|
第1139号(平成21年2月20日) |
第1回医療事故における責任問題検討委員会
医療における法的責任問題等について議論を開始
医療事故における責任問題検討委員会の初会合が,一月十九日,日医会館で開催された.
本委員会は,現状の医道審議会における行政処分のあり方や,現在議論が行われている医療安全調査委員会(仮称)設置法に係る疑問点について,刑事責任に関する捜査機関との関係を整理するとともに,「刑事責任と行政責任の関係と,そのあり方」「ADR(裁判外紛争解決手続)を含む民事責任による解決方法」等に関して,各専門分野の有識者を交えて協議を行うことで,今後の方向性を明らかにすることを目的として設置されたものである.
委員会は,担当の木下勝之常任理事の司会で開会.冒頭,あいさつした唐澤人会長は,「日医は,医療の質を向上させ,医療安全に資することを基本理念とした新たな死因究明制度の構築を目指しており,その制度のなかでは,刑事司法の関与を極めて限定的なものとし,行政処分に関しても,再教育を中心としたものにできないかと考えている」と説明したうえで,本委員会に対して,「難しい問題ではあるが,活発なご議論をいただき,未来につながる提言を取りまとめて欲しい」と要望した.
引き続き,唐澤会長により,委員長に樋口範雄東大大学院教授が,副委員長に山口徹虎の門病院長がそれぞれ指名され,諮問「医療事故による死亡に対する刑事責任・民事責任・行政処分の関係の整理,並びに今後の在り方に関する提言」が,樋口委員長に手交された.
その後の討議では,始めに,樋口委員長から,本委員会においては提言の取りまとめに際し,各委員による自由活発な議論を行いたい旨のあいさつが行われた.つづいて,主に「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」に関して,フリーディスカッションが行われた.
委員のなかからは,「その目的が責任追及にあるのか,原因究明にあるのか,はっきりしない」「警察介入の抑制がどれだけ担保されているのか見えない」など,疑問の声が出された.
一方,これらの意見に対して,「矛盾のない制度のなかで生活しているかと言えば,そのようなことはない.いかにそれを使いこなすかということが重要である」「医療事故死に対する受け皿を作っておく必要がある」「刑法第二百十一条について,直接的に改正するのではないが,医療に携わる者の場合,医師を中心とした委員会が重度な過失だけに限定して通報する仕組みにしたものであり,このことには乗じる必要があると思う」との意見も出された.
今後は,月一回のペースで委員会を開催し,議論を深めていくことになっている.
医療事故における責任問題検討委員会
有賀 徹(昭和大教授)
石井 正治(大阪府医理事)
宇賀 克也(東大大学院教授)
小川 明(共同通信社編集委員・論説委員)
川出 敏裕(東大大学院教授)
児玉 安司(東大大学院客員教授)
鈴木 利廣(弁護士)
高杉 敬久(広島県医副会長)
堤 康博(福岡県医常任理事)
豊田 郁子(新葛飾病院セーフティーマネージャー)
永井 良三(東大教授)
樋口 範雄(東大大学院教授)
松井 道宣(京都府医理事)
山口 徹(虎の門病院院長)
山本 和彦(一橋大大学院教授)
畔柳 達雄(日医参与・弁護士)
奥平 哲彦(日医参与・弁護士)
手塚 一男(日医参与・弁護士)
(敬称略)
【木下常任理事・医療安全対策課】
|
|