日医ニュース
日医ニュース目次 第1236号(平成25年3月5日)

平成24年度母子保健講習会
「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─7」をテーマに

平成24年度母子保健講習会/「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─7」をテーマに(写真) 平成二十四年度母子保健講習会が,「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─7」をメーンテーマとして,二月十七日に日医会館大講堂で開催された.
 今村定臣常任理事の司会で開会.横倉義武会長(今村常任理事代読)は,冒頭あいさつで,「わが国の将来を担う次世代の健全な育成は,国の責務として推進すべきであり,地域社会が一体となって取り組む必要がある」とした上で,「本日は子どもたちの健全な育成を多角的に支援する政策のあり方等について,活発な議論を頂きたい」と述べた.
 午前は,二題の講演が行われた.
 講演(一)「出生前診断の新たな展開とその課題」では,平原史樹横浜市立大学附属病院長が,母体血を用いて調べる新しい出生前遺伝的検査について解説するとともに,遺伝カウンセリングの重要性を指摘した.更に,同診断の実施の前提として,遺伝子の多様性や変化に基づく疾患・病態や遺伝型を例外的なものではなく人の多様性と理解し,それを尊重する考え方を社会として醸成させることが急務だとした.
 講演(二)「わが国の生殖医療の未来に求めるもの」では,吉村典慶應義塾大学医学部産婦人科教授が,対外受精・胚移植による治療成績や,凍結胚による妊娠等の現状を説明した上で,今後は,生まれた子どもの長期予後調査が重要とした.また,着床前遺伝子のスクリーニング,卵子提供や代理懐胎といった生殖補助医療の問題点を指摘するとともに,今後,卵子や卵巣の凍結保存と移植,子宮頸がんにおける妊孕能温存,ES細胞やiPS細胞からの配偶子形成といったことが課題になるとの考えを示した.

小児保健法をめぐって

 午後は,「小児保健法をめぐって」をテーマにシンポジウム(座長:今村常任理事)が行われた.
 まず,松平隆光日本小児科医会会長が,「『小児保健法』とは」と題して,わが国の福祉政策の現状を解説し,わが国では諸外国に比べ社会保障制度が高齢者支援に偏り,子育て支援策が乏しいことなどを指摘した.その上で,子どもの権利を認め,子どもが健全に成長していくためのより良い環境づくりと,それを社会全体で支えるシステムの制度化に向け,「小児保健法」の制定が必要と訴えた.
 次に,森臨太郎国立成育医療研究センター成育政策科学研究部長が,「英国の小児保健政策」について,ブレア政権以降,国民的関心の高まりや政治的主導により構造的な問題が改善され,更に診療ガバナンスが政策にも応用されるなど,大きく転換した経緯や二〇〇四年に発効した「子どもや出産に関連した国家十か年計画」を紹介.英国の政策転換の過程は,日本の小児保健政策の改善に向け,示唆に富んでいるとした.
 山泰彦神奈川県立保健福祉大学名誉教授は,「育児保険(子育て基金)構想」と題して,育児保険としては,(1)地域保険(介護保険)モデル(2)国民保険(年金保険)モデル(3)総合保険モデル─が考えられることや実現への課題等について説明した.その上で,社会保障制度改革国民会議の議論でも,子ども・子育て支援が大切との考えは一致しているとして,構想実現に期待を寄せた.
 橋本泰宏厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長は,平成二十四年八月に成立した「子ども子育て支援新制度(関連三法)」について概説.支援機能を充実させるために,子ども・子育て支援法は内閣府が所管し,厚労省や文部科学省と連携の下,一元的体制で取り組む構想を示し,平成二十七年四月の施行を目指しているとした.
 討議では,フロアとの間で熱心な意見交換が行われ,閉会した.参加者は二百五十名.

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