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第1228号(平成24年11月5日) |
第127回日本医師会臨時代議員会
日本医師会の公益社団法人移行に伴う定款・諸規程変更案可決/来年4月1日に公益社団法人へ移行予定
第127回日本医師会臨時代議員会が10月28日,日医会館大講堂で開催され,「公益社団法人への移行認定申請及びそれに伴う定款・諸規程変更の件」など,2議案を賛成多数で可決した.
(関連別記事参照,詳細は『日医雑誌』12月号の別冊参照)
さまざまな質問に理事者が回答
当日は,加藤寿彦代議員会議長並びに横倉義武会長のあいさつ(別記事参照)に続いて,羽生田俊副会長が平成二十四年四月以降の会務概要を報告し,議事に移った.
第一号議案「平成二十三年度日本医師会決算の件」については,今村聡副会長が提案理由を説明.その後,笠原孝財務委員長より,財務委員会(十月二十七日開催)での審議結果(別記事参照)の報告が行われ,賛成多数で可決した.
引き続き,第二号議案「公益社団法人への移行認定申請及びそれに伴う定款・諸規程変更の件」が上程され,今村副会長が「公益社団法人に認定されるためには,新公益法人制度に合致した定款が必要となる.今回の変更案は,定款・諸規程検討委員会の答申を踏まえて,第五回理事会(七月十七日開催)において協議し,承認されたものである」とした上で,主な変更点を詳細に説明.
質疑応答の後,出席代議員三分の二以上の賛成多数で可決した.
その後,代表質問と個人質問に移った.
代表質問
(一)地域医療を担う,全ての医師に呼び掛けを
近藤太郎代議員(東京ブロック)の,全ての医師が地域の中で担うべき役割を認識するよう呼び掛けを,との質問には,今村副会長が,まず,「地域医療には,さまざまな特性,実情があり,全国一律の考え方をトップダウンで押しつけるべきものではない.また,各地域で,医療機関は,それぞれが地域医療の中で担うべき役割を認識している」とした上で,日医では,都道府県医師会等,医療提供者の主体的な関与の下で,地域の実態を踏まえた医療提供体制を検討するよう,本年五月に厚生労働省に提案したことを報告.
更に,「一人ひとりの医師が,まずは郡市区医師会の活動に参加して市町村や医療圏単位で地域医療のあり方を考え,更に都道府県医師会に参加して,その都道府県全体や近隣地域を含めた医療体制の在り方を考えていくことこそ,医師会という組織の強さであり,その集大成が日医である」と述べた.
(二)勤務医と日医代議員定数について
森下立昭代議員(中国四国ブロック)からの,代議員に占める勤務医の割合を増やすため,都道府県医師会の代議員定数を最低四名にするべきとの提案について,今村副会長は,提案の趣旨には賛同を示した上で,「日医の代議員制度は,会員であれば誰でも代議員に立候補出来,その選出は都道府県医師会に委託する制度となっていることから,提案が実現した場合でも,実際に勤務医が代議員として選出されるかについては,各都道府県医師会の代議員会の判断による」と説明.その上で,日医への勤務医の加入率の向上と活動の強化を願う思いは,執行部も同じであり,新公益法人制度移行後の日医の体制強化に向けた一つの提案として,今後,定款・諸規程検討委員会に諮りたいとした.
(三)地域医療再生への支援策について
池田哉代議員(九州ブロック)の,地域医療再生への支援策についての質問には,横倉会長が回答.まず,医師会立病院が公的医療機関になることについては,メリットもある反面,デメリットも想定されるとして,慎重な分析が必要であるとの認識を示し,本件については,今後も医師会共同利用施設検討委員会に検討を委ねるとともに,関係各方面からの情報収集及び慎重な検討を重ね,各地域の医師会立病院の運営の一助となるように努力するとした.
また,日医認証局の進捗状況に関しては,日医認証局が発行するICカードが配布可能な状況であることや,いくつかの地域並びに実証事業などで試行的に活用されていることを報告.最終的には医師資格カードとしての活用まで日医がイニシアチブをとって進めていく意向を示した.
