日医ニュース
日医ニュース目次 第1198号(平成23年8月5日)

視点

母体保護法の改正について

 我が国の母子保健行政の懸案であった改正母体保護法が,六月十七日に成立した.改正法の内容も,日医の要望していたものが一〇〇%受け入れられたものであり,評価に値する.
 この件については,昨年十月の日医臨時代議員会で「国に母体保護法指定医の指定権が移ることは,生命を賭して断固阻止する」旨の見解を表明させて頂いていた所である.これに基づき,厚生労働省及び与野党国会議員と折衝し,その結果,議員立法として委員長提案の形で国会に提出して頂き成立をみたものである.
 改正法の内容は同法の附則を改正するもので,「指定医師を指定する医師会の特例」である.
 すなわち,(1)都道府県の区域を単位として設立された医師会であって,一般社団法人となるものについて,引き続き,人工妊娠中絶を行うことが出来る医師の指定を行わせること(2)厚労大臣は一般社団法人の都道府県医師会に対し,必要があれば報告を求め,または助言若しくは勧告をすることが出来ること―の二点である.
 この(2)については,都道府県医師会の中で,公益社団に移行するものと一般社団に移行するものがあることから,当局の監督権限の差異を補正するためのものであり,それ以上の意味は無い.
 厚労省は当初,他の医療関連法,特に精神保健福祉法に基づく精神保健指定医との整合性を図りたいとして,指定権者を厚労大臣にしてはどうかとの意向を持っていた.
 これに対し日医は,都道府県医師会は昭和二十三年の法施行以来,六十二年余の長期にわたり適切な運営を行ってきたという実績を強調するとともに,ピアレビューという形での同法の指定・運用がより良い地域医療を提供しうることを繰り返し説明した.
 これにより当局にも国会議員の方にも,日医の考えを理解して頂いたものと考えている.
 改正の過程において,都道府県医師会の先生方には特に各地域において国会議員の方々にさまざまな働き掛けを行って頂いたことは,私にとって大きな励ましになったことも明らかにしておきたい.文字通り,日医と都道府県医師会,そして更には郡市区医師会が一体となって勝ち取った指定権限の存続であった.
 紙面をお借りして,改正法に関わって頂いた全ての先生方に深甚の謝意を表したい.
 今後は交渉の過程で強調してきたピアレビューの優れた部分を更に肉付けしながら,国及び国民の負託に応えていく覚悟である.

(常任理事・今村定臣)

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