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第1148号(平成21年7月5日) |
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対策型検診と任意型検診
がん検診には,市町村や職域で実施される対策型検診と,人間ドックなどに代表される個人が自主的に受ける任意型検診がある.
現在,日本の対策型検診としては,肺がんの胸部X線検査および喀痰細胞診,胃がんのX線検査,大腸がんの便潜血検査,乳がんの視触診とマンモグラフィ,子宮がんの視診と細胞診および内診が推奨されているが,地域によっては一部を実施していないところもある.
一方,任意型検診としては各種の腫瘍マーカーやCT,MRI,PET,腹部エコー等,また胃や大腸の内視鏡検査等が行われている.
がん検診は一般財源化されていることから,市町村独自の取り組みが展開されている.そこで,一部市町村では任意型検診とされている胃内視鏡検査や前立腺PSA検診,乳がんの超音波検査等をすでに導入しているところもある.
厚生労働省では,「がん検診に関する検討会」において,五大がんの検診についての個別の評価について検討してきた.平成十九年六月の中間報告では,各がん検診のチェックリストを作成・公開し,がん検診の事業評価の手法についての提言を行っている.
また,「がん検診事業の評価に関する委員会」報告書では,今後のわが国におけるがん検診事業評価のあり方について,受診率の向上や精度管理・事業評価の課題等に対し,現状分析と基本的な考え方,具体的な対応について触れている.
他方では,厚労省がん研究助成金による「がん検診の評価とあり方に関する研究班」(垣添班)で,各種がんのガイドライン策定における課題抽出と対応についての検討や,胃内視鏡検診,肺CT検診,前立腺PSA検診を対策型検診に導入することの是非を検討するための研究・評価を進めている.
対策型検診については,費用・効果の問題,エンドポイントを早期発見・重症化防止におくのか,死亡率減少効果とするのか,受診率の正確な算定方法や受診促進,精度管理の向上などさまざまな課題が指摘されている.
垣添班で検討中の上記検診については,まだ対策型検診への導入に至るような十分なエビデンスは得られていない.
(常任理事・内田健夫)
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