日医ニュース
日医ニュース目次 第1247号(平成25年8月20日)

第9回男女共同参画フォーラム
「みんなちがって,みんないい〜伝えたい,豊かな医療人をめざすあなたへ〜」をテーマに

第9回男女共同参画フォーラム/「みんなちがって,みんないい〜伝えたい,豊かな医療人をめざすあなたへ〜」をテーマに(写真) 第九回男女共同参画フォーラムが七月二十七日,過去最高の五百六十三名の参加者を集めて,山口市内で開催された.
 濱本史明山口県医師会副会長が開会を宣言.続いてあいさつに立った横倉義武会長は,初めに,女性医師支援センター長を務める羽生田俊副会長が,第二十三回参議院議員通常選挙で初当選したことを報告し,謝意を表明.その上で,世界に類を見ない少子高齢社会を迎えるわが国では,女性の労働参加と手厚い子育て支援の必要性が指摘され,一方で,将来の医療を担う研修医の大半が専門医資格の取得を希望しつつ,ワークライフバランス(以下,WLB)という価値観を持っているとして,引き続き,医師が男女を問わずWLBを実現し,医師としての使命を全う出来るよう環境整備に努めていくとの意向を示し,協力を求めた.
 小田悦郎山口県医師会長は,地元でも女性医師が増え続けており,その多様な働き方を支援する環境整備が求められていると指摘.県内各病院の働きやすい環境づくりへの取り組み状況と管理者・開設者による「医師のための男女共同参画応援宣言」を掲載した『仕事も! 家庭も! 応援宣言集やまぐち2013 第3版』などの取り組みを紹介した.更に,「近年,“WLB”と“多様性”は男女共同参画推進のキーワードとなっている」として,山口県が生んだ童謡詩人・金子みすず氏の「私と小鳥と鈴と」の一節「みんなちがって,みんないい」を今回のテーマとしたと説明.本フォーラムが男女共同参画を考える絶好の機会となることに期待感を示した.

基調講演

 基調講演「より良い医療のために,より良いキャリアのために」では,桃井眞里子氏(国際医療福祉大学副学長)が,長年,大学小児科で医学生や研修医,若い医師などを育てた経験を踏まえ,「人材育成こそが,大きな転換期にあるこの国の在り方ではないか」との問題提起を行った.日本は,上場企業役員や研究者等に占める女性の割合が非常に低く,先進国の中でも特殊な位置にあることを紹介.日本の人口構成では,国力の維持と発展は社会における女性の活用以外にないとし,働く男女の生活時間配分の国際比較などを示して,突出した長時間労働となっている男性の働き方が変わらないと日本の少子化は改善しないと指摘.超少子高齢社会の設計改革には,(1)女性(外国人)の育成・活用(2)長時間労働の終焉(えん)と適正な評価システム(3)二十四時間保育・病児保育の義務化や学童保育の充実,家事委託サービス─などが必要であり,男女共同参画は,新しい社会設計への挑戦であるとした.更に,生物学的にも社会学的にも“多様性”が重要であることを強調.また,WFC(Work-Family Conflict:仕事役割と家庭役割とが相互にぶつかり合うことから発生する役割葛藤)にも触れ,女性医師支援にとどまらず,医師のキャリア支援,専門職育成支援体制の整備が必要で,全ての分野でプロをいかに育てるかが重要だとした.最後に,新たな働き方・新たな価値観・新たな家庭の在り方が,共に働き共に育てる社会の創生につながり,新たな社会の在り方への挑戦であると結んだ.

報告

 報告では,まず,小笠原真澄日医男女共同参画委員会委員長が,同委員会の活動や平成二十四・二十五年度の会長諮問に対する答申作成の途中経過等について概説した他,八月に全国の臨床研修病院に対して実施予定のアンケート「男女共同参画についての男性医師の意識調査」への協力を依頼した.
 秋葉則子日医女性医師支援委員会委員長は,女性医師バンクを始めとする女性医師支援センター事業の運営状況を報告するとともに,今年度は新たに,「大学医学部の女性医師支援担当者連絡会─よりよい男女共同参画を目指して─」を九月二十七日に開催する予定であること別記事参照等を紹介した.

