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第1199号(平成23年8月20日) |
第7回男女共同参画フォーラム
「育てる〜男女共同参画のための意識改革から実践へ」をテーマに開催
第七回男女共同参画フォーラムが七月三十日,約三百名の参加者を集めて,秋田市内のホテルで開催された.
フォーラムの開催に先立って,東日本大震災で亡くなられた方々に対して,黙祷が捧げられた後,斎藤征司秋田県医師会副会長が開会を宣言.引き続き,あいさつを行った原中勝征会長は,男女共同参画社会の実現が将来の日本を救うという信念の下に,引き続き努力していく意向を示した.今回のフォーラムを担当した秋田県医師会の小山田雍会長は,「地域医療は女性医師なくしては成り立たなくなっている」として,女性医師の役割の重要性を強調すると共に,本フォーラムで実践にまで踏み込んだ議論が行われることに期待感を示した.
基調講演
村木厚子内閣府政策統括官による基調講演「これからの『支え手』を考える―男女共同参画と子ども・子育て支援―」では,日本の現状について,「独身男女の約九割は結婚の意思を持ち,希望子ども数も男女共に二人以上あること」「子どもの成長に合わせて仕事を続けていきたいと考えている女性も多くいること」などを説明.その一方で,「若年者の非正規雇用の増加」「依然として難しい女性の就業継続」などによって,その希望がかなえられておらず,そのことが日本の少子化を加速させているとした.
そのうえで,村木統括官は,将来の支え手である子どもを増やしていくためには,「労働政策」と「子ども・子育て支援政策」の二つの取り組みを車の両輪として,出来る限り速やかに軌道に乗せていくことが必要だと指摘.国でも,ようやく子ども・子育てに関する新システムの検討を開始するなど,その支援に力を入れ始めているが,国の政策だけではうまくはいかないとして,職場での配慮等に対する協力を求めた.
また,医師の世界で,多くの女性が子育てをしながら働き続けることが出来るようになれば,社会全体に大きな影響を与えることが出来るとして,医師の世界での男女共同参画の早期の実現に強い期待感を示した.
提言・報告
続いて,保坂シゲリ常任理事が,東日本大震災の災害・復興時に男女共同参画の視点が欠けていたことから,男女共同参画委員会からの要望を基に,原中会長名で菅直人総理始め,都道府県知事に対して,男女共同参画の視点の強化を求める要望書を提出したことを報告.参加者に対しては,今後,地域における復興計画・防災計画を立てるに当たっては,男女共同参画の視点を最優先の課題の一つとするよう地域社会,行政等に働きかけるよう提言を行った.
報告では,まず,小笠原真澄男女共同参画委員会委員長が,平成二十二・二十三年度の男女共同参画委員会の具体的な取り組み等を概説.また,秋葉則子日本医師会女性医師バンク中央センター統括コーディネーターは,女性医師支援センターのさまざまな取り組みや女性医師バンクの運用状況を説明するとともに,七月二十九日から同支援センターのホームページを開設したことを紹介した.
シンポジウム
引き続き行われたシンポジウムでは,六人のシンポジストがそれぞれの立場で講演を行った.
蓮沼直子氏(秋田大医学部総合地域医療推進学講座)は,秋田大学で行われている男女共同参画やキャリア形成に関する講義,医学部六年生を対象とした出産に関わる法律・制度の勉強会の内容を紹介.また,その授業を実際に受けた大内祐香氏(秋田大医学部四年生)は,自分の将来像等を考える上でも非常に役に立ったとその感想を述べると共に,男子学生も一緒に授業を受けてもらうことの意義を強調した.
伏見悦子平鹿総合病院循環器内科科長は,多くの後輩女性医師と接してきた経験を基に,女性医師がいきいきと仕事をしていくために必要なこととして,「本人の継続する確固たる意思」「周囲の理解と支援」「長い目で物事を考える」等を挙げた.
加藤庸子藤田保健衛生大医学部脳神経外科教授は,モチベーションを絶やさず,ライフワークを全うするためには,専門医などの資格を取得することも有効な手段の一つだとする一方で,出産によって職場を離れることへの負い目や自信の無さから,諦めてしまう女性医師がいることは残念なことであるとし,その支援のためのシステムが必要だと指摘した.また,「諸外国と比較して,男女の役割分担が固定的である日本の現状を考えると,文化を変えることがなければ女性の参画の困難は改善されないだろう」と述べた.
檜垣祐子東京女子医科大附属女性生涯健康センター教授は,東京女子医大で行われている派遣型家事育児援助システムや離職者の再研修システムの内容を紹介.「病院,自治体,学会,医師会などで行われている各々の支援システムが連携することによって,社会資本としての医療の質とアクセス性が維持出来るのではないか」と述べた.
羽生田俊副会長は,日医の女性医師の参画に対する取り組みを説明した上で,意思決定部門・方針決定部門に参画するためには,(1)医師の意識改革(2)医療政策への興味(3)医師会活動,医政活動への参画(4)医師としての意見の発信―が必要だとした.
宣言の採択
フロアを交えた総合討論の後,榎真美子秋田県医師会女性医師委員会委員が,女性医師が仕事を継続し,能力を十分に発揮出来る社会的基盤の整備を推進していくために,立場の違いを越えて行動していくことを宣言した「日本医師会第七回男女共同参画フォーラム宣言(案)」を読み上げ,満場一致で採択された(下記参照).
その後,次期担当医師会の岩城勝英富山県医師会長のあいさつにつづいて,坂本哲也秋田県医師会副会長が閉会を宣言し,フォーラムは終了となった.
なお,次回のフォーラムは,平成二十四年七月二十八日に,富山国際会議場で開催される予定となっている.
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