日医ニュース
日医ニュース目次 第1196号(平成23年7月5日)

子ども虐待防止フォーラム
ゼロ歳児からの子ども虐待防止を目指して初開催

子ども虐待防止フォーラム/ゼロ歳児からの子ども虐待防止を目指して初開催(写真) 子ども虐待防止フォーラム「ゼロ歳児からの子ども虐待防止を目指して」を,日医と,児童虐待の防止に取り組んでいるSBI子ども希望財団,静岡県医師会との共催により,六月十一日,静岡県浜松市内で開催した.
 本フォーラムは,依然として増加傾向にある児童虐待の問題を社会全体で取り組むべき問題として捉え,その防止に向けた活動を推進してもらうことを目的に,初めて実施したものである.
 冒頭あいさつした原中勝征会長(羽生田俊副会長代読)は,近年出産直後の虐待死が増加していることを憂慮し,その防止に全力で取り組む姿勢を表明.また,参加者に対しては,「本日のフォーラムを地域で虐待防止を考えるきっかけとして欲しい」と呼び掛けた.
 引き続き,特別講演を行った寺尾俊彦日本産婦人科医会長は,児童虐待防止法の改正経緯を説明したうえで,現状の問題点として,ゼロ歳児の虐待死が著しく増加していることを挙げ,このようなケースには,新たな防止対策を考える必要があると指摘.その具体策としては,(1)予期しない,あるいは望まない妊娠に悩む者への相談体制の充実(2)市町村保健センターの活動の強化(3)妊産婦へのメンタルヘルスケアの実施―等を挙げた.
 つづいて,今村定臣常任理事の司会の下にシンポジウムが行われた.
 光田信明大阪府立母子保健総合医療センター産科主任部長は,平成二十一・二十二年度に大阪府の未受診妊産婦を対象として行った調査結果を報告.調査によって,妊産婦の未受診問題と子どもの虐待の背景には類似性があることが明らかになったとし,問題の解決のためには,「胎児虐待とも言える未受診の妊産婦の情報を各関係機関が共有して,連携体制を構築していくことが必要になる」と述べた.
 鮫島浩二さめじまボンディングクリニック院長は,自身のクリニックで行っている特別養子縁組の斡旋(あっせん)事業の取り組みを紹介.新生児への虐待防止を防ぐためには,産婦人科の医師が妊娠中から深く関与し,福祉と手を結ぶことが重要だと指摘するとともに,各都道府県に特別養子縁組に取り組む拠点を作ることを提案した.
 奥山眞紀子国立成育医療研究センターこころの診療部長は,重篤な虐待の予防には,妊娠期の段階からの育児を考えた支援が必要になるとした上で,センターでの取り組みとして妊娠期のメンタルヘルスのスクリーニングの内容を説明.注意力・対人関係に問題がある母親に,育児困難が多く見られるとし,「今後も研究を継続して行い,その支援のあり方を考えていきたい」と述べた.
 西澤哲山梨県立大学人間福祉学部教授は,児童養護施設の現状について,自己調節障害や摂食障害など多様な問題を抱えている子ども達が多いにもかかわらず,その対応は少人数のケースワーカーに任されていることを問題視.今後は,(1)虐待の増加は社会現象であるという視点を持つ(2)不適切な養育を受けた子どもに適切な養育を提供することで,負の連鎖を断ち切る―ことが重要になるとするとともに,国に対しては,子ども福祉予算の増額を求めた.
 その後の「討議」では,シンポジストと参加者との間で活発な意見交換が行われ,フォーラムは終了となった.参加者は二百三十二名.
 なお,日医では,今後,同様の趣旨のフォーラムを今年度中に三回(東京,福岡,京都)開催する予定としている.

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