日医ニュース
日医ニュース目次 第1196号(平成23年7月5日)

JMAT(日本医師会災害医療チーム)活動報告(2)
活動を通じて再認識させられた地域医療,チーム医療の重要性

救護所において診療を行う
茂松副会長(上),西本理事(下)


 大阪府医師会は東日本大震災に対する医療救護等支援活動として,十四大都市医師会災害時相互支援協定に基づく検視活動として三名を三月十五〜十七日まで仙台市に(堺市医師会二名同行),また,日医要請によるJMATとして,二十六組百六十八名(チームアドバイザーを含む)を三月二十二日〜五月三十一日まで,岩手県上閉伊郡大槌町に派遣した.
 JMAT活動開始に際して郡市区等医師会や病院団体等に協力依頼するとともに,円滑な活動のため,茂松茂人副会長や西本泰久理事らが先遣隊として岩手県に赴き,石川育成岩手県医師会長を訪問.併せて岩手県災害対策本部「いわて災害医療支援ネットワーク」の指揮の下,指示を仰ぎ活動を開始した.
 活動を行った大槌町では,既に各地からの医療救護チームが活動していた.岩手県立大槌高校内保健室を用いた救護所では,AMDAが他県からのJMATの調整役となり避難者の医療確保に努めており,大阪のチームもその一員に加わった.各チームが持ち込んだ多種多量の医薬品の整理に薬剤師が大活躍した.また,普段処方されている薬ではないため,薬剤師から丁寧な服薬指導が行われた.
 一方,先遣隊は,避難所周辺に医療空白地があることを知り,大槌町大ヶ口地区へ巡回診療に出掛けた.ある患者は,水に濡れたお薬手帳を大事に広げて見せてくれたそうである.その姿に,この地で懸命に医療を支えておられる先生方のお気持ちが浮かび,頭の下がる思いであったと聞く.また,同地区の避難所の代表者が居宅患者の医療ニーズを把握していたので大変参考になったそうである.
 地域の医療・介護を支えるには,平時から住民間の絆が大切であると改めて考えさせられた.
 四月半ばには,避難所の縮小が決まり,JMATチーム間の調整が必要となった.そこで本会は,チームアドバイザーとして災害時医療の経験が豊富な冨岡正雄氏に協力を求め,現地に派遣した.冨岡氏は災害発生直後から岩手県災害対策本部に詰め,釜石・大槌地区の医療統括である寺田尚弘釜石医師会理事や,他のJMATとの連携に尽力されていた.調整の結果,大阪の活動拠点を寺野体育館(弓道場)内救護所とし,同所で自ら被災しても医療救護活動を続ける植田俊郎医師(釜石医師会副会長)を支援することとなった.
 JMAT活動が順調に推移する中,六月に新たに県立大槌病院仮診療所が完成して入院機能を回復することや,仮診療所三施設が再開されることが決まった.そこで,JMAT活動は地元医療機能の復旧へと軸足を移し,仮診療所が再開することを受診者に説明するとともに,救護所で管理しているカルテを地元医師へスムーズに引き継げるよう準備した.五月二十一・二十二日には本会の伯井俊明会長らが現地入りし,石川岩手県医師会長や小泉嘉明釜石医師会長と面談し,寺野体育館での府医JMATチームの活動を視察した.また,岩手県災害対策本部で当時,陣頭指揮した小林誠一郎岩手医科大学附属病院長と秋冨慎司医師,更には県立大槌病院の岩田千尋院長や黒田継久副院長とも面談し,これまでの活動報告を行った.伯井会長は,国民皆保険制度の下,地域で受けられる医療に格差が生じないよう,一致協力した地域住民のための医療復興をお願いした.
 今回の支援活動を通じて地域医療の重要さやチーム医療の大切さを再認識することが出来た.今後,大槌町の皆様が一日も早く健やかに暮らせることが出来るよう願っている.

(大阪府医師会理事・日医広報委員 阪本 栄)

JMATチームによるカルテの整理

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