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第1206号(平成23年12月5日) |
医療経済実態調査報告に対する日医の見解を公表
中川俊男副会長,鈴木邦彦常任理事は十一月九日に記者会見を行い,「第十八回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告―平成二十三年六月実施―」に対する日医の見解を明らかにした.
同副会長は,まず,今回の調査そのものについて,直近二事業年度(年間データ)の定点調査が追加されたことにより,これまでの六月単月・非定点調査の信頼性が否定されたとした上で,今後に関しては,調査にかかる予算を年間データによる定点調査に集中し,対象施設数の拡大を図るべきだと主張.また,実態調査はその客体数が少ないことから,対象施設数が多い「TKC医業経営指標」など,民間データを中医協の場で公式資料として活用することを提案した.
実態調査の分析結果に関しては,DPC対象病院,特定機能病院,入院収益ありの診療所では,前回診療報酬改定の成果が一定程度見られているが,入院収益なしの診療所では,あまり改善は見られず,特に青色申告(省略形式)の個人診療所では非常に厳しい実態になっていると説明.また,特定機能病院に関しては,「医業収益は大幅に伸びたが,多くが大学附属病院で,もともと損益構造が異なることもあり,依然として赤字となっている」と指摘し,診療報酬体系における特定機能病院のあり方の検討を行うことも課題になるとした.
給与費については,今回調査から直近二事業年度の年間データの調査が行われているにもかかわらず,信頼性に欠ける従来型の六月単月データを用いて,「今年六月の月収は,二年前と比べて開業医で九・九%伸びた」といった報道がなされたことは非常に残念だとした上で,(一)医療法人の一般診療所院長の給与は直近二事業年度の年間データではプラス〇・五%で横ばいとなっている,(二)病院勤務医師についても,おおむね待遇が改善されたと受け止められているが,医療法人の病院勤務医師の給与は,直近二事業年度の定点調査では一・〇%のマイナスになっていることを強調.民間病院の原資は,ほとんどが診療報酬であるので,この中で,給与費を削減した(せざるを得なかった)ということは深刻に受け止めるべきであるとした.
一方,鈴木常任理事は,これまでの医療経済実態調査の変遷を説明した上で,精神科病院の例〔六月単月調査(非定点)では黒字であるが,直近二事業年度の年間データ(定点)では赤字と逆転する〕等を挙げて,今回の調査から実施された直近二事業年度調査の有効性を強調.今回の調査結果については,「厚生労働省は,単月分の調査においては東日本大震災の影響が見られるものの,二事業年度のデータでは,全国と震災地区以外の状況がほぼ連動しており,改定の基礎データとして活用出来るとしているが,今回の調査だけではその影響は分からない.今後の改定の議論に当たっては,レセプトの受付件数やメディアス等の調査結果も見ながら,対応していきたい」とした. |