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第1155号(平成21年10月20日) |
9月30日
いわゆる混合診療に係る東京高裁判決に対する日医の見解
中川常任理事は,九月二十九日に東京高裁から出された,いわゆる混合診療に係る判決に対する日医の見解を発表した.
今回の東京高裁判決では,健康保険法は「混合診療を原則として禁止したものと解するのが相当」として,一審の東京地裁判決を取り消し,原告の請求を棄却.「保険により提供する医療については,財源面からの制約や,提供する医療の質(安全性,有効性等)の確保等の視点から,範囲を限定することはやむを得ず,相当なものと言わざるを得ない」としている.
同常任理事は,まず,東京地裁の一審判決(平成十九年十一月七日)に対して,当時の記者会見(日医白クマ通信七八〇号,七九九号参照)で,混合診療禁止の根拠があいまいであることから,国に対して混合診療の定義を明確化することを求め,混合診療解禁そのものについて反対を表明していた経緯を述べた.
そのうえで,今回の判決については,「日医は,かねてから安全性,有効性の確保の観点から,混合診療の解禁に反対してきたところであり,今回,東京高裁が,安全性,有効性の確保に踏み込んで,混合診療禁止を認めたことを評価する」と述べた.
また,「合理的な理由のある医療等は,国民に公平に保険給付されるのが当然である.現在,保険収載までに時間がかかることが問題として指摘されているが,有効性,安全性が認められた医療であれば,速やかに評価療養とし,さらには保険収載すべきであり,そのために鋭意協力していきたい」と加えた.
最後に,論点整理として,同常任理事は第一に,医療の安全性が事後検証でよいのかという点には,事後チェックで安全性が否定されれば,その医療はやがて淘汰(とうた)されるであろうが,医療の安全性は人の生死にかかわることから,被害者が出てからでは遅いこと,第二に,国民の経済的負担が軽減されるのかについては,全くの誤りとし,保険外診療の負担が出来ない低所得の人たちが,一般的な医療ですら公平に受けられなくなる恐れもあること─を挙げ,混合診療解禁の危険性を改めて指摘した.
なお,今回の判決に対して長妻昭厚生労働大臣は,「現時点では,判決の具体的内容を十分把握したものではないが,国のこれまでの主張が認められたものと考えている」との談話を発表している.
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