日医ニュース
日医ニュース目次 第1215号(平成24年4月20日)

第126回日本医師会定例代議員会
新会長に横倉義武氏を選出

 第126回日本医師会定例代議員会が4月1,2の両日,日医会館大講堂で開催された.1日には,役員選挙が行われ,新会長に横倉義武氏(前日医副会長)を選出した.

役員選挙

第126回日本医師会定例代議員会/新会長に横倉義武氏を選出(写真) 四月一日午前九時三十分,滝澤秀次郎事務局長の司会の下,加藤哲夫氏(島根県)を仮議長に選出し,加藤仮議長が開会宣言を行った.事務局による出席の受付によって,定数三百五十七人のうち三百五十七人全員の出席を確認.議事録署名人には,池田琢哉(鹿児島県),嘉数研二(宮城県)の両氏が指名され,選挙管理委員会(松田孝一委員長:福岡県)が紹介された.
 選挙管理委員会は,第百二十五回臨時代議員会における定款施行細則の一部改正に基づき初めて設置された.同委員の中から,選挙立会人に星野寿男(茨城県),小西眞(滋賀県),園田勝男(鹿児島県)の三氏,開票管理人に塩野恒夫(北海道),南里泰弘(富山県),今川俊一郎(愛媛県)の三氏が指名されており,まず代議員会議長・副議長選挙に入った.
 議長には,三名が立候補していたため,投票による選挙が行われ,投票総数三百五十七票(無効票三,有効票三百五十四)のうち,加藤寿彦氏(愛知県)が百五十二票,渡部透氏(新潟県)が百二十八票,石川育成氏(岩手県)が七十四票を獲得し,加藤氏が議長に当選.副議長は,立候補者が久野梧郎氏(愛媛県)一人であったため,同氏が無投票で副議長に当選した.
 続いて,議事運営委員会が開かれた後,松田選挙管理委員長より,「有効投票数の二分の一以上の得票を得た者がいない場合は上位二名で再度投票を行うこと(会長選挙のみ)」「白票は無効票であることから従来のように無効票と白票を分けて報告しないこと」など,投票に際しての取り扱いの変更点について説明がなされた.
 引き続き,会長選挙(定数一人に対して三名が立候補)に入り,投票総数三百五十七票(無効票一票,有効票三百五十六票)のうち,横倉義武氏(福岡県)が百五十四票,原中勝征氏(茨城県)が百三十七票,森洋一氏(京都府)が六十五票を獲得.有効投票数の二分の一以上に達した候補者がいなかったことから,上位の二名による決選投票が行われ,投票総数三百五十七票(無効票一票,有効票三百五十六票)のうち,横倉氏が百九十二票,原中氏が百六十四票を獲得し,横倉氏が初当選を果たした.
 午後からは,副会長,理事,常任理事,監事及び裁定委員選挙が予定されていたが,理事,裁定委員は定数内のため,また,監事に関しては一名が立候補を取り下げたため,立候補者全員の当選が確定.副会長,常任理事のみ投票となった.
 副会長選挙(定数三人に対して四人が立候補)は投票総数千七十一票〔代議員三百五十七人,無効票百四十票,有効票九百三十一票〕のうち,今村聡氏(東京都)が二百八十六票,中川俊男氏(北海道)が二百七十六票,羽生田俊氏(群馬県)が二百二十票,松原謙二氏(大阪府)が百四十九票で,上位三人の当選が確定した.
 また,常任理事選挙(定数十人に対して十三人が立候補)は,投票総数三千五百七十票〔代議員三百五十七人,無効票四百七十六票,有効票三千九十四票〕のうち,石井正三氏(福島県)が二百九十五票,石川広己氏(千葉県)が二百八十四票,藤川謙二氏(佐賀県)が二百五十六票,葉梨之紀氏(神奈川県)が二百五十三票,三上裕司氏(大阪府)が二百五十一票,今村定臣氏(長崎県)が二百四十八票,鈴木邦彦氏(茨城県)が二百四十七票,小森貴氏(石川県)が二百四十四票,道永麻里氏(東京都)が二百四十二票,高杉敬久氏(広島県)が二百四十一票,保坂シゲリ氏(神奈川県)が二百一票,石渡勇氏(茨城県)が百七十五票,大野和美氏(愛知県)が百五十七票で,上位十人の当選が確定した.
 選挙後,裁定委員を除く当選者全員が登壇.横倉義武会長が当選者を代表してあいさつに立ち,謝辞とともに,「選出されたこのオールジャパンの体制で,任期中,日医が強くなるよう取り組んでいきたい」と述べ,第一日目の日程を終了した.

