日医ニュース
日医ニュース目次 第1163号(平成22年2月20日)

プリズム

事実と解釈

 「おはようございます」と朝のあいさつをする.通常,あいさつされた人間は,相手に対して悪い感情は持たない.「いい人」「感じのよい人」という解釈となる.
 しかし,あいさつの仕方やそれまでの人間関係などが絡んでくると,その解釈は全く変わってしまう.「悪意」を感じることも「いやみ」と解釈することもある.
 入院中,同僚が見舞いにきて,無理をせずしっかり治るまで安心して療養するよう言ったとする.これも「見舞いに来てくれた」「やさしい言葉かけをしてくれた」という事実が,「同僚思いの人」という解釈につながる.
 通常この通りであるが,一〇〇%ではなく,先ほどと同様の要素が加わると解釈が変わることだってある.
 つまり,事実は変わらないが,解釈によってその真意や真実は変わってしまうという事である.
 一対一の関係に限定しても無数にこのようなものが考えられる.これが,複数の関係者間での事実や,集団,組織,社会という広範囲になると,一つの事実だけでは,その解釈に誤りが生じる可能性が高くなるのではないか.
 いくつかの事実を積み上げていき,さらにその背景なども考慮しないと,正しい解釈にならない可能性がある.また,経験や思い込みも含まれることがあり,この問題は複雑化する.
 事実と真実は,イコールの関係ではなく,解釈によっては,かけ離れるものであるということを,我々は認識しておく必要があると思う.

(T)

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.