日医ニュース
日医ニュース目次 第1136号(平成21年1月5日)

年頭所感
日本医師会長 唐澤

年頭所感/日本医師会長 唐澤祥人(写真) 明けましておめでとうございます.会員の皆様におかれましてはお健やかに新年を迎えられたこととお慶び申し上げます.日ごろから日医の会務運営に対しまして,厚いご支援と深いご理解を賜り,心より御礼申し上げます.
 一昨年夏に表面化した米国のサブプライムローン問題は,昨年九月には金融危機として世界を覆い,わが国でも株価が暴落し,輸出関連企業ばかりか多業種にわたり大不況に陥っています.その影響は,わが国の労働人口の三分の一を占めるという派遣社員,請負社員など,非正規雇用労働者を直撃し,契約解除という名の大量解雇が始まっています.こうした雇用の不安は,社会不安を一層増大させました.昨年発生したいくつかの衝撃的な事件の背景と,社会不安の増大には,少なからぬ関連があると思わざるをえません.
 一方,長期にわたる医療費抑制策は,医師不足をはじめ,医療分野を完膚なきまでに疲弊させています.とりわけ専門医療の中核的担い手である病院医師の負担は限界点を越えております.昨年立て続けに起こったハイリスク妊婦の救急受け入れ不能問題は,今日の医療が抱える問題の象徴的な現れと認識しています.早急に具体策を講じ,医療崩壊の拡大を防ぎ,国民の期待に応える地域医療提供体制を強化して,国民の日常生活における安心を確保することが最重要です.将来への安心・安全が見通せない状態では,地域社会の文化的,経済的活力をも低迷させ,単なる医療問題でなく,ひいてはわが国全体の深刻な社会問題へと発展し,大きな希望を夢見た二十一世紀は,まさに暗黒の時代に突入してしまうことが危惧されます.
 こうした,将来を展望しにくい状況をいかに切り開いていくかについては,われわれ医療関係者の積極的な行動が求められています.その立脚点こそ,わが国が世界に誇る,「いつでも,どこでも,誰もが」普遍平等に医療を享受できるという理念の国民皆保険制度です.これはすべての国民にとって掛け替えのない財産であります.国民にとって,健康に不安を抱えたままでは快適な生活が送れないばかりか,明日の見通しも立ちません.「国民の生命と健康を守る」という原点に立ち返り活動するとき,国民皆保険制度は一層輝きを増すことでしょう.
 「健康寿命世界一」など,世界的にも高い評価を受けている日本の医療ですが,その実態は,医療関係者の献身的な努力によって成立しているのが実状です.今こそ,地域医療,なかでも小児医療,産科医療,救急医療の早急な再建が必要です.地域医師会が中心となり関係者の力を結集し,地域住民の安心・安全のために寄与することが重要であります.
 日医では,日本の将来的医療を展望した「グランドデザイン」を作成し,中長期視点に立ちながらも,喫緊の課題に取り組んでまいります.会員の皆様におかれましては,日医が推進する医療政策に対し,深いご理解と格段のご支援を賜りますようお願い申し上げます.
 ここに,本年が会員の皆様にとりまして,一層安寧で躍進の年でありますよう衷心より祈念申し上げ,新春のごあいさつといたします.

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