日医ニュース
日医ニュース目次 第1126号(平成20年8月5日)

地域医療崩壊阻止のための総決起大会
社会保障費の年2,200億円の削減撤廃を決議

 地域医療崩壊阻止のための総決起大会(主催:国民医療推進協議会,協力:東京都医師会)が,7月24日,都内で開催された.当日は,約1,200名の参加者が集い,参加者全員の総意として,社会保障費の年2,200億円の削減撤廃を求める決議が採択され,「頑張ろうコール」が行われた.

地域医療崩壊阻止のための総決起大会/社会保障費の年2,200億円の削減撤廃を決議(写真) 「経済財政改革の基本方針二〇〇八」は,六月二十七日に,社会保障費の削減路線を撤回しないままに閣議決定された.本大会は,この方針を受けて取りまとめられる「平成二十一年度予算編成の基本方針」,いわゆるシーリングの閣議了解前に,社会保障費を年二千二百億円削減するという政府の方針に明確に反対する姿勢を示し,その撤廃を求めていることを国民の声として,政府に届けることを目的として開催されたものである.
 大会は,荻原正日本柔道整復師会長による開会宣言で幕を開け,最初に,主催者を代表して,国民医療推進協議会長である唐澤人日医会長があいさつを行った.
 唐澤会長は,長年にわたる政府の医療費抑制政策によって,地域医療は崩壊し,平等であるべき医療に地域格差が生じていると指摘.その事態を招いた原因は,国に国民の生命と健康,生活を守るという根幹的理念が欠如していたことにあるとし,「社会保障制度のあり方が国民の最大の関心事となっている今こそ,社会保障費の行き過ぎた削減という誤った政府の方針を撤廃させるため,国民とともに運動し,国民医療を守っていかなければならない」と訴えた.
 つづいてあいさつした鈴木聰男東京都医師会長は,昨今の医療を取り巻く諸問題の根本原因は,社会保障費の年二千二百億円の削減にあると強調.社会保障費の削減は,国民に苦しい思いをさせるのみだと批判し,財政優先の方針はもう終わりにすべきと主張した.
 その後,多忙のなか,会場を訪れた国会議員から,あいさつが行われた.
 尾辻秀久参議院自民党議員会長は,国の収支のバランスは確かに崩れているが,支出を抑えて収支のバランスを保とうとするのはもう限界に来ていると断言.むしろ消費税の引き上げやタバコ税の引き上げなど,国の収入を増やすことを考えていくべきとした.
 津島雄二自民党税制調査会長は,これまでのような財政優先の考え方を批判し,年末の予算編成に向けては,「国民が本当に安心出来るような社会保障制度が構築出来るよう努力していくので協力して欲しい」と述べた.
 鈴木俊一自民党社会保障制度調査会長は,無駄なものは削減しなければならないが,高齢化や先進技術によって膨らんでいく医療費の自然増は,決して無駄なものではないとし,政府の社会保障費削減の方針に疑問を投げかけた.
 そのほか,出席した多くの国会議員からは,異口同音に,社会保障費の年二千二百億円の削減は限界に来ているとの考えが示された.
 引き続き,竹嶋康弘日医副会長が登壇.大会開催の趣旨を「国民が社会保障に対して不安を持っている今こそ,政府に間違った方針の反省を促し,社会保障費の機械的抑制の撤回という明確な方針転換を図るよう,国民とともに強く要望していくことが必要だとの思いから,本大会を開催することとした」と説明した.
 その後,日本歯科医師会,日本薬剤師会から,決意表明が行われた.
 大久保満男日本歯科医師会長は,これ以上の社会保障費の抑制が続けば,医療は崩壊の道をたどる以外にないと指摘.国民の健康な生活を守るためにも,最後の最後まで,社会保障費の削減方針の撤廃を求めて戦っていくとした.
 児玉孝日本薬剤師会長は,人が人らしい生活を送るために,わが国で社会保障制度をつくったときの理念を,今こそ思い出すべきであるとし,その理念は,その時々の経済状況によって,ゆがめられるものであってはならないと主張.今後も,経済優先による社会保障費の削減には,断固として反対していくと述べた.
 その後,西澤寛俊全日本病院協会長が,本大会の決議案を披露.満場の拍手をもって,決議案は採択された.
 最後に,羽生田俊日医常任理事の掛け声の下,参加者全員が起立して,「頑張ろうコール」を行い,会は終了した.
 なお,竹嶋日医副会長,羽生田日医常任理事は,翌二十五日に,日本歯科医師会の近藤勝洪副会長,村上恵一専務理事,日本歯科医師連盟の渡邉敏弘理事長,村田憙信副理事長,日本薬剤師会の児玉会長,生出泉太郎副会長とともに,舛添要一厚生労働大臣,額賀志郎財務大臣等を訪問.今回の大会の決議の趣旨を説明して,社会保障費の年二千二百億円の削減撤廃に対する理解と方針の転換を求めた.

地域医療崩壊阻止のための国民運動

決  議

 長年にわたる社会保障費の伸びの抑制が,医療崩壊を顕在化させたことは明らかである.
 国民が安全で安心な医療を受けられるための確固たる医療提供体制の再構築には,適正な社会保障費の確保が必要不可欠である.
 よって,本大会参加者全員の総意として,次のとおり決議する.

一.社会保障費の年2,200億円削減撤廃

 平成20年7月24日

地域医療崩壊阻止のための総決起大会

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