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第1221号(平成24年7月20日) |
平成24年度Ai学術シンポジウム
「児童虐待の見逃し防止に果たすAiの役割」をテーマに討議
平成二十四年度Ai学術シンポジウムが七月一日,日医会館大講堂で開催された.本シンポジウムは,日医,日本医学放射線学会,日本小児科学会,日本救急医学会,オートプシー・イメージング(Ai)学会,日本警察医会,日本診療放射線技師会の七団体の共催で行われたもので,約百七十四名の参加者が集まった.
冒頭のあいさつで横倉義武会長(羽生田俊副会長代読)は,「死亡時画像診断(Ai=Autopsy Imaging)の有用性については,医学的にも社会的にも有効な知見が集積されつつあり活用が期待されている.その中でも,昨今重要な社会問題の一つである児童虐待に関しては,Aiの活用により虐待の事実を明らかにすることで虐待行為を未然に防ぎ,虐待のない社会を作るための一つの方法として重要な役割を果たすものと考える」と,Aiへの期待を述べた.引き続き,藤田一枝厚生労働大臣政務官(宮本哲也厚労省医政局総務課医療安全推進室長代読)からもあいさつが述べられた.
児童虐待の発見に果たすAiの役割
第一部では,高杉敬久常任理事が進行を務め,六名の演者が講演を行った.
郷原信郎氏(関西大学特任教授・弁護士・総務省顧問,同省コンプライアンス室長)は司法の立場から,「児童虐待死」を犯罪として立件することの困難性を示し,Aiが死因究明にもたらす効果は「死因究明の客観化」であり,児童虐待問題と刑事司法との不適合の緩和に役立つとした.
相田典子氏(神奈川県立こども医療センター)は,児童虐待に関連する画像の読影には小児解剖・疾患,虐待診断の知識が必須であるが,現在,読影が出来る医師はごく少数であるとして,Ai読影医育成の重要性を示した.
小熊栄二氏(埼玉県立小児医療センター)は,虐待の画像診断を行うことで,行政介入の根拠となる重要証拠の確保や育児支援の契機になるとした.更に「小児の死亡全例にAiを行えば,体制が整っていない医療施設で見逃される虐待例の発見や,虐待の抑制につながるため,大きな意味がある」と述べた.
金子一成氏(関西医科大学小児科)は,同医科大学病院で行われている児童虐待対策として,「児童虐待等対策委員会」の活動を示し,そこで使われている「児童虐待チェックシート」を紹介.医師個人ではなく施設全体で虐待事例に対応することの重要性を述べた.
宮本医療安全推進室長は,現在行われている厚労省での虐待防止への活動を紹介.また,Aiの普及に関しては,平成二十四年度予算に,「死亡時画像診断システム整備事業」「死亡時画像読影技術等向上研修」などを盛り込み,その推進に取り組んでいることを示した.
山本正二氏(Ai学会)は,Ai情報センターで行われている活動を紹介し,「今後は,虐待防止につなげるためにも,小児死亡時のAi全例実施と情報の集約化・管理が必要である」と述べ,その実現には各施設でのAi情報の開示が必要とした.
児童虐待の防止とAi
第二部では,今村聡副会長が座長を務め,第一部の演者に,木ノ元直樹氏(弁護士),溝口史剛氏(群馬県済生会前橋病院)を加えた八名で総合討論を行った.
討論の中では,Ai読影の責任や読影可能な範囲を明確にして,厚労省等で開催される検討会の中で主張していく必要があることなどが確認された.会場の参加者からも質問が寄せられ,演者が丁寧に回答した.
最後に,高杉常任理事が,六月に国会で可決成立して間もない死因究明関連二法案にも触れつつシンポジウムの議論を総括し,閉会となった.
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