(四)TPP参加に反対する再度の表明を
宮本慎一代議員(北海道ブロック)からの,TPP参加についての日医執行部の考えと今後の運動方針に関する質問には,中川俊男副会長が回答した.
同副会長は,改めて所得によって受けられる医療に格差をもたらすTPPへの参加に反対していく考えを示し,今後は,(1)社会保障・税一体改革,日本再生戦略,TPPなどを,個別にではなく,一体的,総合的に分析する(2)地域の医師会の先生方や医療関係者,厚労省との連携を強化する(3)TPPへの参加や新自由主義的な構造改革を望む経済界とも真摯(しんし)に協議していく─との方針を示した.
更に,「最も重要なことは,国民の理解を得ること」と述べ,十一月十五日開催の国民医療推進協議会総会に諮った上で,十二月十四日(予定)に国民集会を開催し,粘り強く国民の理解を求めていくとした.
(五)集団的個別指導について
小原紀彰代議員(東北ブロック)からの集団的個別指導に関する質問には,中川副会長がこれまでの経緯を説明した上で,十月十九日に,櫻井充厚労副大臣に対して,(1)個別指導は数値目標ありきではならない(2)高点数を理由にすることは,医療が高度化した現在,医療現場の実態にそぐわないことから選定方法を見直す(3)集団的個別指導の対象医療機関へ,類型区分や平均点数などの情報を開示すべき(4)施設基準の適時調査で返還となった場合,最大五年までさかのぼるため,医療経営上の大きな負担になる(5)新規指定医療機関が「再指導」となった場合,教育的効果という観点から別途指導の在り方を検討して欲しい─等の申し入れを行ったことを報告.櫻井副大臣からは前向きな見解が得られたとし,これまで以上に日医と担当部署との協力体制が整ったことから,運用の見直し等について強力に推進していくとの決意を述べた.
(六)准看護師試験日について
井上雄元代議員(関東甲信越ブロック)の准看護師試験日に関する質問には,羽生田副会長が,「看護師国家試験と准看護師試験は,同一日にしなければならない法的根拠はない」と述べ,保健師助産師看護師法上,看護学校卒業者は准看護師試験を受験出来るため,別の日に設定するという配慮は,制度上あってしかるべきとの考えを示した.
その上で同副会長は,「日医はこれまでもこの問題の主旨を厚労省に説明してきたが,准看護師試験は都道府県知事の権限になるため,関東甲信越ブロックから医師会と行政の合同会議に意見を出して欲しい」と要請.更に,他のブロックに対しても「看護師国家試験日が毎年八月一日の官報で公示された後に准看護師試験日が決まるので,受験日が重ならないよう働き掛けて欲しい」と要望.日医からは厚労省に対し,改めて要望を行うと述べた.
(七)医療界をリードする日医の役割への期待
笠原孝代議員(近畿ブロック)からの,医療界をリードし,日本の医療を良くしていく日医の役割に関する質問に対して,横倉会長は,まず,日医と日本医学会は今後も車の両輪として国民の医療を守っていかなければならないと改めて強調した.
また,四病院団体協議会や全国医学部長病院長会議等の各種団体とも,特定看護師や入院基本料の問題等について積極的に議論を行い,協調体制を組んでいると報告.
中医協については,日医が示す一定の方向性を基に診療側委員の意見集約を図るべく協議していることを明らかにした.
更に,日医は医師を代表する唯一の団体であり,医療全体をリードしていくという強い信念の下,行動していると明言.地域医療を守るのは医師会であるということを,各地域医師会と共に,国民や医療関係団体に主張していきたいと結んだ.
(八)保険概論のすすめ
松本純一代議員(中部ブロック)の,大学の医学教育カリキュラムに「医療・介護保険概論」を創設すべきとの提案に対しては,羽生田副会長が,まず,現状の「保健,医療,福祉と介護の制度」に関する学習内容は,充実の面で課題が多いとの認識を示し,昨年四月に公表した『医師養成についての日本医師会の提案(第二版)』の内容を説明,今後も国の理解を得るべく努力するとした.
