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第1183号(平成22年12月20日) |
12月1日
政府のTPP参加検討に対する日医の見解を公表
中川俊男副会長は,政府による環太平洋連携協定(TPP:Trans-Pacific Partnership)参加検討に向けての問題提起として,日医の見解を明らかにした.
TPPは,現在九カ国(シンガポール,ニュージーランド,ブルネイ,チリ,アメリカ,オーストラリア,ペルー,ベトナム,マレーシア)により交渉中の協定であり,二〇一五年までの交渉妥結を目指している.
同副会長は,TPPへの日本政府の対応を説明したうえで,医療分野については,これまでの規制改革論者の意見を踏まえると,TPPへの参加によって,日本の医療に市場原理主義が持ち込まれ,最終的には国民皆保険制度の崩壊につながりかねない面もあることが懸念されるとして,今後,政府に対して,TPPの検討に当たっては,国民皆保険制度を一律の「自由化」にさらすことのないよう強く求めるとした.
そのうえで,具体的な懸念事項としては,(一)日本での混合診療の全面解禁(事後チェックの問題を含む)による公的医療保険の給付範囲の縮小,(二)医療の事後チェック等による公的医療保険の安全性の低下,(三)株式会社の医療機関経営への参入を通じた患者の不利益((1)医療の質の低下(2)不採算部門からの撤退(3)公的医療保険の給付範囲の縮小(4)患者の選別(5)患者負担の増大)の拡大,(四)医師,看護師,患者の国際的な移動による医師不足・医師偏在に拍車がかかり,さらに地域医療が崩壊―の四点を挙げた.
また,同副会長は,今回の見解について,「政府が参加を検討しているTPPについて,反対とか賛成とかを言おうとしているのではなく,TPPへの参加によって医療や介護分野に重大な影響が出ることが懸念されるので,それらを政府に十分に考えてもらいたい」という意味での見解であることを強調した.
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