日医ニュース
日医ニュース目次 第1155号(平成21年10月20日)

日医定例記者会見

9月30日
開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査結果を公表

 中川俊男常任理事は,日医が実施した「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」の結果がまとまったとして公表した.
 調査は,日医会員のうち,医療法人または個人立の診療所および病院の開設者を対象とし,都道府県ごとに,診療所の二〇分の一,病院の一〇分の一を抽出し,三千九百七十四施設に七月二十八日に調査票を送付,八月二十八日に回答を締め切り,千九百八十四件の有効回答(有効回答率四九・九%)を得た.
 同常任理事は,それぞれの調査項目ごとに集計結果を報告し,「まとめ」として,以下の説明をした.
 開業の背景として,財政制度等審議会は,「病院勤務医の厳しい勤務環境及びそれを背景とした医師の病院離れ(開業医志向)」を指摘している.しかし,今回の調査結果によると,最近は開業年齢が高まってきており,若い頃から開業を目指しているのではなく,キャリア途上で疲弊し,開業を志向しているケースもあると推察される.最近五年以内に新規開業した開業医の六割は,「自らの理想の医療を追求するため」に開業した「前向きな」開業である.一方で,「過重労働に疲弊したため」「精神的ストレスに疲弊したため」という回答も,それぞれ三割を超えており,病院勤務医の厳しさが改めて浮かび上がった(図1)

日医定例記者会見/9月30日/開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査結果を公表(図)

 診療面で,勤務医時代に負担であったという回答の上位は,「当直」が四四・五%,「時間的拘束(当直以外)」が三七・七%であり,深刻な過重労働を示していた.これに対し開業してからは,「夜間・休日診療」は一六・〇%にとどまるが,「時間的拘束」は二八・五%であった.
 また,管理面で開業後に最も負担となっている業務は,「スタッフの採用」であった.「経理・会計」および「税務」が負担であるという回答もそれぞれ四割以上,「資金繰り」も三割強あり,勤務医時代には経験のない経営管理業務が大きな負担になっている(図2).借入金も約半数の開業医が負っており,特に新規開業で,開業五年以内の開業医では,「借入金あり」は八五・八%.さらに,医療法人の場合,「借入金あり」の開業医の約九割が個人保証を行っている.

日医定例記者会見/9月30日/開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査結果を公表(図)

 次に,開業医は,通常の診療に加えて夜間診療や地域医療活動も行っており,四十歳代以下の開業医の一割強では,診療していない日数が週に一日以下であった.その結果,勤務医や研究者時代と比べて,労働時間が「過重になった」という回答が約四割,精神的ストレスが「強くなった」という回答が半数強あり,開業医の疲弊も看過出来なくなっている.また,「休業時の収入確保」に不安を感じている開業医も八割を超えている.
 経営状態も悪化しており,診療所では,一年前と比べて患者数が減少した施設,経営全般が悪化した施設,利益が悪化した施設がいずれも約六割あった.このような経営状態を踏まえて,診療所開業医の半数強は自らの給与を引き下げているが,医師不足,看護師不足もあり,診療所,病院ともに約四割で従業員の給与を引き上げざるを得ない事態である.
 今回の調査結果を踏まえて,同常任理事は,「中医協の調査等にもあるように,病院勤務医の過重労働は深刻であり,現在の最優先課題が,病院勤務医の過重労働緩和であることは明らかで,しっかりとした財源の手当てが必要であるが,開業医も過重労働,精神的ストレスにさいなまれており,経営状態の悪化がこれに追い打ちをかけている」と指摘.今回の調査でも,「開業医としての将来像を明確に描けないまま開業し,苦悩している開業医の実態が浮き彫りになった」として,病院であろうが,診療所であろうが,地域で「理想の医療」を追求する医師を失わないためにも,病院勤務医と開業医をそれぞれ評価することを求めた.

日本医師会ホームページ「定例記者会見」(H.21.9.30)掲載の資料を参照)

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