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第1128号(平成20年9月5日) |
福島県立大野病院事件判決に対する日医の見解を公表
平成十八年二月に,福島県立大野病院で帝王切開時の癒着胎盤に伴う産婦の失血死により,業務上過失致死罪と医師法第二十一条違反容疑で,担当医が逮捕,拘留,その直後に起訴された事件で,被告人である産婦人科の医師を無罪とする判決が,八月二十日,福島地裁から出された.これを受けて,木下勝之常任理事は,同日,記者会見を行い,今回の裁判所の判断は妥当なものであるとする日医の見解を明らかにした.
同常任理事は,まず,亡くなられた患者さんとその遺族に対して,改めて哀悼の意を表明.そのうえで,今回の事件を「産婦人科医だけでなく,医療界や,社会に大きな衝撃を与えるものであった」と振り返るとともに,その問題点として,(一)医療事故が発生してから一年以上が経過し,その間,この事故の調査が行われ,地域の周産期医療を担い続けてきた医師が,逃亡や証拠隠滅の恐れがまったくないにもかかわらず,突然逮捕,拘留され,その直後に起訴されるという極めて不当な事件であったこと,(二)専門医が判断すれば,通常の医療行為を行ったが,残念ながら力が及ばず不幸にして亡くなられた事例であり,刑事罰の対象にはなり得ない事件であるにもかかわらず,刑事司法の判断によって「医師の過失が重大である」とされ,刑事訴追されたこと―を指摘した.
今後については,今回の判決を契機として,現在議論がなされている新たな死因究明制度における原因究明と再発予防に向けた取り組みを法制化し,医療の管理を今までのような刑事司法が行うのではなく,専門家集団である医師自らが行う仕組みの構築を目指していきたいとの考えを表明.さらに,医療の専門家である医師には,医療事故の防止に努めるとともに,医療を受ける患者と真摯に向き合い,相互の理解に努め,医師・患者間の溝を埋めていくよう,一層の努力をしていくことを求めた. |