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第1127号(平成20年8月20日) |
第4回男女共同参画フォーラム
「医療崩壊をくいとめるために,今何ができるか,何をすべきか」をテーマに
第4回男女共同参画フォーラム(日医主催,福岡県医師会担当)が,7月19日,全国から363名の参加者を集めて,福岡市内で開催された.日医からは宝住与一副会長,羽生田俊・今村定臣両常任理事が出席した.
冒頭のあいさつで唐澤人会長(宝住副会長代読)は,「女性医師の就労支援は,医師全体の就労環境の改善にもつながる重要な問題であり,日医としても,真摯(しんし)に取り組みを進めていきたい」と述べた.
横倉義武福岡県医師会長のあいさつにつづいて,稗田慶子財団法人福岡県女性財団理事長は,「男女共同参画推進のために」と題して基調講演を行い,男女共同参画社会基本法を始めとする法律や制度が整備されてきた今こそ,女性が就業の継続を通して実績を積み,意思決定の場に参画するチャンスであると指摘.また,短時間正職員制度は医師の職業特性にあった制度ではないかとの考えを示したうえで,その導入・運用にはトップの意識が重要であると述べた.
櫻井えつ前男女共同参画委員会委員は,「男女共同参画委員会の活動内容」を中心に報告.同委員会がモデル資料の作成等を行った「女子医学生,研修医等をサポートするための会」「女性医師の勤務環境の整備に関する講習会」については,都道府県医師会における各講習会の開催状況を示したうえで,未開催の県に対して早期の開催を要請した.
保坂シゲリ前日医医師再就業支援事業部長は,「日医医師再就業支援事業」について,昨年十二月にコーディネーター養成講習会を開催し,コーディネーターを四人から十一人に増員したことや,女性医師バンクの運用状況(平成二十年六月末現在)として,求職登録者数が二百三十二名(延べ三百二十五名),求人登録施設数が八百七十施設,就業実績が八十五件(再研修八件を含む)あったことなどを報告した.
シンポジウムでは,「医療崩壊をくいとめるために,今何ができるか,何をすべきか」をテーマに,四名の演者が講演を行った.
清野佳紀男女共同参画委員会委員(大阪厚生年金病院長)は,「ワーク・ライフ・バランスの視点から」をテーマに講演.女性医師支援のために残りの医師が協力するのではなく,全職員の待遇改善につながるという視点で,(1)子育て支援制度(2)短時間正社員制度(3)主治医制度の見直し(4)チーム医療やシフト制(5)地域連携(地域におけるチーム医療)─に取り組み,ワーク・ライフ・バランスを守らなければならないと説明した.
津田喬子名古屋市立東部医療センター長・東市民病院長は,講演テーマでもある「医師の働き方を見直す」ためには,勤務支援体制の整備だけではなく,総合的な施策を実践することが重要であると指摘.(1)医療従事者の増員と待遇改善(2)卒前・卒後教育における臨床教育の充実(3)医師会・病院・大学との連携強化と機能分担─といった施策を促進すると同時に,各地での取り組みを共有することが重要であるとまとめた.
小田泰子宮城県医師会常任理事は,「天の岩戸を開く─女性医師の意識改革─」をテーマに講演を行い,女性の意識改革は,女性が主体的に提案出来る環境整備から始まり,責任を持って立案・発言することが出来る場所をつくらなければならないと説明.また,女性医師の問題を解決するためには,女性自らの努力が必要であり,女性がトップに立つことによって問題解決への流れが促進されるのではないかとの考えを示した.
田川大介西日本新聞社専任職編集委員は,「マスコミの視点から」をテーマに講演を行い,医療崩壊を防ぐには,医療界だけの問題としてではなく,社会の問題として考えることが重要であるとしたうえで,安心出来る地域づくりという視点から,一つひとつの事例を丁寧に取り上げ,国民的な議論を巻き起こすことがマスコミの責務ではないかと述べた.
フロアを交えた総合討論が行われた後,長柄光子男女共同参画委員会委員から,「日本医師会第四回男女共同参画フォーラム宣言」の提案があり,満場一致で採択された.
次期担当医師会の長瀬清北海道医師会長のあいさつにつづいて,今村(定)常任理事が閉会のあいさつを行い,フォーラムは終了した.
宣 言
家庭と仕事の両立,ワーク・ライフ・バランスは,単に女性医師のみならず男性医師にとっても,充実した人生をおくる上で重要なことであり,その礎の上にたってこそ,社会的使命を万全に果たしうるものである.そのためには,社会の理解・支援が必要であることを再認識しなければならない.医師としての使命を継続できるような環境整備・施策の実践は,医療崩壊をくいとめ,日本の医療を守るために喫緊の課題であることを,このフォーラムに参集した皆の総意により,ここに宣言する.
平成20年7月19日
日本医師会第4回男女共同参画フォーラム |
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