日医ニュース
日医ニュース目次 第1172号(平成22年7月5日)

厚生労働省
新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議報告書まとまる

厚生労働省/新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議報告書まとまる(写真) 厚生労働省の新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議(座長:金澤一郎日本学術会議会長)は,このほど報告書を取りまとめ,六月十日に金澤座長から長妻昭厚労大臣に提出した.
 本会議は,昨年の新型インフルエンザの流行に際して,厚労省が実施した対策の総括を行うことを目的として,三月に設置されたものである.報告書を取りまとめるまでに七回の会議を開催し,現場の状況を把握するため,四十名を超える特別ゲストから意見聴取も行われた.
 今回取りまとめられた報告書には,(一)全般的事項,(二)サーベイランス,(三)広報・リスクコミュニケーション,(四)水際対策,(五)公衆衛生対策(学校等の臨時休業等),(六)医療体制,(七)ワクチンの各項目ごとに,厚労省に対する提言と運用上の課題が示されている.
 (二)サーベイランスでは,厚労省および国立感染症研究所によるサーベイランスの一元化を求めるとともに,サーベイランスの評価にかかわる方法や体制について,検討・強化すべきとしている.
 (三)広報・リスクコミュニケーションでは,新型インフルエンザ等の危機管理においては,国民への迅速かつ正確な情報提供が極めて重要であるとし,国が責任を持って,都道府県,市町村などと連携して,広報していくことが必要と指摘.また,国が迅速に最新の正しい情報を伝える必要がある地方自治体や医療現場などに,情報が迅速かつ直接届くよう,インターネットの活用も含め,情報提供のあり方について検討すべきとしている.
 (四)水際対策では,その縮小など,機動的な見直しが可能となるようにすべきとし,その手段として,海外における感染症発生動向の早期探知や発生国における感染状況等の情報収集・分析が可能となるような仕組みの構築を求めている.
 (五)公衆衛生対策(学校等の臨時休業等)では,学校等の臨時休業の情報について,地域の医療機関や医師会と学校等の関係者が迅速に情報を共有出来るようなネットワークシステムを構築することを提案している.
 (六)医療体制では,医療従事者が地域の医療体制維持に協力しやすい環境を整えるため,休業時や医療従事者が死亡または後遺症を生じた場合の補償も検討すべきとしたほか,医療機関間および行政との連携体制を一層強化するため,保健所や医師会などの関係団体が,医療機関間の調整役となることなども検討すべきとしている.
 (七)ワクチンでは,接種に関するガイドラインの早急な策定が求められるとしたほか,接種の際の実施主体,費用負担のあり方,集団接種についても検討すべきと指摘.さらに,ワクチンの返品問題に関しては,「返品も含めた在庫問題の解決に向けて,早急に最大限努力すべきである」との文言が盛り込まれた.
 特別ゲストとして,第四回会議から出席した保坂シゲリ常任理事は,今回の報告書取りまとめを受けて,次のような考えを示した.
 「会議には途中から参加させていただいたが,議論のなかでは,今回の新型インフルエンザの診療,ワクチン接種は現場の医師や従事者の高い職業倫理に基づく犠牲的行動に支えられたものであったこと,さらには医師会の果たした役割の重要性を強調するとともに,国は今回の対応が不完全であったことを謝罪し,医療関係者に対して,深い謝意を表すべきであると主張してきた.
 その結果,報告書には,医師会の役割の重要性が随所に明記されるとともに,『はじめに』の部分には,死亡率を低く抑えられた理由として,『医療水準の高さと医療従事者の献身的な努力』『国民一人一人の努力と病院,診療所,薬局などで働く医療従事者など現場の努力の賜と考えられる』との文言が盛り込まれたことは高く評価したいと考えている.
 ワクチンの返品の問題については,全国の医師会から,その改善を求める要望をいただいている.この問題の解決なしには次に進むことは出来ないと考えており,会議のなかでも強く主張したほか,五月二十一日には民主党幹事長および同党議員政策研究会予防接種法小委員会に,新型インフルエンザワクチンの医療機関在庫の返品の実現を強く求めてきたところである.
 今回の報告書には,『返品も含めた在庫問題の解決に向けて,早急に最大限努力すべきである』との文言が盛り込まれており,このことは改善に向けた一つの大きな前進と考えている.今後も,引き続き,厚労省などに対して,その解決に向けた働き掛けを行っていきたい」
 なお,報告書の全文は厚労省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/info_local.html)で閲覧可能となっている.

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