日医ニュース
日医ニュース目次 第1122号(平成20年6月5日)

社会保障国民会議
唐澤会長

社会保障費2,200億円の削減方針の撤廃を要求

社会保障国民会議/唐澤会長/社会保障費2,200億円の削減方針の撤廃を要求(写真) 政府の社会保障国民会議(第四回目)の会合が,五月十六日,総理大臣官邸で開催された.委員として出席した唐澤人会長は,福田康夫内閣総理大臣に,直接,社会保障費の国庫負担年二千二百億円の削減方針の撤廃を強く求めた.
 社会保障国民会議は,社会保障のあるべき姿について,国民に分かりやすく議論を行うことを目的として設置されたものである.委員には,唐澤会長のほか,学識経験者,経済界,労働界などから十五名が参加しており,座長には吉川洋東京大学大学院経済学研究科教授が就任している.
 会議の下には,年金・雇用を議論する「所得確保・保障分科会」,医療・介護・福祉を議論する「サービス保障分科会」,少子化・仕事と生活の調和を議論する「持続可能な社会の構築分科会」という三つの分科会が設置され,それぞれ議論が行われている.
 十六日の会議では,医療・介護サービス,少子化対策・仕事と生活の調和の実現,高齢期の所得保障と公的年金のあり方等について意見交換が行われたほか,舛添要一厚生労働大臣が,長寿医療制度について説明した.
 第三回目の会合から出席している唐澤会長は,初めて医療担当者の立場から意見表明を行った.
 唐澤会長は,まず,財政の健全化が国の大きな命題であることは分かるが,それを優先するあまり,特に社会的弱者と言われる方々が,大きな不安,苦しみにさいなまれていると指摘.毎年,社会保障費の自然増に対する年二千二百億円の国庫負担の抑制が続く限りは,この不幸な現実は改善されないとし,国民の我慢,現場の努力に頼ることは,すでに限界に来ていることに理解を求めた.
 さらに,唐澤会長は,繰り返される二千二百億円の削減が医療現場の荒廃を年々,加速させている状況を,(一)四十七都道府県中二十五の県で,一一九番通報があってから,医療機関に患者が搬入されるまでの時間が,三十分以上かかっている,(二)医療機関や診療科がなくなる,ベッドが減らされる,という問題が全国各地で頻発しており,療養病床はすでに二万床も減っている─などの具体的な事例を示して説明.特に小児科,産科,救急医療では,それが明白になってきていると現場の窮状を訴えた.
 そのうえで,「社会保障費の年二千二百億円削減の箍(たが)を外さない限り,この会議での議論も,単なる要望に終わってしまう」と強調.当会議として,社会保障費の機械的抑制を止めることを,政府与党等に対して求めていくべきとの考えを示した.
 一方,長寿医療制度については,新たに保険料を徴収される人たちが出ているなど,高齢者に大きな不安を与えていることを憂慮.高齢者は所得の高さに関係なく病気になり,医療を受ける時には全員が弱者であることから,高齢者の医療は,“保障”の理念で支えるべきとする日医の考え方を改めて説明した.
 また,年金に関しては,国が面倒をみるという議論もされているが,高齢者の医療や介護に関する議論が同次元で行われていないことを指摘.有事の安全保障である防衛については,その費用を国が負担しているのであるから,国民にとって平時の安全保障とも言える社会保障についても,同じように,国が責任を負うべきだと主張した.
 今回の会議は意見交換で終了となったが,今後も,六月の中間報告,秋の最終報告取りまとめに向けて,精力的に議論が行われていくことになっている.

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