更に,都道府県医師会に対しては,各大学医学部・医科大学に社会保険・介護保険の基本的な知識,医師としての地域医療への関わりに関する講座を開設することを要望し,『WMA医の倫理マニュアル』,日医作成の『医師の職業倫理指針』や『ドクタラーゼ』の活用を促した.
また,医師国家試験に関連問題を増やすべきとの考えも示し,試験問題公募への協力を呼び掛けた.
個人質問
(一)福島原発による被災者へのフォローアップについて
午前中の横倉会長のあいさつ並びに会務報告に対する質問として,塩見俊次代議員(奈良県)より,(1)全国に避難している福島原発被災者に対する健康支援を求める要望(2)消費税の目的外使用への懸念─が示された.
羽生田副会長は,(1)について,結核予防会より,福島県が実施主体となって行われている福島県外に避難された方々に対する健康管理調査への協力依頼があったことを報告.「より多くの方々が受診出来るよう,各医師会でも協力をお願いしたい」と述べた(八月二十八日付で日医より協力依頼書を発出済).
また,(2)については,消費税に関する法律には成長戦略や防災,減災のために使うことが出来るとの記述もあることから,社会保障にのみ使用してもらえるよう引き続き働き掛けていくとした.
(二)地域IT連携の創設・維持に対して診療報酬措置要望,救急医療,地域医療維持,臨床対応力増進に向けての臨床研修制度改革提言
山下裕久代議員(北海道)の(1)地域医療IT連携の創設・維持に対する診療報酬措置の要望(2)臨床研修制度改革提言─に対しては,小森貴常任理事が回答した.
(1)では,事業計画時点における継続性に関する議論の重要性を強調.
維持費については,診療報酬で対応する考え方の他,メリットを享受する者や国,地方自治体が負担する考え方もあり得るとの見解を示し,日医総研で実施中の全国のIT連携状況調査結果を基に検討を続けるとした.
(2)では,『医師養成についての日本医師会の提案(第二版)』において,研修医の都市部への集中対策として,研修希望者数と募集定員数をおおむね一致させる提案をしていると説明.日医が提案する医師研修機構等で,地域の特色ある研修プログラムを検討するよう要望するとともに,地域医療の充実に資する臨床研修制度となるよう日医も努力するとした.
(三)代議員会における執行部の対応について
市川朝洋代議員(愛知県)の代議員会における執行部の対応に関する質問には,今村定臣常任理事が回答.
同常任理事は,検討や対応を約束したことについては,委員会に審議を付託するなど,取り組みを必ず行ってきたとし,前回代議員会の案件への対応例として,(1)委員会答申の内容に対する検証については,代議員会終了後,直ちに前期委員会答申全ての内容について検証を行い,現在の会務運営に反映させている(2)日医の綱領を策定するためのプロジェクト委員会については,既に設置し二回の会議を開催している─ことなどを説明した.
こうした取り組み状況や結果は,日医雑誌,日医ニュース,白クマ通信,日医FAXニュース,日医ホームページ等を通じて,適宜,情報発信していることを紹介した上で,「更に分かりやすい情報伝達手段を検討し,実現していきたい」と述べた.
(四)「特区を活用した予防・個別化医療推進」への日医の対応は?
西田芳矢代議員(兵庫県)の特区を活用した予防・個別化医療推進への対応についての質問には,石川広己常任理事が回答.特区問題については,「日医に『特区対策委員会』を設けて動きを注視している」とし,「特区であっても,国は国民皆保険の崩壊につながりかねない規制緩和を認めるべきではない」と強調.
「レギュラトリーサイエンス」に関しては,特区において,医療の営利化をもくろんでその概念を歪め,生命倫理や個人情報保護の手続きをおろそかにすることは許されないとした.
その上で,「個別化医療に向けての遺伝子情報保護は絶対であり,地域住民,患者へのきめ細かな説明や対応,情報保護等に係る厳重な法整備を最優先すべきである」と述べ,安心・安全な医療が損なわれることがないよう,国に対して引き続き働き掛けていくとした.
(五)日医代議員選出制度について
西成忍代議員(秋田県)の日医代議員選出制度に関する質問には,三上裕司常任理事が回答した.