横倉執行部発足(写真)

議案審議

 第二日目,午前九時三十分,加藤寿彦議長が開会を宣言.横倉会長が所信別記事参照を表明した.久史麿日本医学会長のあいさつの後,昨年度中に物故された会員の霊に全員で黙禱を捧げた.
 続いて,羽生田俊副会長が会務報告を行い,議事に入った.
 まず,第一号議案「平成二十三年度日本医師会会費減免申請の件」が上程され,今村聡副会長の提案理由説明の後,可決.次いで,第二号議案「平成二十四年度日本医師会事業計画の件」,第三号議案「平成二十四年度日本医師会予算の件」,第四号議案「日本医師会会費賦課徴収の件」が一括上程され,羽生田・今村両副会長がそれぞれ提案理由を説明し,その審議は財務委員会に付託別記事参照された.第五号議案「日本医師会年金の特定保険業認可申請の件」については,今村副会長が,「平成二十三年に施行された再改正保険業法に基づき厚生労働省に認可申請するもので,本年十月の取得を目指している」と説明し,理解を求め,可決された.
 更に,今村副会長から,第六号議案「日本医師会役員功労金支給の件」(該当者二名)が追加上程され,賛成多数で可決.その後,代表質問と個人質問に移った.

代表質問

 (一)医療にかかわる控除対象外消費税問題,現状は国民を欺いている!!
 小尾重厚代議員(九州ブロック)の医療機関等の消費税負担について,国民に分かりやすい制度にすべきとの指摘に対しては,今村副会長が,非課税のまま診療報酬で補填(ほてん)する現行方式では問題があると考えており,これまでもその改善を求めてきたと説明.
 また,社会保障・税一体改革大綱に関しては,「医療機関における高額投資に係る消費税」について,金額は別として,「高額投資に係る消費税については別手当とする」「消費税負担について検証の場を設置する」ことが明記されたとし,「これらは日医が従来から要望してきたことであり,一定の評価をしている」と述べた.
 その上で,今後については,「中医協の下に設置される検証の場において,現行税率時における診療報酬への消費税分補填状況の実態や補填方式が適切であったか,そして,税率八%引き上げ時において,診療報酬にどの程度補填されるのか等,きちんと検討し,検証してもらいたい」と述べるとともに,国民から見ても分かりやすい課税方式となるよう,引き続き,ゼロ税率を始めとする課税制度で,かつ患者負担を増やさない制度とすることを求めていきたいとした.
 (二)医療の将来像と日本医師会について
 塩見俊次代議員(近畿ブロック)の(1)日本の医療の将来像への対処の仕方及び(2)思い切った日医改革(理事の四年ないしはそれ以上の一定の任期期間の保証)に対する日医の見解を問う質問に対しては,横倉会長が回答した.
 まず,(1)の質問に関しては,日本の医療は営利目的であってはならず,これまでも医療ツーリズム,株式会社の参入,医療分野の市場開放と営利産業化を求めるTPP等に対し,国民の医療を守る立場から,断固反対の姿勢をとってきたことを説明.「日本の国民皆保険は世界に誇る制度であり,本制度がどのような意味を持っているのか国民に対し引き続き訴えていくとともに,本制度を将来にわたって維持していくよう,日医は市場原理主義的な考え方とは徹底して闘い続ける」と述べた.
 (2)については,理事の任期について,新公益法人制度では「選任後二年以内に終了する最終事業年度に係る定時社員総会終結の時まで」と規定し,それ以上延長することが固く禁じられていると説明した上で,強い執行部を作り上げていくためには,前執行部からのきちんとした引き継ぎや,若い世代の会員に,早くから会内委員会等に参加してもらい,都道府県・郡市区医師会を理解してもらえるような方策も必要だと指摘.今後は,これらを踏まえた会務を行っていきたいとした.
 (三)日本医師会が国民の支持を得るために
 橋本省代議員(東北ブロック)の日医が国民の支持を得るためにという観点からの質問に対しては,横倉会長が回答した.