シンポジウム

 引き続き,四人のシンポジストと,コメンテーターとして桃井氏並びに小森貴常任理事が加わったシンポジウムでは,シンポジストがそれぞれの立場で講演を行った後,フロアから寄せられた質問を基に活発な議論が行われた.
 行天良雄氏(医事評論家)は,「女医は希望の星」と題して講演.敗戦時,GHQ(連合軍総司令部)公衆衛生局長サムス大佐ら若き将校たちと出会い,「医師は患者を診るだけでなく,公衆衛生(パブリックヘルス)の向上や,メディアを使って多くの人々に健康という幸福をもたらすことも大事だ」との言葉を原体験とする,自らの半生を紹介.また,現在も高い評価を受けている,NHK特集「日本の条件:医療.あなたのあすを誰が診る」(一九八一年)の制作当時のエピソード等にも触れつつ,「“死”に寄り添う医療」など,今後の医療の在り方についても述べた.
 澁谷景子氏(山口大学大学院医学系研究科放射線治療学分野教授)は,「豊かな医療人を育成するために」と題し,同大医学部附属病院医療人育成センター男女共同参画支援部門が実施した「職員の勤務環境の現況に関する調査」で明らかとなった問題点を解決するために行った活動内容について説明.「男女共同参画」とは,医療の中でのキャリア形成を通して「豊かな医療人を育成するための」一つの方法であり,「働くための環境整備」と「教育」が,共に推進されなければならないと述べた.
 原田唯成氏(いしいケア・クリニック)は,「ジェネレーションギャップを乗り越えて」と題して講演.医療者を取り巻く(社会)環境の変化を指摘,m3.com今どきの「U35(三十五歳以下)ドクター」医師調査の結果や,実際の学生・研修医のインタビューからの肉声などを交えつつ,自身の経験から,ワークシェアリングは,チーム対応することで互いに時間をカバー出来,若いスタッフが集まるとして,地域ぐるみの連携で医療者を家族ごと支援する取り組みを提唱した.
 松田昌子氏(山口県医師会男女共同参画部会長)は,「地域で取り組む男女共同参画〜山口県医師会の取り組み〜」について,(1)勤務医就労環境改善(2)保育支援(3)女子医学生キャリアデザイン支援(4)県内医師の連携(5)広報活動─など,同部会の活動を詳細に説明した.

宣言の採択

 その後,内平信子山口県医師会男女共同参画部会副部会長が,医師として情熱と志を持って社会に貢献し,かつ,個人としても生きがいを感じることが出来る環境を作り,二十一世紀の複雑で多様な社会において,男女を問わず豊かな医療人を目指すことを宣言した「日本医師会第九回男女共同参画フォーラム宣言(案)」を読み上げ,満場一致で採択された(下記参照)
 続いて,山縣三紀山口県医師会常任理事が閉会を宣言し,フォーラムは終了となった.なお,次回は,平成二十六年七月二十六日に日医会館で開催される予定.

宣言

 今,日本社会ではかつてないほど女性の潜在力が重視され,その能力を発揮することが期待されている.社会のあらゆる分野で女性の参画を促すための環境整備が急務とされ,意思決定の場への女性の登用が強く求められている.
 この期待に応えるべく,われわれは,医師として情熱と志をもって社会に貢献し,かつ,個人としても生きがいを感じることができる環境を作らなければならない.
 21世紀の複雑で多様な社会において,男女を問わず豊かな医療人をめざすため,次のことを宣言する.

一,われわれ医師は人の命と健康を守り,社会に貢献する責任を負う.

一,われわれは,生涯にわたり学び続ける姿勢を貫きキャリアを全うする人材を育成する.

一,医師の働き方に対する多様な価値観を受け入れ,真の男女共同参画を実現する.

平成25年7月27日
日本医師会第9回男女共同参画フォーラム

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