日医ニュース
日医ニュース目次 第1140号(平成21年3月5日)

社会保険診療報酬検討委員会
会長諮問「平成20年度診療報酬改定の評価」について答申

 社会保険診療報酬検討委員会が「平成二十年度診療報酬改定の評価」について答申を取りまとめ,一月二十八日,安達秀樹委員長(京都府医師会副会長)から唐澤人会長に手交した.
 本委員会では,唐澤会長から,「(1)平成二十年度診療報酬改定の評価」および「(2)現在の診療報酬における問題点とその対応」の二つの諮問を受けているが,今回の答申は,そのうちの(1)について集中審議を行い,取りまとめたもので,(一)総論,(二)緊急課題への対応,(三)各論(特に重要な項目),(四)特記事項─からなる.
 平成二十年度の診療報酬改定においては,改定率は診療報酬本体プラス〇・三八%,薬価マイナス一・二%,差引マイナス〇・八二%となった.そして,病院勤務医の負担軽減対策として合計千五百億円の財源(医科のプラス財源千億円強と診療所から四百億円強の財政支援)が振り向けられた.しかし,(一)の総論では,「今回の改定において新設された項目は,施設基準のハードルが高く,算定できる病院は中核病院等の大病院がほとんどであり,地域医療に貢献している中小病院や精神科病院等では算定が困難であり,実質的に勤務医支援等の目的を達したとは言い難く,地域医療は依然として深刻な状態にある」として,わずか千五百億円の財源では,医療崩壊を食い止めることができないと指摘している.
 そのうえで,今回の医療崩壊の危機をもたらした最大の原因は,長年の医療費抑制政策だとして,「医療崩壊を阻止し,急速に進歩する医療と日増しに強くなる患者の要求に応えるためにも,国は社会保障費抑制の方針を転換し,少なくとも先進国並みの国民医療費になるような,財政の見直しが必要である」と強調している.
 (二)では,平成二十年度改定において緊急課題とされた「産科医療」「小児医療」「病院勤務医の負担軽減」への対策について,後記のとおりそれぞれ評価し,「今後の課題」として,その対策に投じられた千五百億円による課題解消の効果の検証が必要だとするとともに,診療報酬による政策誘導だけで解決できる問題ではないと指摘している.
 産科医療については,ハイリスク分娩管理加算の対象疾患の拡大と点数引き上げ,ハイリスク妊娠管理加算と妊産婦救急搬送入院加算の創設などを評価する一方,実際に勤務している産科医師の待遇改善につながる病院側(管理者)の配慮が必要だとしている.
 小児医療については,小児入院医療管理料の再編による「一」の新設は,小児科・小児外科医師二十名以上等の厳しい施設基準等により,大部分の病院小児科が恩恵を受けるものではなかったことから,診療報酬上の大幅な改善を求めている.
 病院勤務医の負担軽減については,入院基本料等加算の算定要件として,「病院勤務医の負担軽減に向けての具体的な取り組み」を求めることに対しては評価しているが,一部の急性期大病院のみに資源配分がなされ,地域中核病院およびその勤務医には救済の手が差し伸べられていないことを危惧(きぐ)している.
 (三)の各論では,特に重要な項目として,(1)夜間・早朝等加算(初診料・再診料)(2)外来管理加算(再診料)(3)後期高齢者診療料(4)軽微な処置の基本診療料への包括評価(耳鼻咽喉科,眼科,皮膚科)(5)後発医薬品の使用促進(6)DRG/PPSの一部導入(7)有床診療所の入院基本料─について,それぞれ平成二十年度改定の評価を行った.
 (四)の特記事項では,「外来管理加算の五分要件」を取り上げ,健保組合・共済組合の政管健保支援措置千億円負担とのバランス上設定された経緯があることから,平成二十年度における政管健保への政府予算(千億円)の健保組合等による肩代わりのための特例法案の不成立によって,前提が崩れていることを強調.
 そのうえで,外来管理加算の算定制限に対する日医の取るべき立場について,「『外来管理加算の算定制限』による影響調査を待つまでもなく,この条件変化のみを理由として,その撤廃を直ちに主張すべきである」としている.

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