 対外広報については,国民に信頼される医師会を作り上げていくには,地道な対外広報や国民に向けたさまざまなアプローチが考えられるとした上で,福岡県医会長の時に「メディペチャ(医療モニター制度)」を開催し,参加者が医療の良き理解者となった経緯を紹介.今後は,医師会や医療への理解を深める活動を進めていきたいとの考えを示した他,執行部と共に広報戦略を検討する場を設置する意向も示し,医師会全体で動く対外広報を推進していくとした.
 勤務医に日医の運営に参加してもらう方法については,情報発信の一層の強化や,医学部学生に対して医師会に関する情報を発信するフリーペーパーを創刊し,配布する予定であることを説明し,「若い世代に医師会を理解してもらうアプローチが必要だ」と述べた.
 また,前年度,勤務医委員会から“理事に勤務医枠の創設を”という要望があったことに関しては,定款改定が必要なため,まずは,オブザーバーとして理事会に出席してもらう仕組み等について前向きに検討を進めていきたいとした.
 (四)先進医療について
 大中正光代議員(中部ブロック)の先進医療についての質問に対しては,中川俊男副会長が,まず,「安全で有効性の確認された普遍的な医療は,公的医療保険に収載し,公的給付を行っていくべき」という日医の基本的なスタンスを説明.その上で,日本の医療水準は高く,日々,高度化しており,日本が誇る公的医療保険制度も遅れることなく進化していかなければならないとした.
 また,先進技術が保険収載されて広く医療提供されるようになるまで時間がかかり過ぎると言われてきたことに関しては,日医は,評価療養の仕組みの機動性を高め,スピード感を持たせることにより,多くの問題を解決出来ると主張してきたと指摘.近年,PMDA(医薬品医療機器総合機構)にも人材や財源が投入され,審査期間が格段に短縮され,実用までの期間も短縮もされていることから,更なる短縮を求めていきたいとした.
 一方,新たな先端技術に関して,薬にしても医療技術にしても,科学的な検証を十分行って有効性・安全性を確認する努力をせずに,混合診療を全面解禁し,先進医療の導入,ドラック・ラグの解消を図ろうとする考え方があることに対しては断固反対していく姿勢を示した.
 (五)医道審議会で医業停止処分を受けた医師に対する再教育について
 吉本正博代議員(中国四国ブロック)の,日医の自浄作用として会内に再教育システムの構築を求める要望には,羽生田副会長が回答.行政処分を受けた医師に対する再教育としては,団体研修は国立保健医療科学院で,個別研修は臨床研修指定病院や出身大学等から選任された助言指導者によって,それぞれ平成十九年より実施されていると説明.また,医療事故を起こした医師等の再教育システムに関しては,現在,厚労省「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」において進められている議論とも関連し,刑事裁判等につながらない形で行うべきと主張しているとした.
 医療事故を繰り返して起こす,いわゆるリピーターと呼ばれる医師への再教育については,日医で毎年実施している「医療事故防止研修会」への参加を促してもらうことを各都道府県医師会に依頼しているが,地域の問題や実情を把握している郡市区医師会,都道府県医師会の役割が重要との認識を示した.
 また,継続的な教育とピアレビューによって,問題が起きる前に未然に防止することの意義を強調.厚労省に任せるだけでなく,職能団体である日医が自ら,積極的かつ地道に取り組みを積み重ねていくことによって,医療事故調あるいは医師法二十一条改正の議論も説得力を増すとして,理解と協力を求めた.
 (六)今回の診療報酬改定に関する日医の見解を
 近藤太郎代議員(東京ブロック)の,今回の診療報酬改定に関する日医の見解を求める質問に対し,中川副会長は,まず,前回の四千八百億円のプラス改定に引き続き,今回の改定においても医科本体四千七百億円のプラス改定となったことについて,各地域の医師会の支援が日医の大きな原動力になったとして,深く感謝の意を表した.