代議員選出に関わるガイドラインの作成については,「会長選挙制度に関する検討委員会」答申(平成二十三年三月)の中で示された「代議員・予備代議員選出ガイドライン案」において,会員であれば誰でも代議員になれることを示すとともに,勤務医枠等を設けることなく,勤務医や若い会員が自然と代議員等に選出されるような組織や選挙のあり方について議論を求めていることを説明.各都道府県医師会の事情を踏まえつつ,会員構成比率等も勘案した代議員の選出を要請していくとした.
日医の役員選挙に関する都道府県医師会単位での会員意向調査の件については,「会員と代議員の意向に齟齬(そご)があると混乱が生じる」との懸念を示した上で,大きな試みであるため,まずは秋田県医師会で実践された際の経過と結果及びその評価を示して頂き,それを材料の一つとして慎重に検討していきたいとの考えを示した.
(六)選挙管理委員会に望むこと
小松満代議員(茨城県)の役員選挙についての規定等の検討に関する質問には小森常任理事が回答.
選挙管理委員会の公平・中立性を保つために,「会長候補を擁する都道府県医師会所属の選挙管理委員長は委員から外れることが望ましい」との意見に対しては,定款施行細則第九条第一項,同第三項,第五十五条によって十分に確保されているとの認識を示した.
また,各ブロックに依頼している選挙管理委員選出の時期が,候補者が出る役員選挙公示より前に行われている経緯を説明した上で,「役員選挙の更なる公平・中立性を願う思いは,全代議員同じであり,今回の指摘を真摯に受け止め,提案を定款・諸規程検討委員会,選挙管理委員会,代議員会議長に伝えて検討を依頼したい」との考えを示した.
(七)准看護師養成所廃止議論と柔道整復師等療養費の適正化等の問題について
佐藤光治代議員(長崎県)の准看護師養成廃止議論,柔道整復師等療養費の適正化等に関する質問には藤川謙二常任理事が回答した.
准看護師養成廃止議論については,日医と厚労省の間では全くないとした上で,日医として,四病院団体協議会と共に,「准看護師の生涯教育研修体制のあり方に関する連絡協議会」を開催し,厚労省や日本看護協会も状況によっては参加を求めるなど,准看護師の卒後研修と看護職員の確保について検討し,准看護師の存在価値を再確認しているとした.
柔道整復師等療養費の適正化等の問題に関しては,社会保障審議会医療保険部会において,二つの専門委員会を設置し,平成二十四年度の療養費改定と療養費のあり方の見直しに関する議論を行うことになったことを説明.専門委員に日医推薦の整形外科医が公益側委員として参画していることを明らかにし,第一回目の検討内容を解説した.
更に,医療機関からの安易な同意書発行の問題に関しては,医師の同意書の留意事項通知が改正されたことについて説明を行った.
(八)診療関連死及び医師法第二十一条の問題について,(九)異状死(診療関連死)への対応について
橋本省(宮城県)・奥村雄外(福井県)両代議員の診療関連死に関する質問には,高杉敬久常任理事が,まず,これまでの経緯として,平成二十二年から「医療事故調査に関する検討委員会」を発足し,勤務医委員会の意見を聞きつつ報告書を作成.報告書完成後の二十三年九月には,全ての都道府県・郡市区医師会に対してアンケート調査を実施するとともに,地域医師会を訪れ,中央情勢と経過報告なども行ってきたと説明.本年九月に示した「診療に関連した予期しない死亡の調査機関設立の骨子(日医案)」の案文について,不十分との指摘を受けたことには反省しているとした.
その上で,同常任理事は,「今回の結果を踏まえて,誤解が生じている部分についてはQ&Aを作成し配布するとともに,プロジェクト委員会を新設し,更に検討していきたい」と述べた.
「医師法二十条に定める死亡診断の際の例外事由の解釈に関する問題」については,同条ただし書きの規定を説明し,「死亡診断書を交付する医師が,患者の死因が診療中の疾病であることを確実に診断出来る期間」との解釈を示し,「その期間は一律に決められるものではないが,数日間という幅が,医師の共通認識ではないか」と述べた.
