日医ニュース
日医ニュース目次 第1203号(平成23年10月20日)

平成23年度Ai学術シンポジウム
「Aiの現状と未来」をテーマに現状や問題点について討議

平成23年度Ai学術シンポジウム/「Aiの現状と未来」をテーマに現状や問題点について討議(写真)

 平成二十三年度Ai学術シンポジウムが九月二十三日,日医会館大講堂で開催された.本シンポジウムは,日医,オートプシー・イメージング(Ai)学会,日本医学放射線学会,日本放射線技師会,放射線医学総合研究所,日本警察医会の六団体の共催で行われたもので,約三百名の参加者が集まった.
 冒頭のあいさつで原中勝征会長は,東日本大震災時の遺体検案における医師,警察医,歯科医等の奮闘に謝意を示した上で,「近代医学によって不治とされていた病気が治るようになったが,万が一患者が亡くなれば家族は原因を疑問に思う.医療にAiが入ることによって,病気の原因や治療の正しさを患者の家族に説明出来る」と述べ,技術の発展に期待を寄せた.
 続いて,藤田一枝厚生労働大臣政務官(宮本哲也医政局総務課医療安全推進室長代読)はあいさつで,「厚労省では『死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会』で審議を重ね,本年七月に報告書を取りまとめたところである」と報告.今後もAiの活用を推進するとした.
 第一部では,「問題提起」として四名の演者が登壇した.
 日本医学放射線学会の遠藤啓吾氏は,「大学病院における死亡時画像診断に関するアンケート調査結果」を紹介.ほぼ半数の大学病院で行われているが,専用装置は一四%に過ぎず,全ての死亡例への実施や,法的証拠への採用にはためらいがみられるとした.
 日本放射線技師会の北村善明氏は,Ai撮像時の課題として,「感染防止に対する準備」「撮像条件の標準化」「目的に応じた画像処理と読影」などを挙げ,「日医や日本医学放射線学会等と協力してガイドラインを作成したい」と述べた.
 日本警察医会の川口英敏氏は,監察医制度の導入されていない地方都市における異状死の死因究明において,死後画像診断は最善の策であると強調.警察庁が進めている新しい死因究明制度の設立には,人材育成や予算確保が課題であるとした.
 放射線医学総合研究所の海堂尊氏は,Ai提唱の経緯を説明した上で,死因究明におけるAiの有用性が認知されるようになったものの,費用問題が残っているとし,医療現場が疲弊しないためにも国が拠出するべきだと強調した.
 第二部では,「Ai実施施設からの報告」として,高野秀行氏(千葉県がんセンター)を座長に,札幌医大,東北大,群馬大,福井大,佐賀大,千葉大,阪大,神戸大,筑波メディカルセンター病院,Ai情報センターの計十施設が,それぞれの実施概要を説明した他,三宅智鹿児島県医師会副会長が指定発言を行った.
 第三部では,「総合討論〜Aiの現状と未来〜」として,今村聡常任理事を座長に,これまでの演者が一堂に会し,フロアからの質問に答えた.
 遺体袋については,安全担保のため使用している施設が多数を占めたが,専用CTを有しているため使用していない施設もあった.Aiのタイミングについては,証拠保全の観点から,カテーテルなどを抜く前が望ましいとの意見が多く出されたが,入院患者の場合はエンゼルケア後の撮影となることもあるとの回答があった.
 費用に関しては,公的保険での請求が難しいことから,病院が負担したり,家族に請求するなど,施設ごとに異なる対応がとられている現状が報告された.また,警察から依頼された場合も,県によって支払われる費用が異なる実態が指摘され,今村(聡)常任理事は,「日医は調査を経て,厚労省の検討会で,撮影については三万円,読影については二万円,消費税を含めて五万二千五百円が標準であると主張している」と説明した.
 最後に,高杉敬久常任理事が総括し,「刑事訴追にならないためにも,死因究明にAiを取り入れ,納得してもらいやすい医療を提供していきたい」と述べた.

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