日医ニュース
日医ニュース目次 第1178号(平成22年10月5日)

第1回第XII次生命倫理懇談会
諮問は「移植医療をめぐる生命倫理」

第1回第XII次生命倫理懇談会/諮問は「移植医療をめぐる生命倫理」(写真) 第XII次生命倫理懇談会の第一回会議が九月十三日,日医会館で開催された.
 担当の羽生田俊副会長の司会で開会.冒頭のあいさつで,原中勝征会長は,「今般,臓器移植法が改正され,すでに八例の臓器移植が行われているが,改正前十三年間に八十六例ということを考えると急激な増加であり,今後,臓器提供における問題など議論を重ねる必要がある.現在,臓器移植だけでなく,遺伝子医療や再生医療,生殖補助医療など,生命そのものの本質に関わる先進医療の発達は著しいが,残念ながらわが国ではそれを支える生命倫理の基盤は決して確立されているわけではない.私たちは命の尊厳,大切さという基本に戻って生命倫理のあり方を考え,日常の医療に貢献していきたい」と述べた.
 つづいて,原中会長は,座長に久史麿日本医学会長を指名し,諮問「移植医療をめぐる生命倫理」を手交した.
 久座長は,「臓器移植をめぐっては,まだまだ生命倫理の問題が山積している.臓器移植ならびに関連した問題について,二年間ともに考えていきたい」とあいさつした.
 会議では,諮問の検討に入る前に,久座長からホメオパシーに関する日本医学会長,日医会長による記者会見についての報告があり,次いで藤川謙二常任理事より,「人体の不思議展」の議題提出の経緯が説明された.
 「人体の不思議展」については,八月二十四日の第六回理事会で,小森貴理事(石川県医師会長)が,遺体を商業ベースで展示することに倫理的妥当性の疑義があると問題提起したことを受けたものである.
 委員からは,パリでの同展の開催に際し,人権団体が中止を求める訴訟を起こし,迅速に中止命令が下されたことなどが報告され,「死体解剖保存法」しか法的根拠がない現状では,国外で加工された外国人の遺体を興行的に利用することへの法的規制は望めず,この懇談会の倫理的側面からの議論を経て,日医から何らかの見解を表明すべきとの意見が相次いだ.
 座長は,今後,日本解剖学会,日本生命倫理学会の有識者からも意見を求め,議論を深めたいとした.
 諮問「移植医療をめぐる生命倫理」については,脳死と臓器移植,生体移植,渡航移植の問題のほか,遺体由来の幹細胞培養の問題,移植で使用した以外の臓器・組織・細胞の利用など幅広く問題が指摘され,今後それぞれの問題に関して,有識者を招いてヒアリングを行い,議論を進めていくことが確認された.ヒアリングの講師の選任を行うなかでは,「移植を受けた患者」側からのヒアリングも提案された.
 次回の懇談会では,脳死と臓器移植の問題,人体組織移植の問題について議論を行う予定である.

生命倫理懇談会

薬袋  健(山梨県医会長)
森  洋一(京都府医会長)
川島  周(徳島県医会長)
福田  稠(熊本県医会長)
岡野 栄之(慶大教授)
斎藤 加代子(東女医大附属遺伝子医療センター所長・教授)
久 史麿(日本医学会長・自治医科大学長)
寺岡  慧(日本移植学会理事長)
鍋島 直樹(龍谷大教授)
島 次郎(東京財団研究員)
正岡  徹(骨髄移植推進財団理事長)
町野  朔(上智大教授)
 俊介(東女医大客員教授)
畔柳 達雄(日医参与・弁護士)
奥平 哲彦(日医参与・弁護士)
手塚 一男(日医参与・弁護士)
【羽生田副会長,藤川常任理事・企画課】

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