 その上で,今回の改定の内容に関しては,日医として診療所や中小病院への手当を強く要望したが,前回改定で明確なエビデンスなく引き下げられた再診料を回復出来なかったこと等,十分ではなかったことを陳謝.引き続き,再診料を始めとする基本診療料の引き上げを最重要課題として取り組むとした.
 今回改定の財源が在宅医療に手厚く配分され,地域医療連携,医療と介護の連携が進められたことについては,地域医師会が中心となって連携支援を行うことが重要であり,各地域の先進的な取り組み事例を収集し,モデルケースとして提示する等,日医として積極的に会員を支援していく考えを示した.
 更に,医学教育,研修医の養成については,昨年四月「医師養成についての日本医師会の提案─医学部教育と臨床研修制度の見直し─(第二版)」を公表し,厚労省や文部科学省の審議会等で説明し,理解を求めているとし,更に,各方面からの意見も踏まえて,今後もその方向性,あり方を示していきたいとした.
 (七)いわゆる「総合診療医」問題について
 畑俊一代議員(北海道ブロック)のいわゆる「総合診療医」問題についての質問に対しては,羽生田副会長が回答した.
 「名称の区別や一本化が必要か」との問いに対して,同副会長は,平成二十三年度に第VI次日医生涯教育推進委員会の答申を受け,執行部において協議を続け,都道府県医師会に意見を求めた上で「総合医とかかりつけ医」と「総合診療医」の語句を定義したと説明.
 「総合医とかかりつけ医」とは,「日常行う診療において,自己の専門性に基づき,患者にとって最良の解決策を提供する『医療的機能』以外に,就業形態や診療科を問わず,『社会的機能』すなわち『かかりつけ医機能』を有する医師」とし,「家庭医」「GP」については,似たニュアンスであるが人頭割のイメージが払拭出来ていないとした.
 一方,「総合診療医」は,広い領域にわたって行う診療について,「医療的機能」の面のみから評価された医師であり,「総合診療医」の専門医としての認定や,養成カリキュラムの作成は,関係学会において検討されると考えるとした.
 標榜診療科名としての「総合科」の新設については,フリーアクセスの阻害や人頭払いなど,次の医療費抑制への布石につながることから反対との立場を示し,一方で学会が「医療的機能」の面から専門医制を確立した上で「総合診療科」を標榜することには,今後引き続き議論が必要との考えを示した.
 「日医執行部と各団体との連携」に関する質問には,厚労省「専門医の在り方に関する検討会」の審議の動向を注視しながら,主導的役割を果たしつつ,日本医学会,日本専門医制評価・認定機構等と協議し,新執行部でも引き続き議論を行っていくとした.
 (八)「財政なくして医療なし.控除対象外消費税早期撤廃のため,医療受診消費税ゼロ税率による,仕入税額全額控除の場合の国の財源について」
 有坂實代議員(関東甲信越ブロック)の控除対象外消費税に関する質問には,今村副会長が回答.
 同副会長は,控除対象外消費税問題の解決策として,「ゼロ税率が最もシンプルで患者負担も生じない理想的な形である」と述べた上で,「現在,控除対象外消費税は,診療報酬の中に補填するという形で行われているため,補填のための財源が必要との考え方になっているが,今後,軽減税率やゼロ税率などの課税の仕組みになった場合には,国の税収が減る形になる」として,輸出免税などの類似例を示した.
 更に,「社会保障・税一体改革」を取り上げ,消費税率が八%に上がった場合は,その増加分を社会保障費に使うということになっているが,今後,消費税が一〇%を超えて医療に課税の仕組みが導入された場合には,どの程度,国の税収が減るか改めて検証が必要とした.
 その上で,同副会長は,税収の補填は,国が考えることであり,改めて財源の手当てを考える必要はないが,日医は医療について正当に評価されるように要望を続けていくとした.

