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第1231号(平成24年12月20日) |
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医師の偏在
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医師の地域偏在,診療科偏在が問題になっている.その背景には複合的な要因があることが指摘されているが,医師の地域偏在については,平成十六年にスタートした新医師臨床研修制度が大きな要因となっている.研修医は大学を離れ,自らの自由意思により都市部の臨床研修病院に集中した.その結果,地域における医師配置のバランスが大きく崩れ,地方における医師不足が加速した.
診療科偏在については,訴訟問題,診療科特有の労働環境の差異などが影響していると考えられている.
日頃,クリニカルクラークシップとして医学部の六年生,また,研修協力病院として前期研修医を受け入れているが,これら若い世代の生の声を聞くと,ネットを中心とした溢れる情報の中で,医療を取り巻くさまざまな問題に不安を感じ,可能な限りリスクを回避し,現実的な行動を取ろうとしていることがよく分かる.
医学部の定員増などにより,確実に医師の数は増加しているが,一方で医師の勤務形態,勤務先の多様化が進み,また,医療の高度化・複雑化,患者意識の多様化などにより,患者一人に対する医師の業務量は確実に増えているため,必ずしも常勤医として第一線で活躍している勤務医の負担軽減にはつながっていない.
医師不足の現実は,必ずしも特定の診療科,地方に限ったことではない.医局の医師派遣機能が弱体化し,医師紹介業者を利用してリクルート活動をする医師が増えているが,医療機関側の費用負担は大きい.
(榮)
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