|
第1206号(平成23年12月5日) |
東日本大震災を振り返って.
釜石医師会 災害対策本部 本部長 寺田 尚弘
三月十一日の発災後,釜石医療圏(釜石市,大槌町)の災害医療をコントロールする役割を釜石医師会が担った.釜石医師会災害対策本部は釜石市災害対策本部の一部として濃厚な連携を取りながら,大槌町も含めた釜石医療圏全体をカバーした.
釜石医療圏では県立大槌病院の全壊,耐震基準の問題による県立釜石病院の大幅な縮小,慢性期病院の中核であった釜石のぞみ病院の入院制限など,急性期,慢性期医療の主軸が大きなダメージを受けた.また,約半数に当たる十カ所の診療所が全壊,同じく調剤薬局も半数以上が全壊し,地域医療の基盤は大きく揺らいだ.
釜石医師会災害対策本部は,釜石医師会の他,釜石保健所,釜石歯科医師会,釜石薬剤師会,釜石市などで構成され,それぞれがおのおのの組織を取りまとめることで本部機能が推進された.
本部の仕事は主に,全国から参集した医療チームを取りまとめる指揮系と,支援医療チームの活動をバックアップするための連携系の確立と運用であった.
指揮系に関しては,支援医療班の把握から始まり,連日の活動報告会の主催,支援医療チームの撤退調整と引き継ぎ管理などを行った.指揮系では運営の柱として,医療支援チームからの情報収集と本部方針の伝達を含めた十分な情報の提供を掲げた.また,毎日の活動報告会で医療支援班から出される救護活動の中で生じたさまざまな問題点の迅速な解決に力を入れた.
連携系に関しては,主目的を医療支援チームのバックアップに置き,被災を免れた医療機関,介護関係機関,行政,保健所などで連携を構築した.圏外との連携,県医師会や内陸基幹病院,岩手県災害医療ネットワークとの連携も固めた.この連携を最大限活用して医療班が最前線の現場で直面した問題点を解決することが出来た.
医療支援チームの活動は,心のケアチームを除き,六月十九日で終了した.
現在,被災者の医療が仮設住宅での心身の健康管理に移ってきていることに異論はない.外からは大きなトラブルもなく,経過してきているとも見える.
しかしながら,仮設住宅,在宅を問わず,訪問診療の申込件数が徐々に増加してきていることなどを考えると,経済的基盤の喪失,介護環境の変化などから家庭介護力が低下してきていることは明らかである.今後の高齢者や障害者のADL(日常生活動作)の変化に注意が必要である.
今回の震災対応の中で当本部の至らぬ点も多く,多くの支援チームに貴重な助言を数多く頂いた.今後とも皆様方からのご指導・ご支援をお願い申し上げる.
|