日医ニュース
日医ニュース目次 第1185号(平成23年1月20日)

平成22年度都道府県医師会医事紛争担当理事連絡協議会
医療事故の紛争処理について,ADRを踏まえ協議

平成22年度都道府県医師会医事紛争担当理事連絡協議会/医療事故の紛争処理について,ADRを踏まえ協議(写真) 平成二十二年度都道府県医師会医事紛争担当理事連絡協議会が昨年十二月十六日,日医会館小講堂で開催された.
 担当の葉梨之紀常任理事の司会で開会.冒頭,あいさつに立った原中勝征会長は,三十八年目を迎える日医医賠責保険制度に対する日頃の献身的な活動に謝意を示すとともに,平成二十二年より会費に含まれる保険料が引き下げられたことを報告した.
 そのうえで,「患者さんの生命に関係するような現場での仕事は,精神的にも大変疲れるものである.この制度が会員の先生方の医療活動に寄与していることを考えると,ますます大切に守っていかなければいけないと感じている」と述べ,さらなる協力を要請した.

山形・和歌山両県医師会からの報告など

 その後行われた協議では,日医医賠責保険制度の運営に関する経過報告の後,山形県ならびに和歌山県両医師会から医療事故紛争対策と活動状況についての報告があり,質疑応答が行われた.
 栗谷義樹山形県医師会副会長は,同県における医療事故・医事紛争の処理状況を説明したうえで,「裁判外交渉」や「調停」でおおむね解決し,「訴訟」に至るものは一部であることを報告.山形医療ADR研究会を立ち上げ,地域医療界主導のADR(裁判外紛争解決手続)を検討していることを紹介し,現場の医療者・患者のニーズに応じた設計に取り組んでいるとした.
 山田和毅和歌山県医師会理事は,同県では患者・家族からの相談を,県の「医療安全支援センター」だけでなく,「県立保健所」「県医師会」「地域医師会・医療機関等」でも受け,連携して運営していることを報告.
 そのなかでは相談や医事紛争の状況などを紹介するとともに,今後の課題として,紛争当事者の反省と再発防止策の実行や,コミュニケーション能力と適切な記録作成のトレーニングなどを挙げた.
 また,医療安全担当役員である高杉敬久常任理事からは,医師法第二十一条の医療関連死の問題について,「今年度中に日医の基本的な方針を決めたい」との発言があった.

日医医賠責保険制度は代表的なADR

 つづいて,弁護士の畔柳達雄日医参与が,「医療事故の紛争処理とADR」について,講演を行った.
 同参与は,法律家の立場から,さまざまな紛争形態の解決方法を整理し,まず,ADRの定義について,当事者の合意に基づき第三者を仲裁人に選任し,損害賠償の有無や額を裁判所に代わって判断してもらう「仲裁」であることを説明した.
 一方,これと混同されがちな「医療メディエーター」が行うのは,あくまでも「調停」であり,ADRとは違うことを強調.医療メディエーターは,損害賠償の問題に触れると弁護士法違反となるため,病院内においては双方の言い分を聞く係としての重要な役割を担っており,「感情の紛争」と「勘定の紛争」を分けて考える必要があるとした.
 さらに,日医の医賠責保険制度こそが日本の代表的なADRであり医療事故の損害賠償を決める「勘定の紛争」の解決手段であると強調した.
 その後の質疑応答では,各県医師会から事前に寄せられた質問と要望について,葉梨常任理事からは,今後も機動的で柔軟性のある制度運営を心掛けることや産科医療補償制度との関係などについて解説があり,日医参与の弁護士ならびに医師賠償責任保険調査委員会委員長らも回答を行った.
 最後に,羽生田俊副会長が総括.「医療メディエーターの関与や医療事故調査委員会の問題について,今後,日医で検討する」と述べ,閉会となった.

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