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第1248号(平成25年9月5日) |
アンチエイジング
日本人女性の平均寿命が再び世界のトップに返り咲き,男性も五位で過去最長になったそうだ.いわゆる健康寿命もトップクラスなのであろうが,確かに当院の外来にも元気な高齢者が多い.猛暑に負けず,いつも決まった時間に来て,待合室での話し声もやたらと大きい.間違いなくいくつかの病気を持っていながら,病人と呼ぶには,はばかられるような方々だ.シワが刻まれたお顔もよくよく拝見すると,男女を問わず惚(ほ)れ惚(ぼ)れするような良い表情をしていて,年を取ることも悪くないなと思ったりする.
近年,「アンチエイジング」という言葉が流行している.「抗加齢」とか「抗老化」と訳されるが,医学・医療の立場からみて,組織・器官の老化を遅らせ,少しでも長い健康寿命を享受するのを是とすることについて,もちろん異論はない.
一方,巷(ちまた)に溢(あふ)れる「アンチエイジング」の情報に乗せられ,比較的若い世代から高齢者まで多くの方々が多大な労力と出費を余儀なくされていると聞く.老いたくない,あるいは老いを先延ばしにしたいという気持ちは皆が持っているが,老いを否定するような固定観念にとらわれ過ぎている風潮には疑問を感じる.
最近では「アンチエイジング」に対し,「アンチ・アンチエイジング(老化に逆らわない)」という新しい言葉も生まれている.大きなお世話とは思うが,「アンチエイジング」へのたゆまぬ努力が,今後のより良い人生に結び付くことを心より願いたい.
(パパゲーノ)
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