日医ニュース
日医ニュース目次 第1185号(平成23年1月20日)

日医定例記者会見

平成22年12月22日
「医療滞在ビザ」創設に関する日医の見解を示す

日医定例記者会見/平成22年12月22日/「医療滞在ビザ」創設に関する日医の見解を示す(写真) 中川俊男副会長は,昨年十二月十七日に外務省が「医療滞在ビザ」創設を発表したことを受け,その問題点を指摘し,日医の見解を述べた.
 「医療滞在ビザ」の設置については,六月十八日に「新成長戦略」等で閣議決定されており,今回はその具体化として,在外公館における運用開始(二〇一一年一月から)が外務省より公表された.そのなかでは,「従来,治療目的で来日する外国人には短期滞在ビザが適用されてきたが,『医療滞在ビザ』は,人道的観点も踏まえ,治療等で来日を希望する外国人にとって,一層利用しやすいものとなる」としている.
 まず,同副会長は,「医療ツーリズム」に対する日医の見解として,(一)国籍を問わず,患者を診察,治療することは医師の当然の責務,(二)営利企業が関与する組織的な医療ツーリズムには反対,(三)「WHOの呼び掛け」や「イスタンブール宣言」を遵守(じゅんしゅ)し,移植ツーリズムに反対─の三点を改めて主張.今般の「医療滞在ビザ」については,外国人患者受け入れ医療機関の認証制度整備に向けて予算計上されており,医療機関の格付けにつながる恐れがあること,同伴者について親戚関係や人数の制限がないことなどの問題点を挙げた.
 さらに,「医療滞在ビザ」には,身元保証機関として旅行会社等,民間資本の関与が明示されていることから,営利企業が組織的に関与する医療ツーリズムに発展する可能性があると指摘.医療への株式会社参入,混合診療全面解禁への突破口にもなりかねないとして,強い遺憾の意を示した.
 そのうえで,政府,外務省に対しては,「医療滞在ビザ」はあくまでも人道的措置に限定し,倫理面,安全面などでの厳格な対応を要望するとした.
 また,日医が昨年十一月に四十七都道府県医師会を対象に実施した,各地の医療ツーリズムの動向に関するアンケート結果に触れ,多くの医師会が行政等の動きに懸念を抱いていること,二十二医師会が「反対」,六医師会が「どちらかと言えば反対」と回答し,「賛成」する医師会はなかったことを明らかにした.
 最後に同副会長は,今般の「医療滞在ビザ」が,日本の皆保険を崩壊させる端緒とならないよう注視し,問題が生じれば即座に修正を求めていく考えを示した.

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