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第1235号(平成25年2月20日) |
日医・JAXA
超高速インターネット衛星を用いた災害医療支援活動に関する協定を締結
署名後握手を交わす横倉会長(左)と
立川JAXA理事長(右) |
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日医と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,今後想定される大規模災害発生に備え,超高速インターネット衛星「きずな」を用いた災害医療支援活動を円滑に行うために,利用実証実験に関する協定を締結することとなり,その署名式が一月三十日,日医会館で行われた.
本協定は,大規模災害発生時の災害対策における衛星「きずな」の活用方法を検討し,災害医療支援活動への適用に関する実験を共同で実施することを目的としている.
業務分担として,日医は災害発生時のTV会議システム,データベース及びクラウド型電子カルテ等を用いた情報共有手段の活用方法の検討などを担当し,JAXAは日医計画案の実験や評価,衛星「きずな」の運用や機材の貸与などを担当するとともに,災害時には,直ちに衛星「きずな」を活用した情報共有の体制を整える.
署名式は,石川広己常任理事の司会で開会.本協定締結に至った経緯を説明した石井正三常任理事は,東日本大震災時,JAXAは被災地において衛星「きずな」を用いたインターネット回線を提供する支援活動を,日医はJMATを組織し医療支援を行ったことを紹介.その中では,被災地の医師会やJMAT等との情報共有が重要であることを改めて認識したとした上で,「今後発生が予想されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震では,災害時のインターネットの活用が見込まれる一方,通信環境が機能停止に陥ることも懸念していた.これらの状況から,日医は,JAXAの協力により平成二十四年七月二十六日に都道府県医師会救急災害医療担当理事連絡協議会を開催し,衛星『きずな』を利用し災害時における非常時通信を用いたテレビ会議,電子カルテ共有等による情報共有のデモンストレーションを実施した.その結果を踏まえ,災害時の情報共有手段の確立を目指し,更なる実証実験を行うため,今回の協定締結に至った」と説明した.
その後,横倉義武会長と立川敬二宇宙航空研究開発機構理事長が協定書へ署名を行い,固い握手が交わされた.
今後の検証が重要
署名を終えた横倉会長は,「今後,実証実験を重ねながら,人工衛星によるインターネット通信でどのようなことが出来るか,いかなる問題があるかを検証し,大規模災害に備えて被災者の方々の生命や健康を維持することに貢献したい」と述べた.続いて,立川理事長は,「本日,日医と協定の締結に至り,うれしく思っている.災害時には日医と共に人工衛星を利用し,対応していきたいと考えており,協定を有効に生かし日本の災害対策のために貢献して参りたい」と述べた.
同日開かれた,合同記者説明では,石井常任理事が災害時の非常時通信の重要性について,更に,五味淳宇宙航空研究開発機構宇宙利用ミッション本部衛星利用推進センター長が衛星「きずな」の概要と今後の展望についてそれぞれ説明した.
アジア大洋州での情報共有も視野に
記者との質疑応答の中で石井常任理事は,衛星「きずな」がアジア大洋州全域をカバーしていることから,今後は自らが事務総長を務めるアジア大洋州医師会連合(CMAAO)などを通じて,アジア大洋州の災害医療情報共有への活用も視野に入れ,検討していきたいと述べた.
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