|
第1186号(平成23年2月5日) |
合理的無知
現代社会に生きる私たちは,政治・経済分野に多くの知識と理解を求められます.ところが,自発的にわざわざ時間を割いて,これらの事柄を勉強しても,選挙で行使出来るのは一票にしかならず,中身よりも知名度の高い候補が当選します.
これでは,せっかく休みの時間を政治経済の勉強に使う意味がない,ミシュランのガイドブックでおいしいレストランを探すことに時間を使う方が合理的だと考えて,難しい勉強はやめて無知であることを選択します.これを政治経済学では“合理的無知”と言い,大衆が選択する行為だそうです.
大衆とは,専門知識の無い人達のことだと思いがちです.
しかし,スペインの哲学者オルテガは,専門家こそ最もやっかいな大衆だと言っています.なぜなら,自分たちは狭い専門知識しかないのに,専門以外の広大な領域についても,知者のように傲慢(ごうまん)に振る舞うからだと.
なるほど,テレビのワイドショーなどでは,専門家と称する人たちが官僚,政治家を叩き,医療者を叩く.それを見た視聴者は,拍手喝采して,彼らをこらしめ無駄を省けば,より良い医療,年金,介護が実現出来ると思い込み,現場の疲弊には無関心を決め込み,状況は悪化の一途をたどります.しかし大衆は,そんな事にはおかまいなしで,今日も新たな生(い)け贄(にえ)を叩き,つかの間の満足を得るのです.
(撥)
|