日医ニュース
日医ニュース目次 第1141号(平成21年3月20日)

平成20年度母子保健講習会
「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─3」をテーマに

平成20年度母子保健講習会/「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─3」をテーマに(写真) 平成二十年度母子保健講習会が,「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─3」をメインテーマとして,二月二十二日に日医会館大講堂で開催された.
 今村定臣常任理事の司会で開会.冒頭,唐澤人会長は,「国は総合的な子育て支援事業を行っているが,長年の医療費抑制策により,医療を取り巻く環境は,依然として厳しい状況にある.医師,医師会,行政は,それぞれの役割を自覚し,積極的な取り組みを進めていかなければいけない.この講習会の成果を地域医療の場で活用して欲しい」とあいさつした.
 午前は,講演二題が行われ,大谷泰夫厚生労働省大臣官房長が,「少子化対策とその政策環境について」と題して,少子化の現状を諸外国と比較しながら,現在行われている政策を説明した.特に,ワーク・ライフ・バランスと親の就労・子育てが両立出来る社会基盤の構築が重要と話した.
 清川輝基NPO法人子どもとメディア代表理事は,「“メディア漬け”が『子どもの育ち・親子関係』を蝕(むしば)む」と題する講演で,テレビゲーム,パソコン,携帯電話等の電子映像メディアの登場により,子どもたちのメディア漬けが進み,からだも心も“人間になる”ための条件や環境を破壊し,奪い取ってきた可能性があると指摘.結果として,子どもや若者の多面的な発達不全や親子の愛着形成に影響を及ぼしているのでは,として早急な対策を社会に求めた.
 午後は,「今後の予防接種のあり方」をテーマにシンポジウムが行われた.まず,安次嶺馨沖縄県小児保健協会理事が,「麻しん排除に向けて─沖縄からの発信─」として,“沖縄県はしかゼロプロジェクト”の活動を紹介した.
 次に,橋本剛太郎はしもと小児科クリニック院長が,「麻しん排除に向けて─福井県のMR接種率はなぜ高い?─」と題して,予防接種台帳を整備・管理することや,正確な予防接種率の把握,未接種者への直接勧奨を通じ,その結果として,高い接種率につながったと説明した.そして,集団接種が接種率の向上につながると言われているが,個別接種でも高い接種率が確保出来ることを強調した.
 武内一耳原総合病院副病院長は,「ヒブ(Hib)ワクチンをすべての子どもたちに─Hib髄膜炎の早期発見は出来ません─」と題して,平成二十年十二月に発売されたヒブワクチンが定期接種に組み入れられるように訴えた.また,「先進国では,一九九〇年代前半に定期接種化され,Hib髄膜炎は激減している.発熱を主訴に来院する子どもは多いが,その中に髄膜炎が隠れている.しかし,Hib髄膜炎は早期診断が困難であり,Hib髄膜炎対策には,ワクチンしかない」と述べた.
 井上正樹金沢大学・医薬保健学域・医学系・産科婦人科学教授は,HPVワクチンについて話した.HPVとは,ヒトパピローマウイルスで,子宮頸がんの原因ウイルスである.HPVワクチンは,すでに,日本を除く世界百カ国以上の国で承認され,接種が行われている.性交渉前の接種が基本で,わが国の性交渉年齢の低年齢化とともに,若年者の子宮頸がん増加が危惧されている.HPVワクチンの導入には,社会的なコンセンサスの形成や性教育を含めた啓発活動が重要である.
 梅田珠実厚労省健康局結核感染症課長は,「予防接種制度の現状と課題」と題して,昭和二十三年に予防接種法が制定され,その後,数回の改定を経て今日に至った変遷を説明した.そして,予防接種の今後の課題として,予防接種制度のあり方としての対象疾患の位置づけ,アドバイザリー機能の強化などがあり,さらに,細胞培養日本脳炎ワクチンなど新しいワクチンへの対応,麻しん対策の推進,混合ワクチンの導入などがあると説明した.
 討議では,予防接種率の向上や,予防接種の意義,ヒブワクチンの供給状況などについて,フロアとの間で活発な意見交換が行われ閉会した.参加者は三百七十四名.

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