日医ニュース
日医ニュース目次 第1160号(平成22年1月5日)

年頭所感
日本医師会長 唐澤

年頭所感/日本医師会長 唐澤祥人(写真) 明けましておめでとうございます.会員の皆様にはお健やかに新年を迎えられたことと謹んでお慶び申し上げます.
 昨春以降,わが国でも新型インフルエンザが猛威をふるい,いまだ沈静化していませんが,世界的にみますと日本の対応は非常に的確であると評価されています.診療などに当たられている医療関係者の皆様には,改めて感謝する次第です.
 昨年九月に鳩山民主党政権が発足しましたが,鳩山首相は「日本に暮らすすべての人々が,誇りをもって生活を送れる,新しい国家の形を提言していきたい」と,強い意欲を示しました.しかし,長期にわたる医療費抑制政策により,医療の各分野は完膚なきまでに疲弊させられ,医療崩壊の状況を来しています.とりわけ専門医療の中核的担い手である病院勤務医師の負担は限界点を超えました.早急に有効な具体策を講じ,地域医療提供体制を再構築することが,国民の安心・安全確保にとって不可欠です.
 わが国は,明治以来,産業・経済の振興を基礎に,ひたすら国力の増大に努めてきました.その結果,あらゆる分野で便宜この上ない生活環境を築くことができ,多くの人々は,経済発展こそが,明日に向かって揺るぎない豊かな日常生活を約束するものと考えています.しかし,経済成長とともに蓄えられた膨大な資産を,グローバル化した市場の下,巧妙な投機的資金運用によって瞬時に膨大な利益を獲得できるがごとき幻想が振りまかれました.リーマンショック,ドバイショックなど,世界を震撼させた出来事は,こうした市場原理主義によるマネーゲームの象徴的帰結とも言えます.
 わが国のように資源が少ない,貿易・技術立国にとっては,精緻を極める生産技術の開発能力をもつ人材育成など,科学や教育への費用を惜しんではなりません.また,地球温暖化など環境悪化を防止する取り組み,とりわけ環境に配慮した農業・林業の振興など,自然との共生にも力を注ぐことが肝要です.
 将来を展望しにくい今日の状況を切り開くためには,われわれ医療関係者の積極的な行動が求められます.その立脚点こそ,わが国が世界に誇る,「いつでも,どこでも,だれも」が普遍平等に医療を享受できる国民皆保険制度であり,これは国民的財産です.健康に不安を抱えたままでは快適な生活が送れないばかりか,明日の見通しも立ちません.「国民の生命と健康を守る」という原点に立ち返り活動するとき,国民皆保険制度は一層輝きを増すことでしょう.
 日本医師会では,昨年二月に『グランドデザイン2009─国民の幸せを支える医療であるために─』を,また十月には『日本医師会の提言─新政権に期待する─』を示し,医療政策を提起しております.会員の皆様におかれましては,深いご理解と格段のご支援を賜りますようお願い申し上げます.
 ここに,本年が会員の皆様にとりまして,一層安寧で躍進の年でありますよう衷心より祈念申し上げ,新春のご挨拶といたします.

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