更に,本年六月に成立した「死因究明二法」については,「犯罪死を含む不審な死因を究明していく体制を築くことが目的」と説明.医療関連死に関しては,「警察の仕組みの中では原因究明,再発防止につながらないため,別途の検討を要望し実現した」とし,今後も警察への届出とは一線を画する医療事故調査制度を構築する考えを示した.
(十)平成二十五年度からの特定健康診査・特定保健指導及びがん検診について
角田徹代議員(東京都)からの(1)特定健康診査・特定保健指導(2)がん検診─に対する日医の見解を問う質問には,道永麻里常任理事が回答した.
(1)に関しては,厚労省の検討会において,「高齢者医療確保法自体の抜本的見直し」「行政責任の明確化」「エビデンスと精度管理による健診項目設定と指導手法の充実」を繰り返し主張してきたことを説明.今後は,会内の公衆衛生委員会で実施予定の地域の保健事業に関する調査の結果を基に具体的な政策提言を行い,国の政策への反映を図っていく考えを示した.
(2)については,国のがん対策推進協議会の場で,「国・行政の責任を明確にし,制度の見直しを図る」「科学的根拠と精度管理に基づく実施体制を確立する」「検診事業への国民の積極的参加への意識の高揚を図る」ことを強く求めていると説明.
また,地域の医師会が統一的な意識を持って,それぞれ対応する地域行政とがん検診に関して協議・協働出来るよう,会内のがん対策委員会における議論の内容を斟酌(しんしゃく)しながら,具体的な対応を考えていきたいとした.
(十一)地域における厚生事業について
中田康信代議員(北海道)からは,地域における厚生事業を継続していくため,次期診療報酬改定における中小病院,診療所への手厚い配分を求める要望が出された.
石井正三常任理事は,(1)診療所が弱体化すれば,その分,病院に負担が集中し医療崩壊を更に深刻化させること(2)今後,「看取り」を含めた地域に密着した医療ニーズが増加してくる中で,わが国の中小病院や有床診療所は大切な既存資源であること(3)中小病院におけるケアミックスなどは高齢化に対応した進んだ形として海外からも高い評価を得ていること─等を挙げて,中小病院,診療所の果たす役割の重要性を強調.
その上で,次期診療報酬改定に関しては,診療所,有床診療所,中小病院の医療を充実させるためにも,手厚い配分を強く求めていく考えを示した.
(十二)医療における軽減税率ゼロ%を獲得するための国民運動の提唱
弘山直滋代議員(山口県)は,医療における軽減税率ゼロ%を獲得するための国民運動を提唱.三上常任理事は,中医協消費税分科会での積極的な活動を推進し,次回分科会で,日医,病院団体,日歯,日薬の診療側委員連名により,中医協とは別に「課税のあり方を検討する場」の設置を求める要望書を提出することを表明した.また,パンフレット『今こそ考えよう 医療における消費税問題』の第二版を日医雑誌十一月号に同封予定だとした.
更に,「医療を非課税から課税の仕組みに変える」には,地域住民の理解や賛同が必要として,各都道府県医師会に対し,市民公開セミナー等の開催の検討を求めた.
今後は,消費税問題を中心に,TPP等他の医療的課題も含め幅広い国民運動を展開するため,国民医療推進協議会の下で,活動を強めていくとした.
(十三)終末期医療・看取りへの改革的な方策を!
木村丹代議員(岡山県)からの,終末期医療・看取りへの改革的な方策を求める要望には,藤川常任理事が,終末期医療に関する日医の指針として,二〇〇八年の生命倫理懇談会(以下,生倫懇)答申「終末期医療に関するガイドラインについて」と「グランデザイン二〇〇九」の「看取りの医療『終末期医療のガイドライン二〇〇九』」を挙げ,今期生倫懇でも検討中で,来年度中に新たな具体的提言を示すことが出来るとした.
その上で,「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」の内容を紹介.個別性の高い終末期医療の法制化に対し,日医としては慎重であるべきと意見表明しており,終末期に誰もがより良い医療が受けられる医療体制と診療報酬の確保,在宅医療システムの充実等,終末期を看取る地域医療連携体制の強化に力を入れていきたいとした.
