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第1145号(平成21年5月20日) |
4月22日
財政制度等審議会財政構造改革部会での議論について
竹嶋康弘副会長,中川俊男常任理事は,四月二十一日に開催された財務省の財政制度等審議会財政構造改革部会において社会保障制度に関する議論が行われたことを受け,日医の見解を明らかにした.
竹嶋副会長は,西室泰三同部会長が,「もう一度,リアリスティックに(社会保障費)二千二百億円削減だけを金科玉条とすることが正しいのか議論せざるを得ない」と発言したとの報道に対し,財制審が従来の社会保障費抑制方針を見直す方向を打ち出したことを評価した.
一方,財務省が「医師偏在問題の是正のため,病院勤務医と開業医の診療報酬の配分を見直すべき」という意見を示したとの報道については,「医療崩壊の元凶は,社会保障費年二千二百億円の機械的削減にほかならない」と反論.日医が昨年公表したTKC医業経営指標の分析からも,診療所・病院ともに経営が悪化していることに触れ,「医療再生に向けて必要なことは地域医療全体の底上げで,病院だけでなく診療所も含め,医療全体に十分な財源を投入することである」と主張し,「財務省は医療崩壊の現実を直視し,国民に安全で良質な医療を提供し得る財源の確保に努めるべきだ」と述べた.
また,中医協の委員構成の見直しも議論する方針との報道に対しては,「二〇〇五年の『中医協の在り方に関する有識者会議』の報告を受け,中医協の委員構成は見直されている.さらなる見直しの必要性はまったくない」として,「医師の偏在や医療崩壊の責任を,中医協に帰結させるのは安易である」と批判した.
つづいて中川常任理事が,議論の各論についての日医の見解を示した.
まず,財政審が,日本の平均在院日数が長く,受診回数が多い傾向という見解を示していることについて,「第一に,包容力のある医療提供体制の下で,日本の健康長寿が達成されてきたことを認識すべき.第二に,医師不足を真摯(しんし)に受け止めるべき.医師不足のまま,平均在院日数の短縮化を目指せば,医療の安全が保たれない」と指摘した.さらに,平均在院日数短縮化の結果,がん患者で見られるような治療途中での退院や,DPC対象病院における退院時の治癒率の低下という事実を示すとともに,救急医療の「受け入れ困難」問題に触れ,「医療費抑制の一つの結末である」と述べた.
さらに,勤務医と開業医の給与差と医師偏在の議論については,「開業医の借入による設備投資や税負担などを考慮すれば,単純に比較出来ないのは明らか.手取り年収で比較すべき」と主張.加えて,「開業医は地域でさまざまな社会的役割を担っているうえ,経営責任,すなわち地域医療継続の責任を負っており,それらを加味して考える必要がある」との認識を示した.また,医師の偏在解消については,その突破口として,日医が『グランドデザイン二〇〇九』で提案している地域医療研修ネットワーク創設による改革案を改めて説明した.
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