個人質問

 (一)地域特性にあった地域医療の構築の具体的方策について
 尾形直三郎代議員(栃木県)の午前中の会長あいさつに関する質問には横倉会長が回答.地域特性に応じた地域医療の構築に向けた具体的方策に関しては,地域の医師会が医療資源も含め最も理解しているので,各地域で取り組んでいただきたいとした上で,昨年来の東北地方の震災復興に対し,当初は地域医療再生基金の使い勝手が非常に悪く,この点に関し,地域医師会の使い勝手が良くなるよう日医から強力に要望を行い,少しずつ形を変えてもらったことを明らかにした.加えて,取り残された地域の財源手当が必要との指摘に関しては,「十分理解出来るので,これからも主張を行っていきたい」とした上で,都道府県ごとに実情を教えてもらいたいとした.
 また,「代議員にも参画いただいた地域医療対策委員会からも昨年度提言をいただいたが,今回,四疾病五事業に精神疾患を入れて五疾病五事業となったことから,その医療提供体制をどのように構築するかという点についても,地域の医師会が中心となって構築して欲しい」と要望.更に,三月三十日に厚労省より示された次期医療計画策定の指針にも触れ,「日医の主張により,『各都道府県が地域の実情に応じて構築するものであること』との文言が明記されたので,地域の実情に応じて必要性の高いものから優先的に取り組んでいただきたい」と述べ,理解と協力を求めた.
 (二)日医に綱領の策定について要望
 福田俊郎代議員(福岡県)の日医に綱領の策定についての要望に対しては,横倉会長が回答した.
 同会長は,日医の活動目的は,定款で「医道の高揚,医学及び医術の発達並びに公衆衛生の向上を図り,もって社会福祉を増進すること」と規定されていることを示し,その目的達成のためにさまざまな事業や活動を行っていると説明.
 更に,日医による国民のための活動が,多くの国民の支持や理解を得なければならないということは,全ての代議員共通の思いであるとし,「日医の下に全ての医師が結集するためにも,明確な目標を掲げた行動規範となる綱領の作成が必要」とした.加えて,「その内容は会員全てが納得出来るような普遍的な内容となることが理想」と述べ,「日本医師会綱領」(仮称)策定のためにプロジェクト委員会を早急に設置する考えを示した.
 (三)勤務医を医師会に確実に加入させるための方策について〜医療制度・医療倫理に関する日本医師会認定医であることを各種学会専門医認定試験受験資格にする案〜
 (四)全医師が参加する日本医師会を目指せ
 福田健代議員(栃木県)の勤務医を医師会に確実に加入させるための方策についての提案に対しては,三上裕司常任理事が回答した.
 同常任理事は,まず,日医認定医であることを学会専門医資格取得更新の際の要件にすることは,日医生涯教育制度発足以来,四半世紀にわたり,引き続き議論を行っている課題であるとの認識を示した.また,日本専門医認定制機構(当時)の「専門医制度整備指針(第二版)」でも,「専門医資格更新については,今後,認定機構あるいは医師会の生涯教育講座聴講も義務付けられる予定あり」と示されていることを紹介.更に,厚労省の「専門医のあり方に関する検討会」においても,「専門医の更新に当たっては日医生涯教育制度をそのベースの要件とすることについて議論するよう,日医として強く主張している」と述べ,同検討会の審議の動向を注視しながら,日本医学会や日本専門医制評価・認定機構等と協議していきたいとした.
 また,日医が平成二十三年四月に「医師養成についての日医の提案(第二版)」を取りまとめたことにも言及し,「この提言を基に,医学部教育,臨床研修,専門医制度,生涯教育という一貫した医師養成についても,引き続き会内において議論を深めていき,勤務医の入会促進にもつなげていきたい」と述べた.
 続いて,清水信義代議員(岡山県)からの,勤務医の入会の最も大きな障害は入会の三層構造であるとの指摘に,同常任理事は,まず,日医は医師会活動の基本は地域医療にあると考えており,従って,郡市区医師会に加入せずに都道府県医師会や日医に加入する仕組みが望ましいとは考えていないとした.
 その上で,都道府県医師会を入会の基本単位とする提言については,異動手続きの簡素化,あるいは勤務医の入会促進に関する貴重な提言と認識しているが,医師会活動の基本である郡市区医師会を任意加入にすることにもつながりかねず,各医師会の定款における会員資格について規定した条文の改正も必要となるので,慎重に議論を進めていくべきとの考えを示した.
 更に,勤務医の医師会参加を妨げる要因として入会手続きの煩雑さが指摘されていることは,日医も強く認識しているとして,今後,更なる検討を進めていきたいとした.
 (五)診療所の再診料が据え置かれたことへの検証について
