日医ニュース
日医ニュース目次 第1234号(平成25年2月5日)

医療基本法(仮称)制定に関するシンポジウム
医療基本法(仮称)の制定を目指して議論を行う

医療基本法(仮称)制定に関するシンポジウム/医療基本法(仮称)の制定を目指して議論を行う(写真) 医療基本法(仮称)制定に関するシンポジウムが昨年十二月二十二日,日医会館大講堂で開催された.
 今村定臣常任理事の司会で開会.冒頭,横倉義武会長は,「医療とは大前提として医療提供者と患者さんとの信頼関係の下に成り立つもの」とした上で,現実には,必ずしも満足出来る状況ではなかったと指摘.更に,自らが平成十八年から四年間委員長を務めた,会内の医事法関係検討委員会で,「医師・患者関係の法的再検討」をテーマに,医療提供者と患者の信頼関係をいかに再構築していくか,法的な枠組みを通して議論したことを紹介.同委員会では,二十四年三月に,鈴木勝彦委員長(静岡県医師会長)の下で,医療政策の理念や根本原則を定めた「医療基本法」制定の提言が行われたと説明した.
 同会長は,「既にさまざまな団体の主催で『医療基本法』についてのシンポジウムが全国で開催されているが,医療を提供する立場から,患者さんや国民の皆さんの意見を伺い,共に議論をし,また,行政や国会議員の方も交えて,幅広く議論を展開したいという趣旨で,本シンポジウムを企画した」とあいさつした.
 続いて四題の報告が行われた.
 最初に,小西洋之参議院議員(民主党政調会長補佐・医療基本法議連)が,「医療基本法の制定について」と題し,日本国憲法第十三条(個人の尊厳,幸福追求権)とその理念をより具体的に表す第二十五条(生存権)から導かれる医療政策の根本理念について触れ,法制的観点からの必然性と,医療,医療政策の本質より,医療基本法の必要性について説明.また,国政における「医療」の更なる位置付けや国民皆保険の堅持といった政策的観点からも医療基本法は必要であると強調した.
 次に,大井利夫日本病院会顧問(医事法関係検討委員会副委員長)は,「『医療基本法』を考える」と題して,臨床医療現場の立場から,医療の定義・属性・範囲等について説明した上で,医療基本法に求められる基本理念として,(1)憲法の基本理念の具象化(2)医療の定義を明確にすること(3)医療関連法令の法的論拠を明確にすること─を挙げた.また,日本病院会における医療基本法を巡る検討状況についても紹介し,同法制定の必要性を主張した.
 続いて,伊藤雅治全国社会保険協会連合会理事長(患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会副代表世話人)が,「今,なぜ医療基本法が必要か」と題して,東京大学医療政策人材養成講座(HSP)での研究と,「患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会」の活動について紹介.「同協議会」「患者の権利法をつくる会」「医療政策実践コミュニティー・医療基本法チーム」の三団体が策定した「医療基本法共同骨子」及び政党アンケートについて説明した.
 田中秀一読売新聞東京本社論説委員は,「なぜ医療基本法が必要なのか」と題し,東京大学公共政策大学院医療政策教育・研究ユニットにおける自主的社会活動H─PAC(医療政策実践コミュニティー)での研究成果を中心に報告.(一)医療提供体制の充実,(二)医療の質と安全の確保,(三)患者の権利の保障,(四)国民皆保険制度の維持―という課題を実現する拠り所として,医療基本法を制定する必要性を訴えた.
 その後,古川俊治参議院議員と吉岡てつを厚生労働省医政局総務課長からの指定発言が行われた.
 古川議員は,医療基本法に関して,医療に関する法令領域を整理統制し,医療政策に一定の方向付けを行う意義は認めつつ,単なる理念法であれば,現行医療法と大差はないとして実効性に疑問を呈し,更に専門性・技術性の高い医療の内容について法規制が及ぶ場合の懸念を示した.
 吉岡課長は,昭和四十七年,政府により「医療基本法案」が通常国会に提出されるも審議未了により廃案となって以降,必要に応じて医療法等の改正を通じた体系整備を行ってきたとして,これまでの経緯と医療基本法に関する厚労省の考え方を説明した.
 最後に,六名の演者による総合討論があり,活発な質疑応答の後,羽生田たかし副会長が総括し,閉会した.出席者は二百十三名であった.

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