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第1148号(平成21年7月5日) |
2009年世界禁煙デー記念講演会
「ドイツの受動喫煙防止法に学ぶ」をテーマに
「二〇〇九年世界禁煙デー記念講演会」が,「ドイツの受動喫煙防止法に学ぶ」をテーマに,六月十三日,日医会館大講堂で開催された.
主催者あいさつを行った唐澤人会長は,「喫煙による,健康被害の防止を目指し,世界保健機関(WHO)が毎年五月三十一日を世界禁煙デーとし,現在,各国でさまざまな活動を展開している.わが国においても,二〇〇〇年の健康日本21の策定を受け,二〇〇二年に健康増進法が制定され,同法第二十五条では,多数の者が利用する施設の管理者に対し,受動喫煙を防止するために,必要な措置を実行するよう規定されている.また,二〇〇五年二月には,WHO『たばこ規制枠組み条約(FTCT)』が発効され,日本でもたばこの規制の取り組みが進められている.
日医では,二〇〇三年に『禁煙推進に関する日本医師会宣言(禁煙日医宣言)』を第百八回定例代議員会で採択した.二〇〇八年には,医療機関,医師会における全面禁煙の徹底,禁煙治療・禁煙支援体制の整備,喫煙防止教育の推進を柱とする,『禁煙に関する声明文』を発している.本日は,ドイツの取り組みの中で,われわれが何を学ぶべきか,今後の検討に資するべく真摯(しんし)に拝聴したい」と述べた.
講演1では,ローター・ビンディング ドイツ連邦議会議員が「受動喫煙から身を守る」と題してドイツでのたばこ規制に関して,報告を行った.
ビンディング氏は,古くから行われていた,たばこ産業による心理操作の歴史の紹介をはじめ,ドイツがん研究所(DKFZ)の調査で,「受動喫煙による死亡者が年三千人以上存在する」という事実の公表を契機に,議員立法の動きが起きたことを説明.たばこ産業や観光業,飲食店による抵抗を受けるなか,ドイツ国民の四分の三から非喫煙者保護法の求めもあり,「連邦受動喫煙防止法」が二〇〇七年九月から施行され,公共交通機関,駅,官庁などが禁煙になったことが紹介された.
一方,たばこ産業の抵抗による影響は,連邦省の鑑定人にまでも及んでおり,結果,受動喫煙防止に関する「飲食店に関する法律」は,十六の連邦州のそれぞれで管轄することになった.そのようななか,二〇〇八年七月に連邦憲法裁判所が,「面積によって,禁煙を決めるのは違法である」との飲食店主の訴えを認め,各州では二〇〇九年十二月末までに,飲食店すべてを禁煙とするかどうかの判断が迫られているのが現状であるとした.
講演2では,マルチナ・ペチュケ・ランゲル ドイツがん研究所たばこ対策部長が「ドイツにおける非喫煙者の法的保護二〇〇五〜二〇〇九年」と題して,講演を行った.
ドイツがん研究所では,受動喫煙の危険性を訴えるため,一般のジャーナリストや政治家に対し,分かりやすい資料を作成,メディアへの啓発を行った結果,マスコミが禁煙擁護に乗り出し,有力な新聞にも記事が掲載されたことを紹介.また,政界からも協力を得て,二〇〇七年の連邦法制定に至ったことを説明した.
その説明資料として,研究所で行ったドイツ全土の飲食店百カ所における有害物質の測定調査の結果や,非喫煙者保護が実行出来ることの証明として,アイルランドやイタリアの例を紹介.また,非喫煙者保護を妨害する嘘の情報に対して,データを示して対応してきたことが説明された.
そして,非喫煙者の保護活動を推進した結果,連邦法の制定が行われて以降の調査では,レストランや,カフェで,副流煙の影響が軽減したことや,禁煙となった飲食店が国民に支持されていること,二〇〇二〜二〇〇八年にかけて喫煙予防とたばこの総消費量削減に効果があったことが報告された.
つづいて,シンポジウムでは,「日本の取り組みについて」と題して,国会,日医,公共的施設における「受動喫煙防止条例」を成立させた神奈川県からのシンポジストを呼び,それぞれの立場から活動報告が行われた.
日医からは,内田健夫常任理事が,「日本医師会の取り組み」と題して二〇〇八年九月に発した『禁煙に関する声明文』を紹介した.また,日医会員の喫煙意識調査では,男性医師の喫煙率が有意に低下していることや禁煙啓発に向けて,ポスターや冊子を作成したり,署名運動を行っていることを報告した.
この後シンポジストによる質疑応答が行われ,閉会のあいさつで終了となった.
なお,当日は,会館一階ロビーで,たばこに関する健康教育資料や受動喫煙防止に関する普及啓発の展示も行われた.
出席者は三百四十三名.
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