,順調にユーザーを伸ばしており,医療現場のIT化,日医独自のデータベースの構築などに活用可能と考えているとした.
 次に,矢野一博日医総研主任研究員が,厚労省の「社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会」報告書ならびに同検討会に提出した日医の見解の趣旨説明を行った.社会保障カードの導入については,利用目的の限定等の基盤整備が実現できない限りは時期尚早であると主張.また,カードの根底に存在すると予想される社会保障番号は,国民総背番号制として管理医療等に利用される懸念があること,また,経済財政諮問会議等が主張する社会保障番号を利用した社会保障個人会計は,公的保険給付範囲の縮小など,国民皆保険制度の崩壊をもたらす恐れがあるとして反対していることを説明した.
 日医認証局については,平成二十年度中の早い時期に本稼働を目指して準備中だと報告.併せて,医師の団体である日医が認証局を運営する意義については,「ビジネスとしてではなく,公益性の視点から運営することだ」と述べた.
 質疑応答では,テレビ会議での参加者を含めて,活発な議論が行われ,閉会した.

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