 高井康之代議員(大阪府)の,診療所の再診料が据え置かれたことへの検証についての質問には,鈴木邦彦常任理事が回答した.
 同常任理事は,前回改定で,外来財源四百億円という制約の中,エビデンスなく下げられた診療所の再診料について,今回の中医協において,「まずはそれを元に戻してから今後の議論をすべき」と診療側が強く求めたにもかかわらず,回復出来なかったことは誠に遺憾だとした.その上で,基本診療料のあり方については,新年度の早い時期から議論することとなり,早速,中医協において今後の進め方を審議したと説明.更に,四月以降,基本問題小委員会で,コスト調査・分析の意義付けや診療報酬の体系的見直しを検討していく提案がなされているとして理解を求めた.
 また,同常任理事は,基本診療料は医師の魂であるとして,国民のための地域医療提供体制を守り抜く前哨戦が基本診療料の議論であると重く受け止め,今後とも全力で取り組んでいく決意を述べた.
 中医協の日医推薦委員は全て日医執行部から出すべきとの意見に対しては,社会保険医療協議会法に照らしても,全ての医師を代表する日医の役員を中医協委員にすることは当然との考えを示した.
 (六)組織強化と広報戦略について
 これからの組織強化と広報活動のあり方に関する日医の考えを問う野津原崇代議員(東京都)からの質問には,石川広己常任理事が回答した.
 同常任理事は,医師会の力を強くするためには組織力を高める必要があり,広報委員会を始め,各種委員会において議論を行ってきたことを説明.その上で,今期については,医学生向けのフリーペーパーの配布や,ホームページの充実等に一層取り組んでいく考えを示した.
 また,国民向けの広報に関しては,広報委員会の下に新たに「広報戦略・戦術会議(仮称)」を設置する意向を表明.日医の政策を国民,会員に広範に理解してもらうための新たな広報戦略の立案を執行部と共に早急に検討していくとした.
 更に,これまでに行ってきた「テレビ番組(医療の現場)」の更なる内容の強化や新たな「テレビCM」の制作並びに放映,新聞広告の充実,病院・診療所で掲示する患者向け啓発ポスターの作成にも取り組んでいくとして,理解を求めた.
 (七)指導・監査の立会人の身分保障について
 重要な役割を担う指導・監査の立会人の身分保障の改善を求める道明道弘代議員(岡山県)の要望に対して,鈴木常任理事は,立会人を仮に公務員として扱い,身分保障をしようとすれば,公務員等の組織法,身分法のような法律を改正しなければならず,現実的には難しいと説明.また,中立的な立場での立会であるため,国から日当等を出してもらうことになると,中立性が損なわれるとの指摘もあり,総務省,人事院,都道府県にまで拡大する非常に大きな問題でもあることから,慎重に対応を検討していきたいとした.
 更に,同常任理事は,当面の対応ついて,「立会に関しては依頼を受けた都道府県医師会の業務の一環と考えられることから,日当等の諸費用は都道府県医師会の負担でお願いしたい」と述べ,理解を求めた.
 (八)日本医師会認定医療秘書教育のあり方と医師事務作業補助体制加算について
 田中孝代議員(静岡県)からの,医療秘書の養成には,道徳を中心とした全人的な教育が求められるとの指摘に対して,藤川謙二常任理事は,前期に「日本医師会認定医療秘書のあり方に関する検討委員会」をプロジェクト委員会として設置して,平成十年に改訂された日本医師会認定医療秘書要綱(カリキュラム等)の見直しや教科書の改訂について検討を行った結果,「接遇」に関しての教育が重要との結論に至り,「コミュニケーション論」という科目を新設することになったと説明.今後は,演習を含んだ内容の授業を行い,接遇教育を始めとした全人的な教育の充実を図っていきたいとした.
 また,医師事務作業補助体制加算を診療所でも算定出来るようにして欲しいとの要望に対しては,日医総研が二〇〇九年に実施した調査結果(勤務医時代に比べて,開業後の方が書類作成の負担が増えた医師が四割近くに達していること)を示しながら,診療所を開業している医師の事務負担が大きくなっていることは明らかだと指摘.病院と診療所のIT化や業務実態を改めて調査した上で,診療所医師の事務負担軽減策としても評価されるよう引き続き要望していく考えを示した.
 (九)日医に「保険診療検討委員会」の創設を
 佐藤和宏代議員(宮城県)は,日医に「保険診療検討委員会」の創設を要望.これに対し,今村定臣常任理事が,「保険診療検討委員会」の創設については,「既存の委員会の下に,ブロックからの推薦委員で構成する部会の形にするのがよいのか,新たに別の委員会を設置するのがよいのかなど,日医内の委員会構成全体の中で,新執行部として検討することを約束する」と答弁.