(十四)地域医療の推進に関する日医の支援について
松井道宣代議員(京都府)からの,地域医療の推進に関する日医の支援についての質問には,葉梨之紀常任理事が回答.
地域医療は各地域の実情に基づいてつくり上げるのが基本であり,「京都地域包括ケア推進機構」のように,医師会と行政が一体となって地域の現状を把握,医療と介護の政策を立案し,住民参加の輪を広げることが大切だと指摘した.
日医としては,会内の地域医療対策委員会を始め,公衆衛生・がん対策推進・介護保険各委員会等での議論や報告書を踏まえ,国の施策に対し地域の現状を反映させていくとし,「在宅医療システムは,地域医師会を主体として構築すべき」との日医の主張の結果,来年度の「在宅医療連携拠点事業」は,地域医師会が中心となる方向だと説明.今後も,医療や介護行政における地域医師会の位置付け強化を図るべく努力するとした.
(十五)今後の社会保障制度に対する日医の対応について
「二〇二五年に向けたより効果的・効率的な医療・介護サービスの提供体制」に対する日医の見解を問う金井忠男代議員(埼玉県)からの質問には,鈴木邦彦常任理事が,まず,わが国の医療は,世界的に見ても極めて優れたものであると強調.今後,世界に例を見ない超高齢社会を乗り切るためには,日本型診療所と有床診療所,そして中小病院が担い手となり,「施設か在宅か」ではなく,「施設も在宅も」活用していくことが必要になるとした.
その上で,同常任理事は,超高齢社会に対応出来る地域に密着した医療の担い手である診療所,有床診療所,中小病院の医療を充実させるためにも,次回改定においては,「入院基本料の見直しを含む基本診療料の引き上げ」「DPCの無秩序な拡大の見直し」「出来高払いの適正な評価」が必要だとし,今後はその実現に向けて尽力していく考えを示した.
(十六)在宅医療の推進について
在宅医療の推進に関する日医の見解を問う太田照男代議員(栃木県)の質問には,鈴木常任理事が,六月に実施した「二〇一二年度診療報酬改定に関する調査」の結果を概説.在宅医療において医療機関間の連携が困難な理由として二九・四%の診療所が「近隣に医療機関はあるが頼みにくい」,二一・六%の診療所が「近隣の医療機関が在宅医療を行っているか不明」としていることを挙げ,「超高齢社会へ対応するためには,二十四時間・三百六十五日の医療提供体制の普及は必須であり,ぜひ,地域の医師会が主役となって構築して欲しい」と要望した.
また,今期の実践的な取り組みとして,「都道府県医師会の了解を得た上で,全郡市区医師会に対して現状の課題を抽出するためのアンケート調査の実施」,従来実施の「在宅医研修会,在宅医療を支援する医師の研修会」を充実させ,「第一回日本医師会在宅推進フォーラム(案)の開催」を予定していることを明らかにした.
(十七)地域包括ケアシステム実現の課題について
地域包括ケアシステム実現の課題について,日医の見解を問う鉾之原大助代議員(鹿児島県)の質問には,高杉常任理事が回答.
まず,本年四月の介護報酬改定について,結果的にマイナス改定であったことは不満とする一方,地域住民に対して医療・介護を切れ目なく提供するという観点から,在宅生活時の医療機能の強化に向け,従来から日医が提言していた「地域をひとつの病棟と捉える視点」に即した内容が多く盛り込まれていることを評価したいとした.
また,地域包括ケアシステム構築のためには,保険者,地域の医療・介護に関わる全ての職種がそれぞれの専門性を生かし,地域づくり,街づくりの視点をもって臨むことが重要であるとした.その上で,「各地域の先生方には,財源論に縛られず,それぞれの地域ごとに何があって何が足りないのか,検討を深め,取り組んで欲しい」と要望した.
最後に,横倉会長,久野梧郎代議員会副議長からの閉会あいさつが行われ,臨時代議員会は閉会となった.
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