日医ニュース
日医ニュース目次 第1255号(平成25年12月20日)

日医定例記者会見

11月20日
医療機関の経営状況は依然として厳しい状態

日医定例記者会見/11月20日/医療機関の経営状況は依然として厳しい状態(写真) 中川俊男副会長は,(一)第十九回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告─平成二十五年実施─並びに(二)TKC医業経営指標に基づく経営動態─を基に分析した結果について説明した.
 同副会長は,まず,(一)について,直近二事業年度調査に一本化されたことにより,診療報酬改定前後の定点調査が可能になったことを評価するとした.
 その上で,今回の結果を基に分析したところ,病院では,医業収益は増加したものの,損益差額構成比(医業利益率に相当)は,医療法人では横ばい,国公立では上昇したものの依然として赤字であったとした.
 更に,税引後総損益差額構成比(税引後利益率に相当)で見ると,(1)医療法人は公立病院の水準を下回っている(2)一般診療所では,医業収益の伸びが一%強にとどまり,損益差額構成比は入院収益ありの診療所(有床診療所)でやや低下している(3)一般病院では全体で病院長給与費,医師一人当たり給与費ともに上昇.一般診療所では,医師一人当たり給与費は上昇したが,院長給与は減少している─ことなどが明らかになったとした.
 (二)については,TKC全国会(会員数一万名超の税理士,公認会計士のネットワーク)から関与先の医療機関の決算データを集計・編纂(へんさん)したデータの提供を受け,それを基に分析を行ったと説明.
 その主な結果として,(1)二〇一二年度における民間医療機関の経常利益率は,病院(中小規模を中心とした法人)においては低下し,有床診療所では法人,個人とも横ばいになっている(2)病院の利益率が低下した主な要因は,従事者給与等の上昇であった(3)有床診療所は,医業収益が一・二%伸びたものの,従事者給与費等の上昇が要因となって医業利益率は若干低下した.経常利益率は,法人,個人とも横ばいであった(4)無床診療所(院内処方・院外処方計)は,医業収益が二・一%上昇した.経常利益率は,法人はほぼ横ばい,個人は一・三ポイント上昇であった─ことなどを挙げた.
 その上で,同副会長は,「TKC全国会に月次監査を依頼している医療機関は比較的優良とされているが,その医療機関でも,損益分岐点比率(※)が九〇%超の状態が続いている.二つの分析結果を見れば,医療機関の収支状況は依然として厳しい状態にあることは明らかだ」とし,医療機関の経営状況を改善するためにも,次回の改定はプラス改定にすべきと強調.
 更に,「二十店舗以上のチェーン薬局」で処方せん一枚当たりの保険調剤収益が九千円以上と高かったことに触れ,長期処方の見直しとともに,調剤基本料と加算の一体的な見直しが必要との考えを示した.

※損益分岐点比率とは
 医業収益の変化にどのくらい耐えることが出来るかを示す指標.例えば,損益分岐点比率が95%であれば,5%超の収益減少で赤字に転落する.低いほど良い指標であり,一般に80%以下が優良と言われている.

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