 更に,保険の指導・監査の問題は,わが国の医療保険制度の下では必ず出てくる問題で,基本的には,医師会自体のプロフェッショナル・オートノミーの形で解決すべきであり,その意味で,医学教育のあり方,医師会主導の講習を含めて,引き続きしっかり取り組んでいかなければならない重要な課題であるとの認識を示した.
 (十)看護職員不足と専任教員養成のあり方について
 田村公之代議員(和歌山県)からの,看護職員不足と専任教員養成のあり方についての質問には,葉梨之紀常任理事が回答.地域の現場では看護職員の数が足りず,病棟の閉鎖や有床診療所の無床化などが起こっていると指摘し,日医としては,まず看護職員の数の充足を図るべきと主張しているとした.
 また,「看護師届出票」制度に関しては,平成十七年度の厚労省「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」でも賛否両論あり,最終的な報告書では,(1)法を改正し,医師並びの届出義務を課すことには意見が一致せず,将来の課題として,免許の更新制を検討し,その行方を見定めるべきである(2)看護師等の人材確保の促進に関する法律において,人材確保の観点からの届出制などの措置を講じることについて積極的に検討すべきである─とされ,その後厚労省での検討は行われていないと説明.
 潜在看護職員の把握と現場への復帰は重要だが,そこに免許保持者の届出義務化をリンクさせることは,実効性や問題点等,十分に検討する必要があるとの考えを示した.
 また,看護教員養成講習会については,日医は従来から通信制や受講期間の短縮を求めてきたが,ようやくe─ラーニングの導入が決まり,厚労省の検討会が四月中に取りまとめる予定の報告書を踏まえ,平成二十五年度からの開始に向け,都道府県への説明やコンテンツの作成に入っていくとの見通しを紹介.その上で,集合教育は短期間とし,受講者本人及び養成所への負担が少ない,現実的な制度とする他,補助金の増額や母性・小児看護学実習の柔軟な対応など,三月八日に提出した厚労大臣への要望書の実現に向け,粘り強く対応していきたいとした.
 (十一)全国的な医師組織と日医の関わりについて
 二宮保典代議員(岐阜県)からの,全国的な医師組織と日医との関わりを問う質問には高杉敬久常任理事が回答.
 同常任理事は,「日本警察医会」と「若年者心疾患・生活習慣病対策協議会」を取り上げ,まず,日本警察医会については,平成二十一年以降,定期的に打ち合わせ会を実施し,昨年七月には日医会長が日本警察医会の特別顧問に就任するなど連携強化を図っていると強調.東日本大震災における検案業務に際しては,警察庁からの要請に基づき,日本警察医会に対しても検案担当医の派遣を依頼したことを報告した上で,大災害への備えとして,検案体制の全国的な整備が喫緊の課題であるとの認識を示し,「連携を更に強化していく」と述べた.
 「若年者心疾患・生活習慣病対策協議会」については,同協議会の副会長が日医の学校保健委員会の委員であり,一月に開催された同協議会の総会に,日医から会長と常任理事が出席したことを説明.有意義な関係を構築してきているとし,「日医と外部の組織との連携については,それぞれの団体の活動内容,性格,連携の形態等に応じて,これからも適切に対応していきたい」との姿勢を示した.
 (十二)今回の診療報酬改定の結果について
 横須賀巖代議員(佐賀県)からの,今回の診療報酬改定について,地方の中小病院や有床診療所の底上げにつながっていないとの指摘には,鈴木常任理事が回答.
 同常任理事は,前回改定で明確なエビデンスなく引き下げられた診療所の再診料について,回復を強く求めたにもかかわらず復活出来なかったことに改めて遺憾の意を表し,「今後,基本診療料の見直しを最重要課題として全力で取り組む」と強調した.
 一方,入院基本料については,中小病院では,入院日から十四日間算定出来る初期加算の新設,重症児(者)受入連携加算や栄養サポートチーム加算等の適用拡大がなされ,有床診療所では,看取り機能や緩和ケア受入機能強化のための加算の新設,一般病床と療養病床の患者像に応じた相互算定など,さまざまな評価が行われたことを説明した.
 また,中医協における審議の中で,日医総研の研究結果がエビデンスとして多く取り上げられ,診療所,中小病院の実情が改定につながったことを報告.超高齢化社会においては,入院機能を持つ中小病院や有床診療所と連携した在宅医療のあり方が重要だとし,医師会がその連携の要となることに期待を寄せるとともに,医療費,診療報酬の安定的な財源の確保に尽力していくと述べた.

 午後三時三十五分,審議を再開し,笠原吉孝財務委員会委員長(滋賀県)が,付託された議案は同委員会で承認された旨報告.議長が第二,第三,第四号議案の採択を行い,賛成多数で可決した.

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